磯部涼「ルポ川崎」感想 | 狸穴の雑多ブログ

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今回は磯部涼氏著「ルポ川崎」の感想記事です。

 

 

関東地方のベッドタウンであると同時に、古くから工業都市・スラム街としての側面も持つ神奈川県・川崎市。

そんな川崎に暮らす様々な人々の姿を追ったルポタージュです。

 

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スラム街で育つ不良少年達に関する描写の中で、"川崎の外に出る"という発想に至ることが難しいという点が印象的でした。

 

親も元不良というケースでは、喧嘩に負けた子供にビールを飲ませてリベンジをけしかける等、不良の価値観に基づいた独特の教育が紹介されています。

 

犯罪に巻き込まれて教師に相談しても無視される

暴力団絡みの犯罪で警察に相談しても、警察と暴力団が癒着しているために取り合われない

 

等、正常な価値観を持たない大人に囲まれた"堅気"ではない世界の中で、不良少年達は生きています。

 

また、そうした不良の世界では先輩・後輩や親分・舎弟のような人間関係・上下関係があり、そうしたしがらみに縛られながら生きています。

先輩の命令は絶対

先輩から課せられた上納金を納めるために、強盗などの犯罪行為に手を染める

等々、辛い様子が描かれています。

 

一般社会とは大きく異なる"修羅"の世界に幼い頃から染まりきっている上、その世界の中での人間関係の呪縛もあり、川崎の外に出るということが難しくなってしまうのです。

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"過酷な環境の中で、周りが見えなくなって抜け出せなくなる"という現象は、川崎のスラム街に限った話ではなく、どこにでも存在するのかな、と思います。

 

例えばブラック企業で過労死してしまう人も、「精神的に追い詰められて、退職や転職、生活保護等という選択肢が見えなくなってしまう」という話を聞いてことがあります。

下矢印下矢印下矢印

 

狭い世界の中で偏った価値観に染まってしまい、外に出られなくなるという意味では、この漫画に描かれているブラック企業と川崎のスラム街も似ていると感じました。

 

本の中では、

元不良だった人がヒップホップの大会で優勝したことをきっかけに川崎の外の世界とのつながりが生まれ、自分が生きてきた世界の特異性を知ることができた。それによって外に出るきっかけができた

という話が紹介されています。

 

何かきっかけがあれば外の世界とつながることができますが、こうした人々はレアなケースなのかな、と思います。

やはり外の世界の側から、情報や価値観を発信して伝えていくことが重要なのではないでしょうか。

 

川崎のスラム街だけではなく、狭い世界に閉じ込められている人は多く存在すると思います。

そうした人々のために、様々な世界が存在することを積極的に発信していくことが重要なのではないかと感じました。