自分達の乗った車が工場に着いた時だった
耳鳴りがするほどの大きな音が響いた
一瞬何が起きたのかわからなかった
「あれって…」
慎が指を指す
その先には白い煙をあげている工場が見えた
凪沙「承志…」
車が止まってる間に凪沙は飛び降り工場に向かって走り出した
慎「凪沙!」
凪沙の手を掴むが振りほどかれた
慎も凪沙の後を追った
建物の入口は無事のようだった
白い煙が上がってるのは奥の方だった
だが、いつ火が回って来るかわからない
今にも建物に飛び込みそうな凪沙を後から押さえ込む
凪沙「慎 離してや」
慎「いつ 火がくるかわからんとこに 行かせられんけん…」
凪沙「今ならまだ探せる! 承志が居らん世界なんて考えられへんねん」
そんな必死な凪沙の顔初めて見た気がした
そのとき社長達も追いついた
社長「あの裏からなら左の入口から入ろう」
誘導してくれた
社長に続いて左の入り口から飛び込む
入り口にいた警備の人に止められたが、社長が名乗り 奥の工場から火が上がってる事を告げる
警備「しかし…副社長の許可がないと 奥の工場には通せません」
社長「全責任は俺がとる 早く消火活動をお願いします」
警備「わかりました 行きましょう」
社長「ありがとう」
中に入るとそこは吹き抜けのエントランスのようになっていて
上の階までつづくエスカレーターがあった
凪沙はエスカレーターの下に立ち上を見上げる
二階部分にあたるところから上は白い煙に覆われていた
社長「工場の入り口は?」
警備「二階の奥の扉からと三階からも入れるようになってます。自分たちが行って避難誘導してきますので ここで待っていてください」
と言うと警備の人達はエスカレーターに乗って白い煙の中に消えていってしまった
静まり返ったエントランスでエスカレーターの下から凪沙はめいいっぱいの声で叫んだ
凪沙「承志~!承志~!」
承志「海咲大丈夫か?」
海咲「うん 」
承志「こっちや!」
海咲「でも そっちのほうが煙すごない?」
承志「今凪沙の声がこっちから聞こえた」
海咲「それって・・・幻聴・・・」
承志「ちゃう しっかり聞こえた」
海咲「・・・・」
承志「ほんまやって ・・・でも 海咲ここで待っといてちょっと見てくるから」
海咲「そっち煙で全然見えへんし・・・」
承志「大丈夫やから 待っといて」
海咲を残して承志は煙の中へ消えてってしまった
凪沙はもう一度叫ぶ
凪沙「承志~!承志~!」
叫びながらそのエスカレーターに乗った
慎「凪沙!」
凪沙「大丈夫やから。・・・」
それ以上慎は引き止める事は出来なかった
白い煙の中を進みながらまた叫ぶ
凪沙「承志~!承志~!承志のアホ~」
承志「誰がアホや!」
上の方から声がした
見えへんけど 承志の声や
凪沙「承志~!承志~!」
承志「凪沙!」
長い長いエスカレーターの上りと下り二人が交わる
白い煙から承志が見えた
その瞬間凪沙は承志の胸倉を掴んだと同時にかみつくようなキスをした
その腕をひき承志は凪沙を抱き寄せた
承志「お前 危ないやろ!」
凪沙の顔を両手で包みしっかりと見つめる
その大きな黒い瞳がうるんでいた
承志「凪沙・・・」
その顔をみたら言葉が出なくなってしまった
凪沙「めっちゃ心配した 俺の事一人にすんなや・・・」
承志「ごめんな・・・・」
凪沙「もう 承志が居らんの耐えられへん 承志・・・結婚しよ」
承志「お おん 」
とりあえずエスカレーターの上なので凪沙を立たせ 自分も立った
そのまま下に着いた時レスキューの人や警備の人警察消防の人々がエントランスを埋め尽くしていた
二人が下に着くと一斉に拍手で迎えられた
凪沙「えっ?何?」
承志「すいません 上にもう一人いるんですけど」
消防「もう向かってますよ!大丈夫です お幸せに」
承志「えっ?」
エントランスに着いてその理由がわかった
エスカレーター全体が下に設置してある防犯カメラの映像に映し出されていた
(//・_・//)もしかしてさっきの・・・・
つづく
今年中に終わるのかな?