前回の記事を読んでくださったはなさんから、
「絵本を読む以上に大切なことを具体的に教えてほしい」
とのご質問をいただきました。
絵本を読む以上に大切なこと。
具体的にというのはとても難しい質問です(笑)
それは、その子の聴力や言語力、興味、生活環境によって
全く違ってくるからです。
「こうすればよい」というものは無いんですよ。
前回の記事のレポートでは、
生活ベース
認知ベース
言語課題ベース
の3種類について触れました。
生活ベースは、「今・ここで」の子どもの生活そのものが
学習のチャンスとなります。
日常のコミュニケーションを子どもがわかる方法で行います。
音声だけでは厳しい場合は、ジェスチャーを交えたり、実物を見せたり。
例えばおやつを食べるとき、
クッキーがいい?それとも、ゼリーがいい?
と言いながらどちらも実物を見せ、選んだほうを与えるとか。
子どもは、そうか、これはゼリーというんだな、とか
「それとも」というときは、どちらかしかもらえないんだな、
ということがわかるようになります。
難聴の子が音声のみで聞き取れなかったとして、何も答えないからと
いきなりゼリーが与えられた場合との違いを想像してみてください。
子どもの生活において、
できる限り全部、理解可能な方法で接することが理想です。
でも実際、全部なんて難しいので、「できる限り」としました。
認知ベースは、体験を通して、それにまつわる語彙を獲得します。
体験といっても、特別な体験でなくても良いです。
自分でおにぎりを作って食べるとか、
手紙を書いて、切手を貼って、ポストに投函するとか、
そんなことで良いのですよ。
実際に体験したものというのは、大人でも身に付きやすいですよね。
「手紙」「切手」「ポスト」などの語彙を
絵カードで覚える場合との違いを想像してみてください。
ちょっと丁寧に暮らす、季節の行事を大切にするだけでも、
たくさんの体験ができますね。
言語課題ベースは、今獲得したい語彙や構文を、
教材などを使って学習します。
聴覚障害児の言語指導というと、
ついこの部分のみを思い浮かべがちですが、
実際は、生活ベース、認知ベースがあっての言語課題です。
子どもは、言語課題だけで言葉を獲得しているわけではありません。
絵本の読み聞かせは、この言語課題ベースに近いかなと思ってます。
日常生活や体験を振り返ったり、予習にも使えます。
獲得させたい語彙が載っているものを選ぶこともできます。
絵本を読むより大切なことがあるといっても、
絵本は読まなくて良いのか、大切じゃないのか
ということではありません。
生活ベース、認知ベースを充実させた上で、読んであげてください。
はなさん、ご質問ありがとうございました。