キズナプラス -3ページ目

第一九撃:師走

ハロウィンが終わってすでに一月という時間が過ぎた。街行く女性が重装備をはじめ、とある宗教の聖誕祭に合せ世の中すべての男女がそわそわしだす時期になった。


「はぁ、、10月、11月の家賃、しっかり引き落としされてるよ。。。」板羽がため息をつきながら通帳を眺める。振込は10月からないのに、しっかりと家賃や通信費が残高から引かれているようだ。
年に一度のイベントも、『突然英語をしゃべった変態イタリアかぶれ『として香織殿の鉄拳によって制せられ何もできなかった我が主人、それは哀れでござった。まぁ、吸血鬼という設定もいささか忘れられていくでござる。ヤングマガジンで大好評連載中の彼岸島でもよくあることでござる。


フェラーリでクリーノ達を振り切ってから、一行は板羽と拙者の師を訪ね、吸血鬼の発作を抑えることに成功していた。


師匠も走らなければならないほど忙しい月とされる12月!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴg・・・・・


「師匠!もう吸血鬼として発作が起こることはありませんが、もうアリンチャやクリーノ達の追跡におびえ暮らす忍耐もありません。この物語を終わらせるため、私に究極兵器、丸太を使う許可をお願いします。」


「むぅ、、、」


to be continued...

第一八撃:追跡

「おいおい、どうなってんだよ。日本人は客人を丁重にもてなすのが大好きだと聞いていたがな。」


マンションの一室


赤ワインのボトルとグラスが一つ。
二つ置かれたコーヒーカップの中では
エスプレッソが冷め切っていた。


「飲みかけのワインに、冷めたエスプレッソ・・・だと?
なめてるぜ・・・。これは完全に俺たちをなめていやがるぜ。」


「残念だが・・・、これは俺達のために用意されたものではないようだ。
だがしかし!この状況は確かに気に入らないぜ。」


クリーノ・ブチャラッティと
シモーネ・アキラッキオ

二人はある人物を追ってこのマンションにたどり着いた。


「ちっ!アリンチャの野郎が電話を傍受したときにしくじりやがったんだ。
そのせいで、気付かれたんだ。」

アキラッキオはリビングの真ん中に置かれたソファに苛立たしげに勢いよく座り込んだ。

「アリンチャはあの時"攻撃"されていた。自分の意思に反していつもの口癖が出てしまったらしい。自分が言いたくないことを言わされてしまう。そんな"能力"だったそうだ。」

ブチャラッティはキッチンの脇に置かれた小さなワインセラーの中を覗いてた。


「そんなくだらねー"能力"の"攻撃"を受けていやがったのか。しかしだからこそ、"攻撃"されていることにも気づきにくかったのかもしれん。」


「アキラッキオ、このコーヒーカップに目立たないが薄くグロスの跡が残っている。ついでに餃子のにおいもするがな。そしてこの部屋には車のキーがない。奴は女と一緒だ。ここへ俺たちが着いた時に走り去った黒い車があった。あのテールランプはイタリア車だ。間違いない。追跡するぞ。これ以上アリンチャを車の中で待たせるわけにもいかんしな。」


「その女、俺好みだったら徹底的に"リプレイ"してやるぜ。夜の生活具合をな!うほっ♪」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・・・・・・・


to be continued...



第一七撃:時報

い、イタリア・か・ぶ・れ・・・・・だと!?


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ!!!!!!



最もボクの中で言ってほしくない侮辱・・・・
怒りのあまりボクは香織さんに向かって叫び、飛び掛った

「きさまぁーーーーーァ!!!!!!」


・・・

が、今は助手席の下、寝袋に包まれている状態だったのをつい忘れてしまっていた・・・

勢い良くタンカを切ったものの、飛び掛る事はできず、
寝袋から出た顔だけをグルンと香織さんの方に向け、情けなく叫んだまでだった。


「きゃっ!!だからこっち見ないでって言ってるでしょ!!この変態イタリアかぶれ!(ポコポコ)」


容赦なく香織さんのゲンコツが飛んでくる。


"く、くそがぁ。"


その時、ボクの脳内で"音"が鳴り始めた。






カッチ・・・











カッチ・・・

















ガッチャ!!





「Happy Halloween~!!」






し、しまったぁぁ!!





よりによって、今月が10の月だったとは!!


ボクの"発作"は月末付近の夜から丸一日、次の日の夜まで襲い掛かる。

単純に年に12回苦しめられるのだが、
その中でも、年に一度だけ。
10の月の発作に関しては。。。


そう Halloween の日に限っては、より激しく発作が現れ、
自分の事をほぼ制御できなくなる。


街中で「トリック・オア・トリート♪」と言って、
お菓子を集めている小さいモンスターに紛れて、



ボクは、



完全に、



モンスターに、、、、





「TRICK and TREAT!!」
(我に"イタズラ"され"ゴチソウ"となるがいい!!)

第一六撃:陰謀、それまさに欲望、それに気づいて逃亡、、yeah,,

「ナァーゴ、、、ナァーゴ、、、フゴ」


ザアザアと雨の音が聞こえる中、拙者は泣き続けていたそうでござる。


「ナァーゴ、、、ナァーゴ、、、」


マンションの軒先に守られ、上からの雨には濡れることはなかったでござる。


しかし、秋の季節の雨は容赦なく地面を叩き、拙者をのせたみかん箱に冷たい水がはねていたでござる。


「ナァーゴ、、、ナァーゴ、、、フゴ、、、、、」


声も枯れ、空腹も度を過ぎて痛みになった頃、ちょうど深夜の残業を終えてタクシーで帰宅してきた紳士に拙者は拾われたのでござった。


「ありがとうございます。助かりました。また!おやすみなさい。」


タクシーを降りてマンションのエントランスでカードを振りかざしたその時、その紳士は拙者に語った。


「可哀想に。お前も捨てられたのか。。
ここ、ペット禁止なのに、、誰が捨てたんだ。。。よし、今日くじ引きでもらったキャットフードがあるんだ。ロイヤルカニン?あれ、ロイヤルカナンって読むんだな。これあげるよ。」


************


こうしてもらわれた猫の体を借りて拙者は世界平和のために、この男と世界を相手にしているのでござる。


食べるたびにカリカリと音のするロイヤルカナンのキトン(子猫)用キャットフードは高価!!


イタリアで本の真似事で、人間である主人の食べ物をおすそわけすると腎臓に負担がかかると知ったのも拙者への愛故!


それをイタリアかぶれだなんて、、、、ヨヨヨヨヨ

第十五撃:ギャング・スター

「もっとコーナー来い!もっとだぁー!!
ふおぉぉぉぉーーーーーーーー!!!
このマシュマロ感たまらねーぜーーー!!!うひょーーー!!!」

もう欲望を抑えることはできなかった。
だいたい今夜はまともにワインを飲めていない。
月に一度の衝動を抑えるための大切な時間を邪魔されたんだ。

ちくしょう!あの女(アマ)さえ訪ねて来なければ!
あの女(アマ)今度会ったらこうしてああしてそんでもって
チュパチュパ、ズベベベベ、ズキューーーーーン・・・

僕は怒りに任せ、湧き出る欲望をマシュマロにぶち撒けた。
あぁ、なんかディ・モールト(とっても)気持ちいいな。このまま最後まで・・・


「きゃあぁぁぁ!!な、何するんですか!坂羽さん!!」

バッチーン

「い、痛い・・・。」

僕は佐々木香織のビンタで正気を取り戻した。
僕は愛車の助手席の下に小さく丸まっている格好をしていたのだが、その助手席には佐々木香織が座っていた。
僕がマシュマロだと感じていたのは佐々木香織の内股の太ももの
感触だったようだ。彼女のそれは僕の唾液やら鼻水やらでねちゃねちゃに汚れていた。

「一体なんなんですか!今日初めてまともに会ったばかりなのに、こんな訳の分からない状況になっちゃって・・・。もう私家に帰りたい!こんなの立派な誘拐事件よ!あなた達は犯罪者だわ!」

香織は明らかに取り乱していた。
まずは彼女を落ち着かせなければ。

「香織さん、色々あって気が動転してしまうのは分かります。
でも、今は僕達を『信頼』して頂けませんか。決して貴方を傷つけるようなことはしません。」

「そうでござる。これから拙者は神の教えと矛盾する事を話すかもれしないでござるが、よく聞いてもらいたい。」

ガチャ、カッポン♪ガチャ、カッポン♪
と、相変わらずギアチェンジする度に情けない竹馬の音が響く。
ムラマサは続ける。


「この世で最も大切なことは『信頼』であるのなら、最も忌むべき事は『侮辱』する事と考えるでござる。
いいでござるか・・・・信頼を侮辱する・・・・とは
その人物の名誉を傷つけるだけでなく 人生や生活を抜き差しならない状況に追い込んでしまう事でござる。」

そう、そのとおりだぜムラマサ。
坂羽はうんうんと頷く。

「拙者たちは金や利益のためあるいは劇場やバスの席を取られたからといって人と争ったり命を賭けたりはしないでござる。争いは実にくだらんバカのする事だからでござる。」

ムラマサは勢いをます。

「だが!『侮辱する』という行為に対しては命を賭ける 殺人も 神は許してくれると思っているでござる!」


ババーーン!!

決まった・・・でござる。

あぁ、かっこいいぜムラマサ。
これで香織さんも解ってくれるはず。
もうかっこ良すぎて惚れちゃんじゃないかな。
ん?でもこの場合その対象はムラマサ?
いやいや、さすがにそれは・・・。
・・・ていうか、なんでムラマサは人間の言葉を話せるんだっけ??

ムラマサの話しを聞いた香織が口を開く。

「は?何訳の分からない事もっともらしく語りだしちゃってるのよ。そもそもなんで猫が人の言葉を話したり、私の下着の色知ってたりするのよ!神の教えと矛盾しているのはアキラチャンの方じゃない!だいたいあなた達、なんかの漫画でみたような台詞とかイタリア語使いたいだけじゃない!なんなのよ!このイタリアかぶれの変態コンビ!!」

黒いフェラーリのシングルプレーンの4気筒クランクが出す甲高いエンジン音。
香織が切り裂いたのはその心良い音だけではなかったようだ。


「イタリアかぶれの・・・変態コンビ・・・だと・・・??」
「イタリアかぶれの・・・変態コンビ・・・だと・・・??」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・

to be continued...