1.旅行業の定義
 旅行業の定義、ざっくりいうと①報酬を得て ②旅行業務を行う ③事業 のことです。
 旅行業務の定義としては、 『報酬を得て、旅行者と運送・宿泊サービス提供機関の間に入り、旅行者が「運送又は宿泊のサービス」の提供を受けられるよう、複数のサービスを組み合わせた旅行商品の企画や個々のサービスの手配をする行為』となります。
 「運送又は宿泊のサービス」とは、運送事業者、宿泊事業者により、事業として提供されるサービスを言い、 「宿泊のサービス」は、旅館業法に基づく「旅館業」に該当するサービスを指します。

 

2.旅行業に該当しない事例
 ①相互に日常的な接触のある団体内部で参加者が募集され、当該団体の構成員による参加者の募集

(例1)同一職場内で幹事が募集する場合
(例2)学校等により生徒を対象として募集する場合
 ※「日常的な接触」とは、互いに顔見知りであるかどうかが基準になります。
 ②運送、宿泊のいずれも関係しないサービスの提供
(例1)日帰りで現地集合・現地解散する
 ※「昼食代」 「入場料」 「施設体験料」などは旅行業における一定の行為に当てはまらない。
 運送宿泊サービス以外のサービスの提供(食事の提供、入場料など)は運送宿泊サービスに付随して取り扱う場合に限り、 「旅行業」となります。
 つまり、運送も宿泊のサービスは行わず、食事や観光などのみで完結する場合は、旅行業の定義をはずれ、旅行業法の適用を受けません。

 

3.登録しなかったときの罰則  旅行業登録の要件、必書類と手続き、費用

一般に、”旅行会社” や ”旅行代理店” と呼ばれるのは正式には「旅行業者」といい、この事業を行うには観光庁長官または都道府県知事による登録を受けなければなりません。無登録で営業すると1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその併科で罰せられます。

 

4.旅行業登録の要件

旅行業登録を受けるには、3つの要件を満たすことが必要です。

  1. 基準に適する財産的基礎を有すること

①,申請者が登録拒否事由に該当しないこと

申請者が登録拒否事由に該当しないこと

旅行業登録は、種別により観光庁長官または都道府県知事によって行われますが、申請者が以下に該当する場合は、観光庁長官または都道府県知事は登録を拒否しなければならない、とされています。

  1. 旅行業法の規定により旅行業、旅行業者代理業、旅行サービス手配業の登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者(登録を取り消された者が法人である場合、取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内にこの法人の役員であった者で、当該取消しの日から5年を経過していないものを含む。)
  2. 禁錮以上の刑に処せられ、又は旅行業法の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終り、又 は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者
  3. 暴力団員等(暴力団員又暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者)
  4. 申請前5年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
  5. 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記1-4のいずれかに該当するもの
  6. 心身の故障により旅行業、旅行業者代理業、旅行サービス手配業を適正に遂行することができない者として国土交通省令で定めるもの又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  7. 法人であって、その役員のうちに上記1-4、6のいずれかに該当する者があるもの
  8. 暴力団員等がその事業活動を支配する者
  9. 営業所ごとに適切な人数、種別の旅行業務管理者を確実に専任すると認められない者
  10. 旅行業登録を申請する場合、登録業務範囲ごとに国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しないもの

②,営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を選任すること旅行業者、旅行業者代理業者は、営業所ごとに1人以上(旅行業務に従事する従業員が10名以上の営業所は2人以上)の旅行業務取扱管理者を選任しなければなりません。旅行業務取扱管理者はその営業所に常勤・専任であることが必要です(複数の営業所がある場合で、一定の条件を満たすと兼任できる場合があります)。

旅行業務取扱管理者は、合格した試験により、総合旅行業務取扱管理者、国内旅行業務取扱管理者、地域限定旅行業務取扱管理者の3種にわかれます。

 

③,基準に適する財産的基礎を有すること

旅行業は多数の旅行者に旅行商品を販売するビジネスであり、消費者保護の観点から一定の経営的安定が求められます。そのため登録要件として、基準資産額制度が設けられています。

基準資産額制度について

基準資産額は、貸借対照表の資産の総額から実質的な財産的価値がないものなどを差し引いた金額で評価し、この基準を超える基準資産を有していないと登録されません。貸借対照表は直前の決算書のもの、新設会社で決算を行っていない場合は設立時貸借対照表の内容により判断されます。個人事業主の場合は「財産に関する調書」を提出します。

算出方法は以下の通りです。

「基準資産額」の計算方法

+) ①資産の総額
ー) ②負債の総額
ー) ③創業費等の繰延資産
ー) ④営業権(のれん)
ー) ⑤不良債権
ー) ⑥営業保証金or弁済業務保証金分担金

①資産の総額 :貸借対照表(P/L)左側「資産の部」合計額です。

②負債の総額 :まず、負債総額を差引きすることで、純資産額を出します。

③創業費等の繰延資産、④営業権(のれん)、⑤不良債権 :これらは現金化が不能か困難なものなので資産から控除します。

⑥営業保証金または弁済業務保証金分担金は、現金から形を変えて資産に計上されますが、基本的に旅行業を続ける限り現金化できないので、資産から控除します。

 

以上のように、基準資産額は営業保証金または弁済業務保証金分担金とともに、旅行者(消費者)保護=保証の原資となるものなので、純資産額から現金化困難な資産などをさらに差引いたものを確保しなければならない、というわけです。
そして、その基準資産の金額基準は、旅行業の種別ごとに以下の通りです。

                                    基準資産額
   第1種旅行業                           3000万円 
   第2種旅行業                            700万円 
   第3種旅行業                            300万円 
   地域限定旅行業                        100万円 

 

5.登録後の有効期間

旅行業登録の有効期間は、登録の日から起算して5年です。引き続き旅行業を営む場合は、有効期限の2ケ月前までに更新申請をしなければなりません。
また、登録内容に変更があった場合、その時から30日以内に届出を行わなければなりません。

 

 

6.新規旅行業登録申請に必要な書類

  1. 新規登録申請書(1)
  2. 旅行業者登録簿(1) :1と同内容
  3. 新規登録申請書(2) :主たる営業所以外の営業所がある場合のみ
  4. 旅行業者登録簿(2) :3と同内容
  5. 定款または寄付行為
  6. 登記事項証明書 :法人の場合
  7. 役員に関する書類(法人役員の宣誓書)
    または 個人事業者に関する書類(住民票、宣誓書)
  8. 旅行業務に係る事業の計画
    (航空券発券に関する契約、海外手配業者との契約がある場合、これらの契約書を含む)
  9. 旅行業務に係る組織の概要
  10. 財産に関する調書(個人の場合)または貸借対照表と損益計算書(法人の場合)
  11. 旅行業協会の発行する入会確認書または承認書
    (登録後ただちに旅行業協会の保証社員を希望する場合)
  12. 旅行業務取扱管理者選任一覧表
  13. 営業所の使用権を証する書類 :登記事項証明書(自己所有)または賃貸借契約書(賃借の場合)
  14. 事故処理体制の説明書
  15. 旅行業約款
    (標準旅行業約款以外の約款を使用する場合は旅行業約款認可申請書も提出)