詩⬛ノクターンには逆らえない
おのれの呼吸が一つの音であるということそれはあまりにも気づき難くてともすれば日々の暮らしの意味さえも忘れてしまう月の満ち欠けは一つも狂わず暦の通りに全く正しく空に映るならば今宵のわたしの嘆きさえどこかで誰かの月なのだろう全く正しく満ち欠けるだろう夜は静かに滲んでゆくやさしい花みたいに滲んでゆくわたしは爪を隠し通せはしない、爪を淡く潤わせながらおのれの瞳の曲線を思う夜は浅瀬さながらに流れが早い望まない言葉が多すぎるわたしには流れの音も、ときに鋭く何かが砕ける音がする硝子の箱が音で溢れかえるようにしてきらきらと、願いの散るようなそれはそれは冷たい音がするそれゆ えわたしにはどんな願いも抱けない新たな痛みが染み渡るだけだと解っているから安らぎを求めて独り、拳を握り締めながら安らぎを求めて牙をむいているわたしは生まれつきの獣だ呪縛と知って呪縛と罵ってなお 命には抗えず畏怖を失くしてしまえないどこかで覚えたノクターンを牙の隙間から歌い漏らすそういう獣だ月のあかるい夜は護りだ月のあかるい夜は牢屋だ独り、歌うことに許しを請いながらノクターンの刃に斬りつけられる牙をもっても逆らえずわたしは無力にひれ伏して笑む逆らえないこの加減ではまだ逆らえない醒めては眠り眠っては醒めて甚だ都合のいい獣だわたしはわたしの夜を歌うときあなたの夜が聞こえますあなたの夜を歌うときわたしの夜が降りてきます不思議な歌です夜というものは。※お読みくださり、有り難うございます(´- `*)