ニック・ハイドフェルドが、19日~20日に開催されたニュルブルクリンク24時間レースに、ゲンバラ・レーシングのマクラーレンMP4-12C GT3で参戦。

しかしながら、わずか1スティントをドライブしただけでリタイアとなってしまい、不完全燃焼のニュルデビュー戦となった。

 今季はWEC世界耐久選手権に参戦する一方で、過去にBMWザウバーでデモランした経験もあるノルドシュライフェを舞台に争われるニュル24時間に挑戦したハイドフェルド。

 ニュルブルクリンクからそう遠くないメンヘングランドバッハ出身で、「いつかニュルを走ってみたい」という憧れがあったというハイドフェルドは、幼少の頃からの友人であり、ゲンバラ・レーシングのチーム監督兼ドライバーを務めるサッシャ・ベルトから今回のニュル参戦を打診され快諾。VLNニュルブルクリンク耐久シリーズを1戦こなしての登場となった。

 ブルーのボディにホワイトのラインでニュルのコースが描かれたマクラーレンをドライブしたハイドフェルドだが、フリープラクティス中にエンジントラブルが発生。パドックでの修理が追い付かず、ニュル近郊にあるザクスピードのガレージへ運び込まれ、夜を徹しての作業を行い3機目のエンジンを投入してようやく復活。予選アタックはできなかったものの、事前のVLNで14位のタイムをクリアしていたこともあり、39番手からのスタートとなった。

 ハイドフェルドにとっては1999年のル・マン24時間に次いで2回目の24時間レースでもあり、そのル・マンデビュー戦でもリタイアを経験しているだけに、「今回は何としてでもゴールしたい」と予選後の記者会見で抱負を語っていたが、決勝では2スティント目にハイドフェルドがドライブした後、3スティント目を担当していた名手クラウス・ルドビクがルノー・クリオと接触。ガードレールにヒットしてしまいマクラーレンは大破。その場でリタイアとなってしまった。

 マクラーレンF1のテクノロジーが投入されたMP4-12C GT3ながら、これまでF1で戦ってきただけに「“遅いマシン”に慣れることは簡単じゃない」とコメントしていたハイドフェルド。とは言え、ニュル24時間のレースウイーク中は積極的にパドックのテント前に現れ、ファンと談笑したり、気軽にサインに応じ、F1とは違う雰囲気を楽しんでいた様子だった。

 将来的にル・マンも含め、24時間レースを活動の一環にしていくかどうかは、「今後の自身のスタンスにもよるけど、前向きに考えたい」と語ったハイドフェルド。来季の“リベンジ”もあるのかもしれない。

ケーシー・ストーナーが瞳を潤ませ、感極まって声を震わせる。うつむき加減なのはキャップのつばで表情を隠そうとしてのことなのか…そして、誰もが耳にしたくないと望んでいた言葉を口にした。
今年末に引退することにしました。」
現チャンピオンでありポイントリーダーの26才の若者が、永遠にヘルメットを脱ぐことにしたのだ。
ここ最近に決めたことじゃありません…もう何年も前から…2009年から考えていたことです。妻や家族とも頻繁に話し合い、最終的に自分で決断しました。
最高峰クラスで2度タイトルを獲得し、キャリア42回の優勝のうち35回をモトGPクラスで決め、そして今、もう充分だと言うのだ。
もう楽しくないんですよ…最後の最後にそうはなっても、結局は金か名誉のために続けていくものだって多くの選手が言ってるけれど、僕は違う。僕はいつも本音を言ってきたんですが、今は情熱が失せてしまった…もう楽しくなくなってしまったってことなんです。この選手権に参戦することも、タイトルを取ることも僕にとっては全て夢だったんです。そして、それが実現したら、色々と別の側面が見えてきてしまって。」

自分で辞めるわけではない…辞めさせられるのだと。
「2009年は僕にとって決定的な年でした。行なわれている仕事に対し敬意を払わず…ただ批判したいだけの人間がどっさりいるんだってことに気がついたんです。僕は走ることがとても好きだったし、ネガティブな面やポジティブな面は常にあったわけですが、現在、前者の方が重くなってきています。
そして、この選手権はもはや自分にふさわしいものではない…楽しくもなければ、夢中にもなれない、情熱の炎は消えてしまった。レギュレーションの変更がモトGPを変えてしまったのだと。
レースがつまらなくなったとか、競合いが少ない、参加しているメーカーが少ない等と批判されてます。物事はすぐには変えられないものとは言え、でも、5年前だってそうれほど違いはなかった。ただ、現在は行なわれていることを評価できないでいるだけであってね。これまではずっとプロトタイプ機の世界選手権だったのに、今はCRT機がいて…もう違うんですよ。モトGP機がふさわしい選手だっているのに(と言いながら隣のデ・プニエ選手の方を見る)、もう乗ることもできないわけです。大きく後退してしまった…今や1つの大会で2つのレースをやっていることは、隠したって無駄でしょう。

第1子アレッサンドラちゃんの誕生は無関係だとも。
「おかげで決心しやすくはなったかもしれないけれど、それが主な理由ではありません。単純に、これはもはや僕が愛し、何年も走り続けた選手権ではなくなってしまったからです。あまりにも多くのことが変わってしまい、とても同じものには思えません。この3年間考え続け、家族とも話し合ってきました。これ以上、続ける理由が見当たらず、とにかく今シーズンでホンダやチームとの契約を終わらせるつもりです。それでお終い。」
失意の若者から発せられた言葉だ。夢が実現していくのを目にし、達成した途端に消え失せてしまう。
金が全てではない。それだけじゃダメで、何か他のものが必要なんです。何年もの間、オートバイが僕の人生すべてだった…これからはもう違うんです。」
決意は固く…しかし容易いものではなかった。ストーナー選手は一言一言に重きをおき、こう口にする時などは声を振り絞らんばかりだった。
「多分、僕は最も若く、勝てる状態で辞めるライダーでしょう。でも、それはどうでも良いことです。自分の才能を無駄にしたとは思っていないし、ここ何年かの間、僕は全てを出してきました。説明しがたいことなんですが、正しい決断だと思っています。今シーズン、何を残せるかは分からないけれど、すべての戦いと勝利は忘れられないものになるでしょう…ただ、もう続けるのは無理なんです。