武力で平和つくれない 安倍氏の地元から怒り | 子どもたちもお年よりも笑顔あふれる街へ

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山口・長門市 “9条のすばらしい理想こそ”

 日本海に面した山口県北西部の長門市油谷(ゆや)。安倍晋三元首相の祖父・寛(かん)氏(1894~1946年)、父で元外相の晋太郎氏(元自民党幹事長、1924~91年)の墓がある場所です。

非戦を説いた安倍氏の祖父

 この油谷の一角にある浄土真宗本願寺派の常正寺では、仏教の教えを伝えるブッダの「法句経」(ダンマパダ)の一節が掲示板に張られています。「すべての者は暴力におびえ、すべての者は死を恐れる。わが身にひき比べて、殺してはならない。殺させてはならない」

 住職の高橋見性(けんしょう)さん(72)は、安倍元首相がウクライナ問題を好機として、9条改憲をあおってはばからないことを憂慮する一人です。「安倍さんは戦時中に非戦を説いた寛さんのことを全く語りませんが、当時を知る門徒の方たちは一様に、すばらしい人だったと言います。病床に伏せっていた時でさえ、とにかく村長をやってくれと要望されるほど慕われていたそうです」

 現長門市の一部だった旧日置(へき)村の村長を務め、帝国議会の衆院議員でもあった寛氏。没後数十年たっても尊敬を集める理由は、人望だけではありません。日本が侵略戦争を始め、戦争反対を訴える者の多くが弾圧された時代に、反戦平和を貫いた数少ない政治家としての生きざまが知られているからです。

 「国会にあっては(大政翼賛会)非推薦議員団の一員として軍事政権に厳しく対立した」(『油谷町史』)

祖父の反戦思想に背き、戦争する国への道をひた進む安倍元首相の姿勢に、高橋さんは異議を申し立ててきました。

 安倍政権が安保法制の国会審議を強行していた2015年6月。油谷・日置地区の浄土真宗本願寺派19カ寺で構成する山口教区大津西組(おおつにしそ)は、安倍晋三事務所に「安全保障関連法案に反対し、廃案を求める要請書」を提出しました。当時、高橋さんは組長でした。

 安倍元首相の地元中の地元での動きに、注目が集まる一方、僧侶の一部から「あんなことをしたらダメやないか」と言われるなど、逆風もありました。

 しかし高橋さんは訴えます。「親鸞聖人(浄土真宗の宗祖)は権力者の横暴で流罪になった際、厳しく反論し、明治政府の政策で起きた廃仏毀釈(きしゃく=仏教排斥運動)に抵抗したのも山口出身の僧侶、島地黙雷でした。そういう歴史があるのに、全く無関心ではおれない」

悪縁をつくる軍隊と核兵器

 大津西組の現組長で龍雲寺住職の長岡裕之さん(66)も、「声をあげにくい面は当然あるが、黙るということはありません」と語ります。

 長岡さんが反戦平和を希求する根底には、仏教に通じる戦力不保持をうたった9条の精神があります。

 「親鸞聖人は『歎異抄』という書物で『さるべき業縁のもよおさば、いかなるふるまいもすべし』と書かれています。人間は、良い縁にふれれば良いことをするし、悪い縁にふれれば悪いことをするということです」

軍隊や核兵器を持つことが悪縁をつくることにつながると長岡さん。「ロシアの侵攻を見て、安倍さんは9条を変え、軍隊を持たなければならないと言いますが、逆なのです。軍隊がある以上、悪縁によって紛争、戦争が起こる。軍隊を持たないことが平和への一番の近道だと、みなが気づかなければならない」と強調します。

 改憲勢力の「戦力不保持は現実に合わない、理想だ」とする攻撃についても歴史を踏まえ、こう反論します。

 日中全面戦争、アジア太平洋戦争に続くきっかけとなった「満州事変」(1931年)は、軍部(関東軍)が武力による中国東北部の領土拡大を狙って起こした謀略事件です。当初こそ関東軍が暴走し戦線を拡大しますが、結局は日本政府も「不拡大方針」を転じ関東軍の行動を容認しました。

 長岡さんは「現実を追認した結果、もう少しで日本を滅ぼすところまでいった。だからこそ政治家は理想を掲げ、それに近づいていくという努力をしなくてはいけないし、国民一人ひとりもそうでしょう。9条のすばらしい理想を伝えていきたい」と力を込めます。