広がる補聴器助成 ユニークな調整制度 導入 | 子どもたちもお年よりも笑顔あふれる街へ

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シリーズ 広がる補聴器助成 東京・板橋区 ユニークな調整制度導入

「長く使い続けられるように」 計4回、装用感などチェック

2022年4月8日【くらし】

 「補聴器を長く使い続けられるように」。こんな願いから、補聴器助成制度とセットで導入された東京都板橋区のユニークな調整(アフターケア)制度が注目されています。(徳永慎二)

 他の自治体で補聴器の調整に携わっている言語聴覚士は言います。「補聴器は購入して装着すればすぐに聞こえると思っている人が多いですが、その人の聴力や生活実態にあわせた調整が必要です。その点で板橋区のシステムは有効だと思います」

 同区の助成制度では「補聴器購入アフターケア証明書」の提出を要件としています。同区長寿社会推進課高齢者相談係長の鈴木波江さんは、「システム導入にあたって、補聴器販売店に聞き取りしたところ、購入した方の補聴器の調整結果を記録していることがわかりました。それをヒントにアフターケア証明書をつくりました」と話します。

 証明書は文庫本の大きさで、1週間から10日に1度の計4回の調整結果を、チェックリストに基づいて販売店が記録します。

 たとえば「色々な音を聞いてみる(包丁で刻む音・シャワーの音・犬の鳴き声等)」などの「宿題」を出し、次回に確認する仕組みです。

陳情がきっかけ 積み上げた議論

 助成制度は2021年4月スタート。板橋生活と健康を守る会(加藤勝治会長)が19年5月に出した助成制度創設を求める陳情がきっかけです。直後の6月定例会で、日本共産党の石川すみえ区議が、補聴器助成の必要性について、区の認識をただしました。区長の答弁は「研究する」でした。

 その後は、陳情を審査した区議会健康福祉委員会が、補聴器助成の論議の主舞台となりました。21年1月に全会一致で陳情が採択されるまで、計7回の継続審議が続きました。共産党の吉田豊明、かなざき文子両区議は、前回委員会での「論議の到達点」を確認しながら、制度実現に向けて議論を積み上げていきました。「7回もの継続審議が続きましたが、採択されてよかったです」とは山内えり区議の話です。

 19年8月27日の健康福祉委員会。吉田区議は「今回の議論の中で(制度の)有効性はより深まった」として「本格的に前に進めていく決断をする時期ではないか」と陳情採択を主張しました。

 委員会では、区側は「助成制度の必要性」を認めながら、しばしば財政事情を理由に消極的な姿勢を示しました。吉田区議は「高齢の区民にとって耳が聞こえないというのは、毎日の生活や認知症などで喫緊(きっきん)の問題」だとして、「財政状況だからできませんというのは本末転倒だ」などと批判しました。

20年1月の委員会で、かなざき区議は「補聴器を持っているのに使わない方がたくさんおられる。なぜかと聞くと、雑音も入ってうるさいからという」話を紹介し、アフターケアとともに「正しい知識」の周知を求めました。

 陳情が採択された21年1月の同委員会で、かなざき区議は「補聴器をつけるかつけなくなるかは、アフターケアが左右する」と改めて強調しました。

非課税世帯限定 対象の拡大必要

 助成制度は、65歳以上の非課税世帯が対象で、助成額の上限は2万円。3月31日現在で同制度の受給者は92人。

 板橋生活と健康を守る会の加藤会長は「最初の一歩です。対象を非課税世帯とすると、受給できる人は限られます。より多くの人が助成をうけられるようにしていただきたい。上限2万円というのも引き上げてほしい」と制度の拡充を求めます。

 山内区議は「他自治体にない調整システムができたのは良かった。区のケアマネジャーアンケートで8割の方が補聴器が必要と答えておられることからみても、非課税世帯に限定しているのは、改善が必要です。2万円の上限も、引き上げるべきです」と話しています。