先日、2017年度のロンジンIFHA国際功労賞に
日本の武豊騎手が選出されたという
とんでもないビッグニュースが飛び込んできました。
http://www.jra.go.jp/news/201712/121105.html
この国際功労賞について、
あまり日本の競馬ファンには馴染みないもので
ピンと来てない人がほとんどなように見受けられました。
かくいう自分も同じだったので、今回のブログは
このロンジンIFHA国際功労賞について書いていきます。
この「ロンジンIFHA国際功労賞」は
国際競馬において顕著な功績を残し、
競馬発展のために多大な貢献をもたらした競馬関係者に贈られる賞
だそうです。
2013年6月にIFHA国際競馬統括機関連盟とスイスの時計メーカーLONGINES社がオフィシャルパートナー契約を結んだことを受けて、
こちらは日本でもお馴染みの“ロンジンワールドベストホース”や
“ロンジンワールドベストジョッキー”とともに贈られるもので、
今年で数えて5年目になります。
その5年で、武豊騎手は日本人としても、
騎手としても初の受賞という快挙です。
世界的なイメージとして「競馬」といえば欧米ですよね。
そんな中、アジアの国「日本」で、欧米に劣らないほどの
競馬文化が発展したその大きな要となった存在が武豊騎手であり
海外での活躍も含め、そういった部分が評価されての選出だと考えられます。
とはいえ、過去の受賞者はどのような功績なのか?
この賞がどれだけの価値を持っているのか?
気になることはまだまだあります。
自分のTwitterでも大まかに紹介した過去の受賞者について
関連サイトなどを散見したうえでまとめました。
2013年に受賞したジム・ボルジャー氏は
「種牡馬ガリレオ成功の蔭の立役者」と言われています。
今や世界的なトップサイアーとなっているガリレオの産駒であるテオフィロやニューアプローチを手がけていました。
その後上記の両馬の最初の産駒勝ち馬を生産し、活躍馬を多数輩出。
テオフィロ、ニューアプローチは現在、ガリレオにサイアーオブサイアーの地位を与える先陣の働きをしていますが、そのきっかけを作ったのがジム・ボルジャー氏であると言えます。
この受賞からはジム・ボルジャー氏の手腕も去ることながら、
ガリレオが世界のサラブレッド競馬に
どれだけ多大な影響を及ぼしているかということが見て取れます。
参考: http://www.jairs.jp/sp/contents/w_news/2013/12/4.html
2014年に受賞したアレック・ヘッド氏は調教師として凱旋門賞4勝。
古くは1959年セントクレスピンから、1981年ゴールドリヴァーなど、長きに渡り名馬を手がけていました。ゴールドリヴァーはよく知られているところでいえば産駒のリヴィエールドールがG1を勝ち、
その孫の世代にはボーンゴールドを通じてゴルディコヴァがいます。
また、凱旋門賞馬以外にも、今もなお血統表にその名を刻み続ける
リファール、リヴァーマンなども管理していました。
その後は生産者としてトレヴを生産。そのトレヴを管理していたヘッドマアレク調教師は娘であり、息子のフレディヘッド氏は騎手としてミエスクなどに騎乗。調教師としてゴルディコヴァなどを管理していました。
一族で欧州の競馬に名を刻んできた他、競馬で繋がっている血に一族を通して関わっているというのも見て取れ、競馬がブラッドスポーツであることを体現している一家でもありますね。
参考: http://www.jairs.jp/sp/contents/newsprot/2014/40/2.html
2015年はセス・ハンコック氏とマルセル・ザルール氏の2人が受賞しています。
セス・ハンコック氏は1972年〜2013年まで、父アーサー・ハンコックが創設したアメリカの超名門牧場、クレイボーンファームの総指揮を執りました。
クレイボーンファームといえば、生産馬にバックパサーやカーリアンなどがいる他、種牡馬としてナスルーラやボールドルーラー、ニジンスキー、ミスタープロスペクター、ダンジグなど繁養していたまさに名門中の名門。名前を聞いただけでも鳥肌が立ちます。
指揮を執るとすぐに、3冠を達成する前の2歳時のセクレタリアトに対し当時の608万ドルのシンジケートを組んだというのが有名な話らしいです。当時の1ドルはだいたい310円くらいなので、単純計算で18億超と、想像もつかない数字。それを米3冠を達成する前に組んだというのだから、大胆さと馬の力を見抜く確かな手腕があったということです。
クレイボーンファーム自体も2010年に創立100周年を迎え、
エクリプス賞功労賞を受賞するなど、
ハンコック氏の長年の働きが評価されています。
参考: https://ja.m.wikipedia.org/wiki/クレイボーンファーム
2015年のもう一人の受賞者、マルセル・ザルール氏は南米サラブレッド振興機構で2011年〜亡くなる2014年までチェアマンを務めました。主な功績に南米諸国のロンジン・ワールドベスト・レースホース・ランキングへの参加の受け入れなどがあり、南米競馬の競走体系の基礎を作りました。
また、チェアマンとしての職務の終わり頃には、ウルグアイのマロナス競馬場での12グループのレースがパートⅠとして認可を受け、ウルグアイという一国の競馬が承認されるという大きな功績も果たしました。
発展途上であった南米競馬を、欧米や日本の競馬と同等のレベルまで持っていったという、とてつもなく大きな功績です。
日本でも近年南米産の競走馬が活躍していますが、それもザルール氏の功績の1つといえるのではないでしょうか。
参考: https://www.longines.jp/universe/news/ifha-international-award-of-merit-2015
2016年の受賞者、ロマネ家(ジャンロマネ氏、ルイロマネ氏)は、
長きに渡りフランスならびに世界の競馬を牽引してきた一家であり、IFHAの創設一家でもあります。
ジャン氏はフランス国内のロンシャン競馬場やシャンティイ競馬場の再建時の強力な支援者だったそうです。
またヨーロッパのパターンレースの制度開発にも携わり、
この制度は北米の競走格付け制度の礎にもなっています。
そして、ジャン氏の息子であるルイ氏はIHFAの現チェアマンであり、
一族で築き上げてきたものを、守り高め続けている真っ最中です。
参考: https://www.longines.jp/universe/news/ifha-international-award-of-merit
以上のように、各人、確かに国際競馬に多大な貢献をしており、
世界の競馬の歴史も大いに感じられる
とてつもないスケールの賞であることが分かりました。
ここに武豊騎手の名前が刻まれると思うと
何とも言えない気持ちになりますね、、、
どう見ても、これまでとはちょっとニュアンスが違いますし
騎手は、馬に乗って勝つというのが基本的なルーティンですから
血統的に多大な影響を与えている名馬の主戦だったというなら
豊さんの他にも世界にたくさんいるわけですから、
この武豊騎手の受賞には特別な意味合いがあると思います。
それは、序盤でも書いたように、馬に乗って勝つだけでなく
日本競馬の「ただのギャンブル」というイメージを
根本から覆したエンターテイナーとしての手腕、
また日本と海外の競馬の架け橋となり、
昨今の日本馬の海外での活躍の礎となったことなど、
豊さんが日本競馬のために尽くした全てが、
評価された、ということだと僕は考えています。
それでも、豊さんはただただ「競馬」が大好きだから
ここまでの功績を自然に残すことができたんですよね。
本人のコメントでも、このような賞に見合う功績を残した
という自覚というか、実感はないような話し方ですから。笑
しかし、それがまた武豊騎手の凄いところであり、
日本競馬がここまで大きくなれた要因だと思います。
長くなりましたが、
豊さん、改めて、受賞おめでとうございます!