今回は田中天神（たなかてんじん）と小塞神社（おせきじんじゃ）。先ず田中天神（たなかてんじん）だが、所在地：犬山市天神３－１５
訪問日：２００９年１２月８日

５２２句は次の通りである。
　　　　　　ヒヨドリの祠になりて稲木様　　　　　　　　　　（桐山芳夫）
　式内社には稲木神社とある。ところが近在をいくら訪ね歩いても稲木神社は見当たらない。それもその筈、その跡地に田中天神が作られている。稲木神社は小さな祠になって祀られている。

５２３句は次の通りである。
　　　　　　枯葉舞うここが真性跡地かな　　　　　　　　　　（桐山芳夫）
　千年以上も前に記録された式内社。確実にここが跡地と確定出来る式内社は極めて珍しい。多くの神社はめまぐるしく変遷し、本宮さえ分からなくなっている例が少なくない。ところがここ稲木神社は石で囲った石塔を作って、本宮の真性跡地とはっきり分かるようになっている。

５２４句は次の通りである。
　　　　　　祭神の真偽分からず冬来たる　　　　　　　　　　　（桐山芳夫）
前記したように稲木神社は現在田中天神と称している。説明板には「この辺りに青木川と天神川が流れていたが、たびたび氾濫するので、人々は富岡、木ノ下等へ移住していった」という意味のことが記されている。その主祭神は大中津日子命（おおなかつひこのみこと）。垂仁天皇（第１１代）の皇子。さらに、少彦名命並びに菅原道真公を相殿の神として合祀している。だが、元来の稲木神社の祭神ははっきりしていない。

　次に小塞神社（おせきじんじゃ）。所在地：一宮市浅井尾関同者６
訪問日：２００９年１２月８日

５２５句は次の通りである。
　　　　　　風格あり橋を渡って冬神社　　　　　　　　　　（桐山芳夫）
　私が最も気に入った神社の一つが当社である。第一鳥居をくぐると、長い参道をゆっくり歩き、第二鳥居にさしかかる。しばらく行くと第三鳥居があって、それをくぐると神橋があって、やっと拝殿にたどりつく。こんな構造は熱田神宮を想起させる。神社らしい神社である。

５２６句は次の通りである。
　　　　　　これがまあ小社の宮かトンボ飛ぶ　　　　　　　　（桐山芳夫）
　熱田さんと同じく三つの鳥居をくぐらないと本殿にたどりつかない。こんな神社が式内社では小社となっている。今日の目で見れば、これぞ大社かと思われる。きっと延喜式の時代には多くの神社がこうであったに相違ない。

５２７句は次の通りである。
　　　　　　本殿や足元枯葉合掌す　　　　　　　　　　　　（桐山芳夫）
　神橋を渡って本殿にたどりつく。最奥の本殿だけに有り難みが増幅し、自然に両手を合わせる。祭神は天火明命（あまのほあかりのみこと）及び天香山命（あまのかごやまのみこと）の２神である。天火明は尾張氏旧王朝の王者、天香山はその王子ということになるようだ。

５２８句は次の通りである。
　　　　　　墓の上に宮が造らるドングリの　　　　　　　　（桐山芳夫）
　当社は、驚くに前方後円墳の上に築かれている。大和王朝や尾張王朝は古代の王朝だが、それよりも古い王朝だった可能性がある。その上にドングリの木が立っていて、あたりにいくつも転がっていた。

５２９句は次の通りである。
　　　　　　灯籠も社碑も古びて冬景色　　　　　　　　　　（桐山芳夫）
　当たり前のことだが、現在の神社は新しいものが多い。まあ、５０年前後に建て替えないし遷座している。当社も例外ではないが、鳥居も石灯籠も社碑も狛犬も明治期ないし大正期に据え付けられている。例えば、石灯籠は明治４１年（１９０８年）の刻印がある。今からざっと１２０年ほども前だ。

５３０句は次の通りである。
　　　　　　枯葉舞う社務所あるが珍しく　　　　　　　　　（桐山芳夫）
　神社と言っても社務所を置いているのは珍しい。時間がなかったので、立ち寄らなかったので、詳細は不明。種々の会合や祭りの準備等に利用されているのだろう。

（２０２２年３月１７日）

桐山芳夫106