2年間乗ったダイハツのミライースを手放して日産のX-TRAILを納車した。

 

前に付き合っていた彼女は当時の僕からするとずいぶん不思議な人だった。旅行の誘いは断られたけど、一緒に行った花火大会は楽しんでいたし、サプライズで誕生日のお祝いをしてくれた。

 

もっと走破性の良い車に乗りたかったのもあるけど、ミライースは他の車に比べるとはるかに小さくて恥ずかしかったのが、車を買い換えた大きな理由。助手席に乗る人が「なんでこんな小さい車なの?」なんていうことは一度もなかったけど、これは自分のプライドの問題だった。実際乗り換えて良かった。

 

彼女は僕と付き合っているのを周りに隠したいのかなと想像した。でもデートに行くたび、彼女のインスタグラムのハイライトはどんどん豪華になっていった。自分が大切にされている証に見えて、毎日何度も見返した。いちいちハイライトに追加されているのは自分だけだった。愛されていると思った。

 

ミライースは買取手が見つかったのでX-TRAILの納車よりも少し前に手元から離れた。最後の日、ガソリンを入れるがてらラーメン屋を食べにいった。急に寂しくなった。これからも一緒にいて欲しかった。でも、そうしたら自信を持って誰かを助手席に乗せられないだろうなとも思った。乗っているところを見られるのは恥ずかしかったけど、好きな車だった。

 

彼女は旅行中でもたまに連絡をくれたし、その文面は優しかった。このドラマを見て欲しい、みたいに話題を広げてくれた。メッセージが来たらやっぱり嬉しかった。

 

人には見られたくないけど、ミライースがいなくなるのはなんだか違う気がした。でも翌日ミライースは消えた。

 

当時の彼女の気持ちには、ミライースに抱いたものと似ていたものもあったのかな。ミライースを手放したくなかったように、彼女は自分を手放したくなかったんじゃないか。想像していたより当時の自分は彼女の心の隙間を埋めれてたんじゃないか。

 

あるものがあるべきところにある秩序を崩したくなくて、それでミラを手放したくなくなっただけなのかな。

 

X-TRAILは評判通りの名車だったので、ミライースのことを思い出すことはあの日以来なかった。