梅雨入りしたとたん、本当に毎日よく降る。

昨夜から降り続く雨が朝になっても止まない。窓を叩く雨音で目が覚めて、癖で塀の上を確認する。やっぱり誰もいない。毎朝日向ぼっこをしていたマッパギも、コンビニ前が定位置のタキシードも、今日は全員欠勤だ。

傘をさしてコンビニへ行く途中。路地はすっかり水浸しだ。水たまりをよけながら歩いていると、ふと瓦屋根の軒下が目に入った。

そこにタキシードがいた。

 

 

古い瓦屋根の下、コンクリートの隅で体を丸めて寝ている。軒先からは雨垂れがポタポタ落ちているのに、不思議と奥の方は床までカラッと乾いていた。

一歩間違えればびしょ濡れなのに、見事に一番乾いた場所を見つけたんだな。目を閉じてぐっすり眠る姿を見ると、ここが彼の“常連の避難所”らしい。

起こしちゃ悪いと思って、カメラだけそっと向けて通り過ぎた。撮った写真を見返すと、雨は雨で降っていて、猫は猫で平然としている。その対比に、なぜかホッとした。

午後5時ごろ、雨が小降りになった。

夕飯の買い物に出る時、もう一度その場所を見たけど、すでに空っぽだった。代わりにコンビニ前の縁台にタキシードが上がって、毛づくろいをしている。30分で出勤完了だ。

家に帰って町内のグループLINEに写真を送ったら、反応がすごかった。

「あれ、うちの隣の家の軒下だ」
「うちの辺の子たち、雨の日はみんなあそこに集まるよ笑」
「避難所だよね。うちのタキシード、冬もあそこで寝てる」

実は、地域猫たちの間では有名な“当たり”の場所だったらしい。私は今日初めて知ったけど、彼らは何年も前から使っていたんだ。

人間は雨が降るとオロオロして、服が濡れる心配ばかりする。でも猫たちはもう答えを知って生きている。

一番安全で、一番乾いた場所。傘もいらないし、天気予報も見ない。ただ、本能で分かっている。

明日も雨らしい。

朝、塀の上が空っぽでも、もう心配しないことにする。みんなそれぞれの“常連席”に入って、ぐっすり寝ているだろうから。

代わりに雨が上がったら、ちゅーるを一本持って軒下に挨拶に行こう。

「昨日、よく眠れた?」って。

 

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