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第五章『構造改革』

第五話 本当の構造改革




先日の衆議院選挙で自民党が圧勝した。小泉首相が機会がある度に、「わが国には構造改革が必要だ!」と言い続けたこともあって、社員の中でもこの言葉は意外とすんなり入っていっていた。

しかしそのイメージは個々に違い、その差はかなり大きな差でもあった。

社長の話の後、何人かの社員が社長の近くに集まり、これから何が必要なのかということを話し始めた。

「社長、お話に感激しました。僕も何かできそうな気がしますが、一体何をすればいいのかイメージがわいてきません。」

こう話してきたのは、営業部の山添だった。彼は入社2年目。仕事に慣れてくるにつれ、他社の話も次第に耳に入ってくるようになる時期を迎えていた。これまでただ何となくであったが、漠然ともどかしさを感じながら仕事をしていた。

「山添君、ウチには構造改革が必要なんだ。わかるか?」

「小泉首相が言ってる構造改革ですか?」

「そうなんだが、ウチに必要な構造改革は少し違うんだ。」

「というと、どういう構造改革が必要なんでしょうか?」

「ウチには社員の意識を変えるという意味の構造改革が必要なんだ。考えることとか、話すこと、気づくこと、こういうことをこれまでとガラッと変えてもらわないといけないと思っている。わかるか?」

社長が社員に何かを話した後”わかるか?”と付け加えるのは社長のクセだが、それも少しでも理解してもらいたいという気持ちがあってのことだ。

「何となくわかりますが、少し説明していただけませんか?」

「そうか、よく聞いてくれよ。人間は誰かに何かをやらされていると思うと、なかなか上手くいかないものだ。簡単に言えば義務みたいなものだ。義務を好き好んでやる奴はいないだろう?

そうではなくて、ウチの社員には自ら考えたり、行動したりできる社員になってほしいと思っている。こういう考え方が身につき、習慣になってくると、もし山添君が転職してほかの会社に行っても、必ず役に立つ。こういう人間が多ければ多いほど、強い会社に成長することができるんだ。

業績をドンドン伸ばしている会社や、ギリギリまで追い込まれた会社があっという間に生き返ることがあるだろう?そんな会社は、みんな社員の考え方や行動を変えているんだ。もちろん、社員だけじゃないぞ。役員もだ。」

「そんな話を以前、テレビで見たことがあります。あれは確か●●だったと思います。役員以下、全社員が本当に一塊になって改革していました。」

「そうだろう。そういう会社は会社の規模に関係なく強くなれるんだ。なぜだかわかるか?」

「全員でやるからですか?」

「それはそうだが、なぜ全員でやれば強くなるんだ?そこが大切だぞ。」

「僕にはまだ難しいです。わかりません。」

「全員でやるということの意味は二つある。

一つは全員の知恵を使うということだ。ちょっと違うかもしれないが、社長だけが知恵をひねり出している状態は、パソコン一台で考えているようなもの。でも、全社員が同じ状態になれば数十台のパソコンを使って考えているのと同じだ。どっちが凄いことを考えたり、いい知恵が出るのか、早く結果を出せるのかは誰でもわかるだろう。

もう一つは目標を共有するということだ。さっきも話したように、誰かに何かをやらされている、つまり義務だな。そういう状態では共有しているとは言えない。自分の目標として感じることができるようになってこそ、全員で共有していると言えるんだ。わかるか?」

「かなりすっきりしました。社長がおっしゃるとおりです。早く僕もそうなりたいと思います。」

「わかってくれたらそれでいいわけじゃないぞ!お前にはもう一つ大事なことがある。わかるか?」

「このほかにもあるんですか?」

「そうだ。とても大事なことだ。」

「何でしょう?さっぱりわかりません。」

「そうか。まだ2年目のお前には難しいかもしれないな。でも大切なことだからよく覚えておけ。いいな。

それは人に伝えることだ。お前が理解したとおりでいい。お前の言葉で誰かに伝えることがとても大切なことなんだ。お前のような社員が増えれば増えるほど、会社の中は活気づいてくる。活性化ってやつだな。議論もたくさん出てくるだろう。もちろん、アイデアもだ。だからとても大切なことなんだ。」

「わかりました、社長!教えていただいたことを今夜じっくり考えて、誰かに話してみます。またわからなくなったら、社長のところに来てもいいですか?」

「あぁ、いいぞ。いつでも来たらいい。ただし、その前にお前の上司の澤登に必ず相談しなさい。忘れるなよ。」

「わかりました!」




(つづく…)


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