82 卒業式
合格発表
僕は第一志望の大学に合格した
腰が抜けるような感覚。とにかくほっとした。
それからは未来が少し開けたことが嬉しくて、思わず握った拳に力が入った。
琴音も内部進学。結唯も琴音と同じ大学に入学が決まっていた。
僕は自宅からそんな離れていない希望の大学に進学が決まって、
両親もとても喜んでくれた。家から出なくて済んだからだ。
北海道のおじいちゃん おばあちゃんにも電話した。
春休みに遊びに行くことも付け加えて。
電話の向こうのおばあちゃんは、とても嬉しそうに「待ってるよ」と言ってくれた。
そんな中、陽輝もアメリカへの帰国を決めていた。
卒業式の次の日だ
もう荷物の整理もほとんど済んで、修了式が後になる栞那ちゃんは残すことになるけど、
先にアメリカへひとりで行くことになっているって言ってた。
卒業式を前にいつかみんなでいったカラオケにその時のメンバー、プラス琴音と柿崎も一緒に行った。
あの時に聞きそびれた陽輝の一人コンサートを見るためだ。
あの時も陽輝の歌声にはびっくりしたけど、今日はなおさらだ。
本当に父さんのコンサートを見ているかのような錯覚。
なんだか鳥肌が立った。
結唯は
「ねぇ言った通りでしょ?ホントに陽輝くん、鈴川友そのものでしょ~?
そのままデビューできちゃいそう」って。
陽輝は
「何言ってんだよ、まったく」っていつもの柔かい笑顔で微笑んで、またマイクを握って、歌い続けた。
僕はそんな陽輝を見ながら、自分の分身を見るようで、変な気分になっていた。
遠くアメリカへ行ってしまう陽輝だけど、僕もそこへ行けるような錯覚に陥っていた。
やはり血がつながっているんだな、って思いながら。
柿崎は琴音の隣から離れること無く、ずっと一緒に居た。
ここへ来るときも離れずに
琴音の告白を聞いたあと、柿崎と廊下で偶然会って、話をした。
柿崎もずっと琴音のことが好きだったこと。
でも僕がいつも一緒にいたから声を掛けにくかったこと。
陽輝の登場でなおさら遠くから見ることばかりになったこと。
でも卒業が目の前に来て、このままにしておけないと、行動したこと。
なんか笑えるけど、いろいろが回らないときってこういうものなんだろうなって思った。
まさか陽輝が兄弟だとは言えなかったが、
陽輝と琴音がどうにかなることはこの先もまったくありえないとだけは強調しておいた。
だって本当だからだ。
なんでそう思うんだとしつこく聞かれたが、これは双子ならではの感だと言ったら、
怪訝そうな顔をしてはいたが、納得してくれた。双子って便利だ。
迎えた卒業式
内部進学がほとんどのこの学校の卒業式はとても明るい
大学だけは他の場所にあるから、
長年通ったこの学校にもう来ないってことくらいがセンチメンタルの材料だ
和気藹々とした雰囲気の中、無事終わった卒業式
そこには陽輝の両親も出席していた。
久しぶりに会う陽輝の両親が僕らに
「今日の夕飯をお誘いしてもいいかしら?明日は主人も陽輝も日本を離れてしまうの。
お別れ会なんて湿っぽいのは嫌だけど、ご一緒できたら嬉しいから」と誘いを受けた。
もちろん断る理由は無い。琴音と二人で陽輝の家にその夜出掛けた。
栞那ちゃんも交えての夕食。とても楽しく過ごせた。
明日陽輝と別れてしまうのに、不思議と悲しくも無く。
次の日
空港へ見送りに行った僕ら。
でも涙を見せたのは琴音。
この時も「バカ」って言われた。ああ、僕はどうせバカですよ。
でもいつでも会おうと思えば会える。
それになんだか離れているって気がしないってのが悲しくない理由だ。それでいいのさ。
割と爽やかに手を振って搭乗口に陽輝は消えていった。
陽輝の乗る飛行機を空港の屋上で見送った。
見えるわけじゃないのに、琴音は大きく手を振って
飛行機が飛び立つまで。
大空へ羽ばたく羽が夕陽を浴びてキラキラする機体を見送って、
僕らはしばしのお別れをする。
そうしばし。
いつだって会える
という距離じゃないけど、
何があっても気に掛けるそんな存在な僕ら。
それだけでいいよな
そんなことを笑いながら話して陽輝は行った。
僕らの明日もきっと光輝くものにしようってハイタッチをした。