食べ方が汚すぎる男性の話を少し前のブログに載せてみた。

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今回はまた別の、男性の話だ。



ある日、私は青森空港にいた。

私と娘、母、妹、妹の子供達、計6人で、関西へ帰る便を待っていた。



私達、大人3人は、待合の椅子に腰かけていた。

その前で私達の子供、3人がはしゃいで遊んでいた。



すると、私の後ろからすみません、と声がした。

振り返ると30代後半と思しき男性が、後ろに立っていた。



私達が後ろに何か荷物を落としたのか?

何か、飛行機の事について尋ねられるのか?



そんな事が瞬時に頭に浮かんだ。



すると、男性は私に小さな紙片を差し出しながら私に『先程から素敵な方だな、と思ってたんです。

宜しければ、お電話下さい。』

と言い残し、足早に去っていった。



自慢話だと思わずにもう少し読んで欲しい、笑



前で子供が遊んでいるにも関わらず、また横に母と妹もいるのに、なんと、公開ナンパされたのだ。



私達はビックリした。

母が言った。

『勇気のある人ねぇ‥。』



紙片には、名前と、名古屋の病院で働く医師であること、そして電話番号が書かれていた。




その頃、私は主人の女性問題で、すったもんだしていた。

離婚しようか、しまいか、悩んでいる時だった。



その件に関連したことで、青森に来たのだが、まさかその帰りにこんな事になるとは!!



私は何だか、この彼と縁があるような気がした。


新たに現れたこの人と、人生をやり直す事になるかも知れない、そう思った。



家に帰り、まずは彼の経歴が本当かどうかを調べた。



経歴は本当であった。


働いている病院も、循環器内科のドクターである、と言うことも、写真もあったので、全て本当である、と分かった。



そこで、私は、この彼に連絡を取った。

彼はものすごく喜んだ。

『連絡は頂けないだろうな、と思っていました。』と彼は言った。



私に子供がいるであろう事は状況から分かっていたし、結婚してるだろうな、とは思ったが、何だか微妙に独身の雰囲気も漂っていて、もしかしたら、とダメ元で声をかけた、

との事。



私は、彼の、観察眼に感心した。


離婚こそしていなかったものの、夫への信頼は無くなり、家族としてはもう、成り立っていなかった時期だった。

主人は家を出て女性と暮らしていたし、私はその頃、実際に1人だったのだ。

生活は雰囲気に出るものなのだろう。



そこで彼と意気投合して、一度、お茶をすることになった。



彼が多忙なため、私が名古屋に出向き、マリオットアソシアでお茶をした。



彼はスマートで、クール、そしてドクターらしい気難しさも持ち合わせていた。



だが、母がいる前でナンパした人とは思えないほど、物静かで、落ち着いた人だった。



『一生分の勇気を振り絞って声をかけました。』と彼は言った。



色んな話をして盛り上がり、

今度はお茶でなく、食事をしましょう、と言うことになった。


彼と行ったのは

和食のお店だった。



そこで私は驚愕した。

彼の食べ方が汚いのだ。



一般的に言う所の『犬食い』だったのだ。


上から目線で申し訳ないが、卑しいな、と感じた。


前回はお茶だけだったから、全く分からなかった。

その食べ方は彼のインテリな雰囲気に全くそぐわなかった。



私はショックを受けて、その後、彼と何を話したのか、

どうやって家に帰ったのか、全く記憶がない、笑



育ちは隠せないものだ、とつくづく思った。



私の言う『育ち』は裕福か、そうでないか、と言うことではない。



常識や、備わったマナーのことだ。



人間、この部分が合わないと一緒には暮らせない。



食事マナーが悪い、と彼に注意出来るのは、彼の両親だけだ。

こういった事はデリケートな問題だから、私が注意する訳にはいかない。

注意した時点で関係は終わる。



どうして息子をドクターに育て上げた母親が、マナー1つ、教えられなかったのだろう。

彼が気の毒だ。



私は理由を言わずに、この先の2人の関係について、彼にお断りの返事をした。

何故そうなったか、彼は分からず仕舞いだろう。



この彼とご縁がある、と思った私の勘は、見事に外れた。笑



人生にはドラマチックなことが多々起こる。

だが全てがドラマチックに終わる訳ではない。



今でも、名古屋のマリオットに行くたびに、彼を思い出す。

はにかんだ彼の笑顔を思い出し、罪悪感のようなものが心を掠める。

それくらい我慢したら良かったかな?とも思うが、私にとって、やっぱりこの問題は看過できないのだ。



あの頃は私も若かった。

歳を重ねた今なら、彼に上手く注意して、マナーを教える事が出来るだろうか?


いや、やっぱりそれは出来ないだろう、と思う。


彼とは、何を学び合うご縁だったのか、今でも分からないままだが、

あの深く落ち込んでいたあの時期に、一瞬の輝きをくれた事に、とても感謝している。