27日の東京市場は株式、債券ともに小幅安。年末・年始の休暇を間近に控えて機関投資家やヘッジファンド勢などは売買自体を見送っており、方向感は出ていない。株式市場では、金融機関の信用不安は一服しているようにもみえる。
 だが、年明け以降に相次いで明らかになる金融機関の決算への警戒感は解けておらず、年初高への期待感は盛り上っていない。一部では株式を含めた円資産離れを指摘する声も出ている。
 <年末前に利食い売り>
 株式市場では日経平均が反落し、1万5500円台で推移している。前日までの4日続伸で約600円上昇していたことから、目先の利益を確定する売りが先行した。
 「海外勢は引き続き動きが鈍い。年末年始の休暇を控え、一部の国内機関投資家から先物
にヘッジ売りが出て上値を抑えている」(外資系証券売買担当者)という。
 丸和証券調査情報部次長の大谷正之氏は「すでに休暇に入っているディーラーも多く薄商いが続いている。朝方にアジアや米国勢からのバスケット買いが入っていたが、一巡すると休暇を控えたヘッジ売りに押されているようだ。一目均衡表の抵抗帯に上値がつっかえているというテクニカルな要因もあろう」と話している。
 <待機資金は動かず>
 欧米中央銀行による流動性供給や、米大手金融機関に対する政府系ファンドの出資などが相次ぎ、年末年始の信用収縮リスクが後退。これまで株価は順調に戻してきたが、「来年1月中旬から始まる金融機関の10―12月期決算に対する警戒感が根強い。サブプライム関連の損失規模を確認するまで待機資金が本格的に動くことはなさそう」(準大手証券ストラテジスト)との見方が出ている。
 別の準大手証券関係者は「クリスマス商戦が予想通り不振のようで、米国経済のジリ貧シナリオのなかで今後どこまで悪化するのかが問題だ。来年の相場に期待が持ちにくいため、チャンスがあればいったん売っておこうとする動きが出ている」という。「世界の名目国内総生産(GDP)に占める日本の比率が10%を割るような状況のなかで、海外勢が日本株をオーバーウエートにするとは考えにくい。ドル資産離れと言われるが円安、株安が続く円資産離れも視野に入れなければならない」(欧州系証券)との指摘も出ている。

 <1月効果で見方割れる>
 SMBCフレンド証券株式ストラテジストの中西文行氏は「米国では1月効果の経験則があり、1月に投資するとパフォーマンスが高いことで知られている。東証1部でみても1月は過去10年間、例外なく外国人が買い越している。明るい材料が少ないようにみえるが、新興国向けの高成長を背景に世界経済、日本経済との底堅さを維持するだろう」と話している。
 一方、丸和証券の大谷氏は「1月効果には、海外の機関投資家が新年に入り運用を始め
るという一定の裏付けがあると言われるが、今年はサブプライム問題の影響が懸念されている米金融機関の決算発表も控えており、運用側も慎重になる可能性がある。年初高になったとしても、上値重くもみあいになる公算が大きい」とみている。
 <コアCPI+0.4%でも平静か>
 円債市場は反落しているものの、株安を受けて下値はしっかり。国内投資家からの現物買いが意識され、国債先物は前日終値付近まで下げ幅を縮小する場面があった。新光証券・債券ストラテジストの三浦哲也氏は、債券市場の地合いについて「短期金利が上昇しないのが最大のポイント。債券の下値を売るまでもないとの意識が働いており、キャッシュで売り込めない環境が先週から続いている」と話す。
 28日に発表される11月全国消費者物価指数(生鮮食品除く、コアCPI)は前年比0.3%の上昇が予想されている。原油価格高騰を受けて石油製品価格が大幅に上昇したことが主因だが、円債市場では売り材料になるとの見方はあまり聞かれない。
 日興シティグループ証券、債券ストラテジストの山田聡氏は「コアCPIがプラス0.4%程度までの上ブレなら、市場の反応としては短期筋の先物売り程度に限られる可能性がある」とみている。新光証券の三浦氏も「原油価格の影響は無視できないものの特殊要因としか日銀は認識していないと参加者は受け止めている。プラス0.3―0.4%でも市場はあわてない可能性がある」と述べている。
 逆に、「足元の物価上昇は原油高などのコスト増が主因。今後は企業収益圧迫により株価のマイナス材料として作用することが予想されるほか、個人消費にとっても下押し要因になり得る」(外資系証券のチーフストラテジスト)として、円債にとってはフォロー、との声も聞かれた。
 <ドルは114円サポート>
 為替市場でドル/円は堅調地合い。年明け以降の米景気懸念が意識され買いは一巡して
いるが、114円を下回ったレベルではサポートされている。仲値では前日に比較的大きな値動きがみられたが、きょうは限定的な値幅にとどまった。ある外銀関係者は「足元は静かな取引」としたうえで「東京の金融市場の地盤沈下が進むなか、個人投資家が動き出さないと世界の金融市場のなかで存在感が出てこない」と指摘する。
 ユーロは前日の海外市場で選好されたが、利益確定売りが出やすいほか、ポジションを構築しにくい年末のため上値が重い。足元では、来年1月の米利下げ観測に懐疑的な見方を強める投資家も出てきており、今週発表の11月米耐久財受注や11月米新築1戸建て住宅販売が注目されている。1.45ドルを上抜けないと上昇に弾みがつかないとみる外銀筋もいる。
114円サポート>
 為替市場でドル/円は堅調地合い。年明け以降の米景気懸念が意識され買いは一巡して
いるが、114円を下回ったレベルではサポートされている。仲値では前日に比較的大きな値動きがみられたが、きょうは限定的な値幅にとどまった。ある外銀関係者は「足元は静かな取引」としたうえで「東京の金融市場の地盤沈下が進むなか、個人投資家が動き出さないと世界の金融市場のなかで存在感が出てこない」と指摘する。
 ユーロは前日の海外市場で選好されたが、利益確定売りが出やすいほか、ポジションを構築しにくい年末のため上値が重い。足元では、来年1月の米利下げ観測に懐疑的な見方を強める投資家も出てきており、今週発表の11月米耐久財受注や11月米新築1戸建て住宅販売が注目されている。1.45ドルを上抜けないと上昇に弾みがつかないとみる外銀筋もいる。
[東京 21日 ロイター] ロイターが市場関係者30人に対しヒアリングした2008年の日経平均レンジ予想では、高値の平均値(端数切り捨て)が1万8300円、安値の平均値が1万4400円となった。ロイターが市場関係者に対しヒアリングした2008年の株式見通しの各コメント(一部抜粋)は以下の通り。順不同。 
 <リーマンブラザーズ証券・チーフストラテジスト 宮島秀直氏> 
 ボトムの1万4500円は2月半ばとみている。サブプライム問題が最終局面を迎え、欧州の一部の金融機関で信用不安が高まる可能性があるためだ。ただサブプライム問題はイベントリセッションであり、循環的な景気後退という本当の意味でのリセッションではない。このため金利引き下げなどマクロの対策で対応が可能だろう。
 さらに日本株は需給面で来年は改善する見通しだ。外国人投資家が2四半期連続で売り越したのは過去10年、例がなかった。かつ株価収益率(PER)も歴史的な低水準に到達し、2つのボトムシグナルが点滅している。来年はこれまでの日本株のアンダーウエートをニュートラルに戻す形で、年金など国内機関投資家が3─4兆円、ソブリン・ウエルス・ファンドが1.3─1.4兆円、ゆうちょ銀行が1.5─2兆円買ってくる公算が大きい。こうした需給の流れをみてヘッジファンドなども日本株への買い意欲を見せ始めている。年末に向けて1万7500円を目指す展開となろう。
 ただ、2万円は難しい。投資家は日本株のアンダーウエートをニュートラルに戻すだけであり、オーバーウエートにするわけではないためだ。日本企業の増益率が来期は今期よりも低下する見通しであるほか、海外投資家は他のアジア企業と比べ、日本企業が新しいコーポレートバリュー、つまり新しい価値を生み出す力に乏しいとみている。 
 <大和総研・チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治氏> 

 米銀の新BIS規制導入を控え、リスクマネーが膨らむ環境にはならないなど、需給面では良好とは言えないだろう。実際、前回のBIS規制導入時の92年も欧州通貨危機が起きた経緯があり、そうした意味で上値は追いにくい展開になるとみている。さらに、国内政治においても、枠組みの変化が予想されることも、株価を動きにくくする要因になりそうだ。もっとも、日本株の水準は割安であるため、大きく崩れることもないだろう。 
 <日興コーディアル証券・国際市場分析部長 馬渕治好氏> 
 年前半にサブプライム絡みの悪材料を織り込み、下げ止まり感が出るとみている。米利下げや政府の対策など個別をみると影響力が弱いように考えられるが、全体で効果を発揮してくるだろう。日経平均は年前半に安値を付け、後半は1万9500円程度まで上昇に向かうと予想している。日米とも景気が持ち直す。企業業績はもともと堅調だが、日本の内需にもようやく回復の兆しが出るだろう。
 08年内に予想される総選挙前は政局の流動化懸念からいったん下振れる可能性もあるが、トレンドを変えるには至らない。民主党が勝って民主党政権となれば、参院とのねじれが解消する。自民・公明が勝てば、直近の民意として国会運営が好転する。いずれにしても結果がはっきりすれば株式市場は前向きにとらえるだろう。
 北京五輪後の中国景気に懸念を示す声もあるが、われわれの試算では、五輪による中国のGDP押し上げ効果は1%程度に過ぎない。これがはく落しても高成長の中国経済に与える影響は軽微だ。物色動向としてはグロースでは買いにくい。クオリティ重視でバリュー系中心の下値拾いになるとみている。 
 <野村証券金融経済研究所・ストラテジスト 藤田貴一氏> 
 4―5月に来期の好業績を織り込む形で1万7500円程度の高値があるとみている。1月以降は海外からの資金流入も回復に向かうだろう。ただ、海外の景気減速を考えれば日本株だけがバリュエーションを切り上げることはない。PERは16―17倍で推移すると予想している。株価は企業の増益に応じたペースで上値を追うとみている。 
 <みずほ投信投資顧問・執行役員 岡本佳久氏> 
 来年の相場をみるうえでのポイントは、サブプライム問題による米国実体経済の悪化の度合いだ。基本的には4─6月期の景気底打ちを前提に1─3月期に日経平均は1万4000円程度の安値を付け、夏場にかけて景気改善を織り込む形で1万8500円程度まで上昇すると考えている。 
 <新生銀行・アセットマネージメント部部長 作本覚氏> 
 メインシナリオとしては、サブプライム問題に対して米当局が公的資金投入を含めた強力な政策対応を取るとみている。この場合、来年の日経平均は1万5000円程度が下値となり1万9000円程度まで上値が期待できよう。しかし、十分な政策が出なかった場合は問題がくすぶり続けそうで、レンジは1万4500─1万7500円に切り下がるだろう。 
 <草野グローバルフロンティア・代表取締役 草野豊己氏> 
 これまで金融市場の問題だったサブプライム問題が、来年は米国の実体経済に影響を及ぼしていくとみており、株式市場については今年以上に慎重にならざるを得ない。インフレ懸念が高まったことで米金融政策の手足が縛られる可能性が出てきており、小出しの政策対応のなかで問題は長引くことになるだろう。米国経済の低迷は中国など新興国にも影響を及ぼす見込み。輸出依存度の高い日本にとっては米国向け輸出、新興国向け輸出がともに圧迫されるため、日本株への悪影響は免れない。ヘッジファンドはすでに日本株での運用を縮小しており、欧州などの長期投資家も日本株での運用に慎重になるとみている。 
 <興銀第一ライフ・アセットマネジメント・シニアポートフォリオマネジャー 宮田康弘氏> 
 年前半は米金融政策などの効果で株価は上昇基調。年央になると、米実体経済の悪化と円高進行で株価は下落。その後、年末にかけてファンダメンタルズの改善を背景に持ち直すというイメージを持っている。円高進行の理由は、欧米の利下げあるいは利上げ打ち止めによる相対的な円高と、北京五輪(8月8日以降)前後に人民元が再度切り上げられる可能性だ。それによる円の連れ高で水準としては1ドル100円を想定する。
 また、米大統領選で民主党のクリントン上院議員が選出されれば、ドルがさらに売られる可能性があるとみている。 
 <三井住友銀行・市場営業統括部マーケットアナリスト 宇野大介氏> 
 米国経済はリセッション入りするとみる。デカップリング論が強いが個人的にはカップリングの様相になると予想。米景気減速は世界経済に波及する。リスクは国内は政治だろう。海外はサブプライムローンの処理が長期化して2010―2015年ぐらいまで問題が長引く可能性があるとみている。日本株に関しては、国内景気が回復後発組なので大きく売り込まれることはなく、立ち位置としてはよいところにあると思う。 
 <新光証券・エクイティストラテジスト 瀬川剛氏> 
 サブプライム問題の株価への影響は米金融機関の10─12月期決算の発表などをきっかけに和らいでいくとみており、日経平均は2月に1万5000円程度の下値をつけたあとは反転するだろう。米大統領選をにらんで、サブプライム問題に対する財政出動を含めた景気テコ入れ策が期待できる。6月頃に1万8000円程度の高値をつけるとみている。来年は日本でも解散総選挙が実施されるとみており、SWF(ソブリン・ウエルス・ファンド)の動向と合わせて株価をみるうえで注目している。 
 <岡地証券・投資情報室長 森裕恭氏> 
 国内景気は緩やかに拡大する可能性が高いというのが市場のコンセンサスになっているが、2007年の高値で今回の景気拡大についてはピークを打ったのではないか。北京オリンピック後の中国経済に対して不安感が台頭する可能性もあり、そうなった場合、順調に推移している企業収益にも水を差しかねない。サブプライム問題の後遺症から北米景気の後退懸念が大きいことも気掛かりだ。当面は、景気が緩やかな上昇基調が続くとみられるため、株式相場はここから回復に向かうと想定されるが、イメージとしては2007年の高値に対する二番天井を付けに行く格好となるのではないか。 
 <マネックス証券・投資情報部長 清水洋介氏> 
 相場をみるうえでのキーワードは「映像=動画」とみており、有機ELディスプレーや映像の配信、ダウンロードなどが話題になるだろう。テレビのオンデマンド化や「iフォン」などの携帯端末での動画配信なども注目を集めると考えている。 
 <第一生命経済研究所・主席エコノミスト 嶌峰義清氏> 
 年前半の株式市場は、サブプライムローンに絡む問題を引きずり、急落リスクをはらむと予想している。過去の似たような案件(日本のバブル崩壊やS&L危機)と比較すれば、今回の問題でも積極的な利下げや金融機関救済策は必須と思われるが、現状ではそうした危機感は低く、政策対応はやや遅れるリスクが大きい。
 高値から30%の調整として、2―4月頃には底値をつけると予想している。その後は、本格的な利下げやサブプライム関連資産のバランスシートからの切り離し策などの対応が量られると期待し、株価は緩やかに持ち直すと予想する。ただし、欧米利下げに伴う円高進展は、株価の頭を抑える要因となる。 
 <ちばぎんアセットマネジメント・専務 安藤富士男氏> 
 米利下げや各国中央銀行の流動性供給策などが効果を発揮し、日経平均は6―7月に2万円近辺の高値を付けるとみている。日米とも1―3月頃までの経済指標は悪いとみているが、過剰流動性の効果で不況期の株高の様相を呈するだろう。ねずみ年は過去をみても株高の経験則がある。ただ北京五輪の反動で年後半はやや軟調な展開も予想される。 
 <水戸証券・投資情報部長 松尾十作氏>  
 12月18日が2番底であり1月下旬に向けて日経平均は戻るとみている。ただ、その後はサブプライム問題が深刻化し、ドル/円は1─3月に105円を割り込む可能性がある。来期の日本企業の業績に不信感も高まるため日経平均株価も下落するだろう。その後、夏に向けて回復し北京オリンピックの終了で再び株価が調整するだろう。秋以降はドルが揺り戻しで120円程度まで高くなり、日本の企業業績への評価も回復するため年末高になる見通しだ。 
 <コスモ証券・エクイティ部副部長 清水三津雄氏> 
 年末高を予想している。大統領選挙で選ばれた新しい米国のトップが示す新しい世界観が次のシナリオをつくりあげていくことになろう。新興国を中心とした世界経済拡大が再びクローズアップされ、それに大きくかかわっている日本企業に注目が集まるとみている。
[東京 21日 ロイター] ロイターが市場関係者30人に対しヒアリングした2008年の日経平均レンジ予想では、高値の平均値(端数切り捨て)が1万8300円、安値の平均値が1万4400円となった。関係者の多くは、来年もサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題が尾を引くとみているが、年央から年末にかけては景気回復、堅調な企業業績を背景に株価上昇を予想している。

 ヒアリングは12月17日―20日に実施した。予想の最高値は2万1000円、最安値は1万2500円だった。

 

 <政策対応に遅れ>

 

 市場関係者の間では、サブプライム問題が簡単には解決しないとの見方が広がっている。信用収縮に対する不安と景気減速が足かせとなり、年前半の株価はさえない展開になるとの見方が多い。「日本のバブル崩壊や米S&L危機など過去の似たような事例と比較すれば、今回の問題でも積極的な利下げや金融機関救済策は必須と思われるが、現状ではそうした危機感は低く、政策対応はやや遅れるリスクが大きい」(第一生命経済研究所・主席エコノミストの嶌峰義清氏)、「米連邦準備理事会(FRB)はFFレートを最終的に3.5%まで下げるとみているが、利下げペースは後手に回りそうだ。米国の経済成長率が下がり、円高が日本株の上値を圧迫する」(モルガン・スタンレー証券ストラテジストの神山直樹氏)など、政策対応の遅れを懸念する声が出ている。

 

 対岸の火事とみられたサブプライム問題が長期化すれば、日本経済にも影響を及ぼすとみられている。草野グローバルフロンティア・代表取締役の草野豊己氏は「インフレ懸念が高まったことで米金融政策の手足が縛られる可能性がある。小出しの政策対応のなかで問題は長引くことになるだろう。米国経済の低迷は中国など新興国にも影響を及ぼす見込み。輸出依存度の高い日本にとっては米国向け輸出、新興国向け輸出がともに圧迫されるため、日本株への悪影響は免れない」とコメントしている。

 

 <過剰流動性の効果> 

 

 東証の斉藤惇社長は18日の定例会見で、サブプライム問題が厳しい状況にあるとの認識を示したうえで、「世界の中央銀行は流動性供給を続けざるを得えない。そのツケはインフレ圧力だ。来年は流動性が行き場を求めた動きになる」とし、金融相場的な色彩が強くなるとの見方を示した。「流動性を受け止める第1の候補は米国市場、次は日本とみている。金融のプロから見れば日本は安定した市場だ」と自信をみせた。

 

 過剰流動性に期待する声は市場関係者からも出ている。ちばぎんアセットマネジメント専務の安藤富士男氏は「米利下げや各国中央銀行の流動性供給策などが効果を発揮し、日経平均は6―7月に2万円近辺の高値を付けるとみている。日米とも1―3月ごろまでの経済指標は悪いとみているが、過剰流動性の効果で不況期の株高の様相を呈するだろう」との見方を示す。「サブプライム問題はイベントリセッションであり、循環的な景気後退という本当の意味でのリセッションではない。このため金利引き下げなどマクロの対策で対応が可能だろう」(リーマンブラザーズ証券・チーフストラテジストの宮島秀直氏)との指摘も出ている。

 

 宮島氏は来年の日本株の需給が大幅に改善するとみている。「外国人投資家が2四半期連続で売り越したのは過去10年、例がなかった。かつ株価収益率(PER)も歴史的な低水準に到達し、2つのボトムシグナルが点滅している。来年はこれまでの日本株のアンダーウエートをニュートラルに戻す形で、年金など国内機関投資家が3─4兆円、ソブリン・ウエルス・ファンドが1.3─1.4兆円、ゆうちょ銀行が1.5─2兆円買ってくる公算が大きい」と分析している。

 

 国内景気については、年後半にかけて回復を見込む声が多い。日興コーディアル証券・国際市場分析部長の馬渕治好氏は「米利下げや政府の対策など個別をみると影響力が弱いように考えられるが、全体で効果を発揮してくるだろう。日米とも年央以降景気が持ち直す。企業業績はもともと堅調だが、日本の内需にもようやく回復の兆しが出て株価を下支えする」という。みずほ投信投資顧問・執行役員の岡本佳久氏は「4─6月期の景気底打ちを前提に1─3月期に日経平均は1万4000円程度の安値を付け、夏場にかけて景気改善を織り込む形で1万8500円程度まで上昇する」と予想している。

 

 <イベントリスク>

 

 2008年は8月の北京五輪、11月の米大統領選など大型イベントが予定されている。日本でも08年中に衆院解散、総選挙が濃厚とみられている。岡地証券・投資情報室長の森裕恭氏は「北京オリンピック後の中国経済に対して不安感が台頭する可能性もあり、順調に推移している企業収益にも水を差しかねない」と警戒する。半面、「五輪による中国のGDP押し上げ効果は1%程度に過ぎない。これがはく落しても高成長の中国経済に与える影響は軽微だ」(日興コーディアルの馬渕氏)との声もあった。

 

 米大統領選については、「民主党のクリントン上院議員が選出されれば、ドルがさらに売られる可能性がある」(興銀第一ライフAM・シニアポートフォリオマネジャーの宮田康弘氏)との指摘がある。コスモ証券・エクイティ部副部長の清水三津雄氏は「新しい米国トップが示す新しい世界観が次のシナリオをつくりあげていくことになろう。新興国を中心とした世界経済拡大が再びクローズアップされ、それに大きくかかわっている日本企業に注目が集まる」とコメントしている。


2008 世界恐慌--米中“基軸経済”の崩壊

 世界経済は、大国の米国と中国が「車の両輪」の役割を果たし、相互に発展を支え合う形で、成長を維持してきた。しかし、この好循環をもたらした構造に変調が見えている。サブプライムローン問題は、米国の信用収縮や消費の減退をもたらし、それは中国の輸出減となる。一方で、長く続く過剰流動性は資源価格を急騰させ、経済にマイナスの要素となり始めた。住宅価格の高騰など資産バブルも崩壊の淵にある。2008年の世界経済は、これまでのプラス要素が一気に逆回転しかねない恐怖と闘わざるをえない。(週刊エコノミスト編集部)

第1部 米中欧-好調経済に影

◇米国「借金漬け消費」の後始末 経済悪化は世界に伝播する

「世界経済を牽引してきた米中の“ツインエンジン”がついに息切れしそうだ」

 2008年の世界経済はどうなるのか。一言で表現しようとすればこうなると、双日総合研究所の吉崎達彦副所長は話す。

 07年夏に表面化したサブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)問題。それをきっかけに、米国の景気減速懸念は一気に強まった。だが米国経済が減速しても、中国をはじめとする新興国の高成長が下支えして、世界経済は堅調さを保つという「デカップリング(分離)論」が聞かれる。本当にそうだろうか。

◇米国の対中国貿易赤字額は10年間で5.8倍に急増

「米国と中国の意図せざる経済の融合によって、米中の貿易インバランス(不均衡)が大きくなりすぎた」と吉崎氏は指摘する。米中経済の融合が進んだ結果、米国経済が失速すれば、中国経済にも甚大な影響が及ぶということなのだ。

(図1)

 ここ数年、米中の経済的結びつきがいかに強くなり、世界経済におけるプレゼンスを大きくしてきたか。両国の貿易状況をみれば、その実態はおおよそ掴める。

 図1は、1996年と06年の米国貿易赤字の相手国の内訳を示したものだ。

 96年、米国にとって最大の貿易赤字国は日本で、その額は475億ドル(全体のシェアは28%)だった。だが、その後2位中国(96年は395億ドル、同23%)が00年に日本を抜いてトップとなり、06年には米国の対中国貿易赤字額は2325億ドルと96年の貿易赤字総額の1.3倍にも達した。米国の対中国貿易赤字は10年間で5.8倍に膨らんだ。

 中国側からみれば、反対に対米貿易黒字は毎年拡大を続ける。それでも人民元を切り上げず、ドル買い・元売り介入を続けた結果、膨大なドルが外貨準備として積み上がっていった。中国の外貨準備高は、07年9月までに世界最大の1兆4336億ドル(約157兆7000億円)にのぼる。この大半を米国債で運用するため、再び米国に流入し、膨大な貿易赤字を含む経常赤字を穴埋めする構図が生まれる。

(図3)

 もう1つ、図1が象徴的に示すのが、米国の貿易赤字の拡大ぶりである。96年の1702億ドルから10年後の06年には、4.8倍の8173億ドルに膨れ上がった。図3と併せてみると、米国が世界中からモノを買い漁っている様子がよくわかるだろう。

 中国がモノを作り、それを米国が買い入れる--という「米中融合経済」がここ数年拡大し、それが牽引力となって、世界経済の成長を支えてきたのだ。

 ところが、この好循環に変調の兆しが見え始めたのである。

◇米家計の過剰債務は3.8兆ドル

 米国では、サブプライム問題をきっかけに、長年の「借金漬け消費体質」のツケが噴き出そうとしている。

 12月上旬、第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは、カリフォルニア州やテキサス州を訪問し、金融機関などでヒアリング調査を行った。熊野氏が深刻だと受け止めたのは、サブプライム問題を米国家計の過剰債務問題の象徴として理解している人の意見だった。

「米国では、90年から07年6月までに家計の負債残高が3.7倍になったのに対して、所得水準は2.4倍にとどまっている。特に、25歳以下の若者がローンを使いやすくなり、過剰消費体質に陥っているという声を聞いた。70年代の荒れたデトロイトを知っているという人物は、当時と雰囲気が似てきたと話していた。投資家に本当にリスクを認識させて金融商品を販売しているかどうかも疑わしい。米国にこそ、金融商品販売法が必要ではないかと感じた」(熊野氏)

(図2)

 米国の過剰債務体質について、もっとストレートに指摘するのは、三菱UFJ証券の水野和夫チーフエコノミストだ。

 水野氏が問題視するのは、米国の家計における可処分所得に対する住宅ローン残高の割合の大きさである。07年第3四半期時点で家計の可処分所得に対する住宅ローン残高の割合は102%に達しているという(図2)。これに対して、52年第1四半期から98年第1四半期まで、所得に見合った返済可能な借入額との比率を示す傾向線上の同比率は65%だ。現状では、65%を上回る部分の37%分、3.8兆ドルが家計の過剰債務と水野氏は試算する。

「3.8兆ドルの過剰債務解消には、金融機関が1兆ドルの損失処理をすることを前提に、個人貯蓄率を3%に高め、年間3000億ドルを返済に回すとしても、約9年間を要する」

 しかし、この過剰債務解消にはリセッション(景気後退)を伴うリスクが高い。家計が債務返済に所得を向ける分、個人消費が落ち込むからだ。水野氏はサブプライム問題に端を発する過剰債務解消によって、米国がリセッション入りする可能性は50%以上あると予測する。

 熊野氏も「FRB(米連邦準備制度理事会)の金融緩和策で株価上昇を支えられれば、個人消費の停滞は乗り越えられるだろうが、その逆はリセッションだ」と語る。

 米国の消費を支えてきた住宅市場の冷え込みは激しい。

 米商務省が12月18日に発表した11月の住宅着工件数は、季節調整済みの年率換算で118.7万戸で、前月比3.7%減、前年比では24.2%という大幅な下落となった。特に、約7割を占める1戸建て住宅は前月比5.4%減の82.9万戸と91年8月以来の低水準で推移。住宅建設の先行指標となる11月の認可件数は115.2万戸と前月比1.5%減少と先行きに明るさはみえない。

 融資基準の厳格化は、住宅販売不振にもつながっており、過剰在庫や差し押さえ物件増に伴い、住宅価格の下落も避けられない。すると、住宅価格上昇を前提にした借り入れが困難となるばかりか、資産価格下落によって借り入れの返済に追われ、GDPの7割を占める個人消費を減退させる。これが好調だった米中経済の歯車を狂わせる。

◇07年から始まった中国の対米輸出減少

(図4)

 みずほ総合研究所中国室の鈴木貴元主任研究員は、「好調だった中国の対米貿易が07年に入って、鈍化し始めた。これは米国の景気後退の予兆だったのではないか」と指摘する。

 米国商務省の資料によれば、中国からの住宅関連に使用されるセメントやガラス、鉄鋼など建材の米国向け輸出は、07年10月までの実績で対前年比87%にとどまっている(図4)。それ以外にも、家電や設備投資関連にまで落ち込みが広がっている。足元ではNIES(韓国、台湾、香港、シンガポール)やASEAN(東南アジア諸国連合)、アフリカ向けも鈍化しているという。

 鈴木氏は、「中国の貿易は、日本・韓国・台湾から部品を仕入れ、中国で組み立て、欧米に輸出する加工貿易タイプが多いが、近年は中国から新興国に向けた部品輸出も増えている。足元、これが落ち込む可能性があり、サプライチェーンの目詰まりが、多国間で生じる兆しがある。製造業への依存の強い新興国、特にNIESやASEANは輸出が滞ると、生産の停滞を経由して、雇用や消費にも影響を与えかねない。ここまでの連鎖はまだ大きく報じられていないが、注意しておく必要がある」と警鐘を鳴らす。

 米中を起点にした経済も実は、世界経済のかなりの部分でつながっている。「デカップリング(分離)」ではなく、「カップリング(一体)」であれば、米中経済の失速は、世界経済を巻き込むことになる。

◇金融恐慌入り口の日本の97年と似てきた

 UBS証券の白川浩道チーフエコノミストは「サブプライム問題に揺れる米国は、利下げを通じてソフトランディング(軟着陸)を目指しているが、それも怪しくなってきた」と指摘する。

 通常、利下げを行えば、金融機関は、長短金利の拡大で利益を増大させ、一方で、株価上昇や消費刺激、設備投資の促進で景気を下支えするという効果がある。しかし、今、欧米では民間金融機関に資金が供給されても、それは自己資本比率維持に回るだけで、企業や個人など資金を必要とするところに行き渡らないのだ。まさに日本が十年前に経験した“金融恐慌”目前の様相だ。

 97年11月、準大手証券の三洋証券が短期金融市場で戦後初のデフォルト(債務不履行)を引き起こし、資金を融通し合う金融機関を猛烈な疑心暗鬼に陥れた。

 短期資金の目詰まりは、その後、経営不安が取り沙汰されていた北海道拓殖銀行や山一証券という大手金融機関までも破綻に追いやった。それは「税金投入やむなし」との世論形成へとつながり、98年以降、公的資金が大手行に注入された。

 それでも、資産デフレで傷ついた銀行の不良債権問題は収まらず、金融仲介機能が麻痺。日銀は、個別企業のコマーシャルペーパー(CP)を積極的買い入れ、さらに個別株までも購入したのは周知の通り。そして、中央銀行としては未曾有のゼロ金利、量的緩和政策に突き進んだ。

 今、欧米金融市場で起きていることは、まさに日本の97年前後の様相と相似している。欧米中央銀行が協調して巨額の年越え資金を供給するという異例の事態が、それを如実に物語る。

 グリーンスパン前FRB議長は12月16日、金融機関に対する公的資金投入について「必要に応じて大規模に使うべき」と指摘。大胆な税金投入が必要なほどの事態に追い込まれていることを示唆した。ブッシュ大統領も翌17日、経済政策に関する演説のなかで、「住宅バブルを克服するにはしばらく時間がかかる」と、米政権がこれまで避けてきた「バブル」という表現を使って、ようやく事態の深刻さを認めた。

 草野グローバルフロンティアの草野豊己代表は「銀行の損失が確定するまで公的資金の投入は難しいだろう。それまで金融緩和で凌ぐしかないが、米国はドル安と原油高でインフレの危機にも直面している。住宅投資と消費が冷え込み景気が後退するなかでインフレが進めば、スタグフレーションだ。株も債券も売られる。その兆候はすでに出ている。08年は相当厳しい年になる」と覚悟を促す。

◇日本 外需依存型成長の限界

日本経済の先行きも明るいとは言えない。02年2月から始まった今回の景気拡大は、かつてないほどの外需依存型だけに、米中経済の失速は、日本の景気後退につながる可能性がある。

 いかに外需依存度が高いかは、経済成長率の寄与度を分析すれば、一目瞭然だ。07年度上期(4~9月)の実質GDP成長率は前年比1.7%だが、このうち外需が寄与したのが、1.0%である。直近7~9月の実質GDP成長率同1.9%に対する寄与度も1.1%と、半分以上を占める。外需は、輸出額から輸入額を差し引いたネットの輸出額で、弱い内需をカバーしてきた。

 ところが、米国経済の失速が中国をはじめ新興国や欧州に伝播すれば、当然、好調を維持してきた日本の輸出にもブレーキがかかる。明治安田生命運用企画部の小玉祐一エコノミストは、「今後、米国経済は減速する可能性が高く、外需依存で成長してきた日本経済への影響も小さくない」と語る。

 内需にも不安要素が多い。住宅投資は、07年6月の改正建築基準法によって7月以降、住宅着工件数が激減、建設関連業界に大きな影響がすでに出始めている。耐震偽装問題への対応から、建築審査を厳格にした結果、審査に手間取り、7月の住宅着工件数は前年同月比23.4%減の8.2万戸に落ち込み、8月同43.3%減(6.3万戸)、9月44.0%減(6.3万戸)と急減した。

 帝国データバンク情報部の篠塚悟氏は「厳しくなったのは3階建て以上の建物だが、3階建て戸建て住宅を手がけているのは主に中小零細の工務店や中小建築会社で、ここが大きな打撃を受けている」と語る。

 11月の倒産件数は906件と前年同月比で152件増えた(帝国データバンク)。全倒産に占める建設業界の割合は27.9%と3割近くの高水準だ。業界関係者によれば、着工の遅れから大手建材メーカーには「中小工務店から資材代金の支払い猶予の要請が増えている」という。

 原油高をはじめ原材料価格の上昇は消費者や中小企業にボディブローのように効いてきている。足元の状況からは、08年日本経済の展望は開けない。

国内では景気減速が鮮明になり、海外では依然としてサブプライムローン(信用力が低い人向けの住宅融資)問題の行方が不透明なままです。株式市場には悲観的な材料が多いのですが、ここでは、強気派の見方を紹介してみましょう。

   外資系証券のストラテジストA氏は、強気に見る背景として、5つの理由を挙げています。まず、米国の金融緩和。過去の米国の金融緩和局面では、日本のTOPIX(東証株価指数)のパフォーマンスも高いといいます。第2に、国内需要の回復。2006年、07年と税金や社会保険料の負担が増え、それが個人消費の足を引っ張ってきましたが、08年にはそうした要因が減るので個人消費は上向くと予想しています。第3に、高ROE、株主還元に結び付く財務レバレッジの引き上げ。第4が、割安感の台頭。10年物国債利回りと、東証1部上場株式の平均配当利回りが逆転。1部上場企業の4割以上がPBR(株価純資産倍率)1倍以下になるなど、株価は割安感を高めています。さらに、ここ数年、株式の売り手だった日本郵政が、08年は買い手に回ると予想されることも株式市場の支援材料になると、A氏は見ています。

  また、大手証券のストラテジストB氏は、米国の個人消費と住宅価格は相関性が薄いと主張しています。B氏によれば、過去10年を見ると、住宅価格の上昇や下落は個人消費にほとんど影響を与えていないというのです。であれば、サブプライムローン問題が米国の実体経済に与える影響も限定的になります。また、米国では景気後退の兆しが出れば、政府やFRB(連邦準備制度理事会)が経済政策で適切な手を打つため、景気後退は経済事象からは引き起こされないといいます。

  08年の株式市場がこうした強気派のシナリオに沿った形で動くのか、それとも悲観派の慎重な見方が現実になるのか。見方が大きく分かれる08年のスタートです。
■□■2008年相場を占う■□■

◆個人投資家にお勧めする投資戦略 日本株はすでに割安 08年は「下値拾い」のチャンス

 2008年は米国のサブプライムローン(低所得者向け高金利住宅融資)問題が、金融市場の混乱という「前半戦」から、不動産価格の下落を伴う実体経済への悪影響という「後半戦」に入っていくだろう。これは、日本を含む世界各国に影響を与えるが、世界経済を破壊するほどのものかといえば、そこまで深刻ではないと考えている。

 一般的に、長く続いた好景気の後半には、投融資が不動産に集中する。日本のバブル期も同じだった。その結果、徐々に不動産関連の不良債権が積み上がり、金融機関のなかには立ち行かないところが出てくる。日本は不良債権処理に時間がかかり、バブルの後遺症が長引いたが、米国はまだ景気の悪化がそれほど深刻ではなく、対応も迅速に見えるので、立ち直りは早いだろう。このような景気循環の過程は、過去に世界中で繰り返されていることであり、今回のサブプライム問題が特別というわけではない。世界経済に決定的な打撃を与えるとは思えない。

 もちろん、ローンを借りた人々は家を失うこともあり、社会的、政治的には無視できない問題かもしれないが、経済全体に与える影響は大きくない。ただし、不動産価格の下落により、米国の消費が低下することはあるだろう。10月の米鉱工業生産指数は前月比0.5%低下と悪化しているし、米連邦準備制度理事会(FRB)は、08年の実質経済成長率見通しを1.8~2.5%に下方修正した。注目は、年末のクリスマス消費がどこまで盛り上がるかだ。企業の設備投資は減ってきているので、消費が今後の景気を左右する大きな要因となろう。

 08年の米実質経済成長率が前年比でマイナスになることはないと思うが、せいぜい1%強ではないかとみている。07年の成長率が2~3%と見込まれることを考えると、1%程度落ち込むことになる。四半期ベースでは、マイナスになる局面があるかもしれない。そう考えると、景気は決定的というほど悪くはないが、「グズグズする」過程が続く。それが08年前半で終わるのか、年末まで続くのかは、現段階では判断が難しい。

 米国の景気悪化によって、世界経済が失速するのではないかという懸念も語られている。これには相反する2つの見方ができる。1つは、中国やインドなどの新興国がすでに自立的な経済成長を遂げているので、米国経済が減速しても、それほど影響がないという見方だ。いわゆる「デカップリング」(切り離し)論である。

 これに対し、新興国経済がいくら好調といっても、そこで生産されたモノを買うのは主に米国であり、米国の消費が落ち込んだら、新興国経済も大きなダメージを受けるという反論も根強い。

 真実は、おそらく両者の中間にあると思うが、それに加えて、例えば米国の海外投資がサブプライム問題で縮小しているという現実もある。新興国の景気は米国からの投資によって下支えされている面もあるから、それが減れば、現在8~10%という高成長率の国も、例えば6%程度に落ちる可能性はある。いずれにせよ、これまで世界経済を牽引していた主たるエンジンは米国だったので、世界経済の成長も来年は一服する時期と考えたほうがいいだろう。

◇割安な日本株

 こうした経済環境のなかで、日本の株式市場を考えてみよう。日本株は米国の景気や株価に反応しやすいから、08年は大幅な上昇は期待できないと思われる。ただし、日本の平均的な株価はすでに割安な水準にある。従って、これから投資を考えるのであれば、チャンスといえる。

 なぜ割安といえるのか。それを理解するために、まず株式投資に「無理なく期待できる収益率」とは、どのくらいなのかを考えたい。

 株式投資の収益率を検討するには、「益利回り」という考え方がある。これは、企業の利益を株価に対する利回りとしてとらえる考え方で、1株当たりの税引き利益を株価で割った値だ。株価収益率(PER)の逆数である。投資した資金(株価)に対して、どのくらいの利益を稼いでいるかを示すものだ。筆者の試算では、日経平均株価が1万5000円の水準なら、東証1部上場企業の益利回りは平均で6%程度となる(PERで言えば17倍程度である)。

 この益利回りに、企業の利益の長期的な成長率を加味したものが、株式投資に無理なく期待できる収益率と考えてよいだろう。利益の成長率を推定するのは難しいが、東証1部上場企業平均なら、日本の名目成長率と同じぐらい、すなわち2%程度とみておけば、それほど無理はない。すると、益利回り6%+成長率2%で、期待収益率は8%程度になる。

 これに対して、日本の長期国債の利回りは現在1.4%前後。元本も利子も保証されていて最も安全性が高い国債と比べると、株式投資は6.6%(8%-1.4%)のリスクプレミアム(上乗せ金利)があることになる。経験的にみると、リスクプレミアムが6%ならば、株式は高くも安くもなく、6%超であれば割安、6%未満であれば割高だと考えられる。機関投資家の運用計画も、だいたいこの基準に合致している。

 従って、08年の日本株は投資を考えるに値する。ただし、どこが底なのかをピンポイントで見極めるのは不可能だ。現在の1万5000円前後の水準から、さらに、1000円、2000円下がることは、あるかもしれない。いつ買えばよいのかは難しいが、08年中のどこかで、サブプライム問題の全貌が見えてくるはずだ。そして、その少し前には問題が実体よりも大きく見えるときがある。そういうときは、株式市場にも悲観論が広がり、株価が安くなる可能性が高い。それは来年の前半ではないかとみているが、そのタイミングで拾うことができれば幸運だ。基本的には、株価を見ながら「下がったら買う」という考え方で臨むしかない。

 日本株が前回急上昇した05年に乗り損なった人は、08年に買っておけば、次のチャンスに乗ることができるだろう。しかし、すでに株を保有している人は、そのまま保有を続けるのが賢明だろう。いったん売って、安くなったところで買い戻そうなどと考えても、そうはうまくいかない。プロでもそれは困難だ。

◇海外一国集中は危険

 一方、海外資産については、基本的にはリスクの分散になるので、持っておいてもよいだろう。しかし、どの国に投資すればよいかということは、なかなか分からないので、1国に集中しないようにするしかないだろう。

 海外投資の比率は、それほど大きくしないほうがいい。日本で生活していれば、必要な通貨は円であるから、海外資産で大きな為替リスクをとる必要はない。また、通常はリスクが大きくなれば、期待リターンも大きくなるが、為替の場合はそのような関係にないことからしても、為替リスクを大きくする意味はないだろう。

 ただし、現在の円は過小評価されている可能性がある。日本経済の実態を考えると、バブル崩壊後の「失われた10年」の調整を経て、企業は簡単には減益に陥らない筋肉質な体質になっている。経済の体質が強くなっていることを考えれば、1ドル=100円割れの円高のリスクを視野に入れたほうがよいかもしれない。為替は動き始めると、大きく動く傾向があるので、しばらくは注意したほうがよいだろう。

 では、海外投資のなかで何がよいかとなると、最近増えた海外ETFがいいと思う。これまで一般の個人投資家が外国に投資する選択肢といえば、外国株ファンドが中心だったが、保有中に差し引かれる信託報酬が年2%前後と高い。せっかくリスク分散のために投資しているのに、そのメリットが手数料で相殺されてしまう。その点、海外ETFは信託報酬が低く抑えられているので狙い目だ。

◇商品はリスク大きい

 一方、リスクを取りたくないのであれば、国債を買うという選択肢があるが、長期金利が名目経済成長率を下回っている現状では、魅力的とはいえない。金利変動型の個人向け国債は無難な商品ではあるが、適用利率は1%を下回っている。将来、金利が上昇する局面になるまで、積極的に選ぶ商品ではないだろう。

 また、最近は金、原油、穀物など商品に投資資金が集まっている。しかし、これらは「投機」の対象であって、資産運用の対象にするにはリスクが大き過ぎる。ゲーム感覚でやるのはいいが、大切な老後の資産などを振り向けるのはお勧めできない。

 これらの見方を前提に、08年の資産運用を考えるなら、個人の余裕資金のなかで、リスクがあるものに投資できる金額のうち3分の2程度で日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)に連動するETFを購入し、残りの3分の1程度で海外3~4カ国のETFを買っておけば、将来に向けた無難な運用になるだろう。

【メモ】プラス材料

大証のジャスダック買収計画 新興市場再編の起爆剤?
12月1日19時15分

ライブドア事件以降、新興市場の低迷がささやかれている(写真はイメージ)

 新興企業向け株式市場「ヘラクレス」を運営する大阪証券取引所が、ジャスダック証券取引所を買収する計画を進めている。ジャスダック株の7割超を保有する日本証券業協会からジャスダック株の過半を譲り受け、新興市場部門として傘下に置く計画とされる。しかし、独立を保ちたいジャスダックは「大証からは何も聞いていない」と反発しており、新興企業向け市場の再編の行方は不透明だ。

■「自分の力でしっかり強化したい」と反発

 ジャスダックを軸とした新興市場の再編議論は現在、日証協主導で進んでいる。日証協が設置した特別委員会の2007年11月15日の会合では、安東俊夫・日証協会長がジャスダックの今後のあり方について、(1)単独経営を目指す(2)東証に統合させる(3)大証に統合させる(4)東証、大証を含め複数の取引所を統合する――という4案を提示した。

 さらに、安東会長は同21日の記者会見で、「東証、大証と調整して、できれば12月20日をめどに結論を出したい」と述べ、年内にも決着させたいとの意向を明らかにした。

 こうした動きの中で浮上した大証の買収案は、ジャスダックがヘラクレスを吸収し、売買システムを一本化し、大証がその「新生ジャスダック」を運営するというものだ。統合が実現すれば新生ジャスダックは、上場企業数が約1150社に達し、国内新興市場としては圧倒的な規模になる。

 しかし、ジャスダックは不快感を隠さない。筒井高志・ジャスダック社長は26日の会見で、大証による買収計画に対しては、「一切聞いていない」と言い切った。さらに、「自分の力でしっかり強化したい。2年後には上場も検討できる」と述べ、単独での生き残りを強調した。

■ライブドア事件以降、新興市場全般が低迷

 そもそもジャスダックの再編議論が生じたきっかけは、経営の厳しさ。08年3月期決算で初の最終赤字に転落する見通しで、06年のライブドア事件以降、新興企業のイメージ悪化→投資家離れ加速という新興市場全般が低迷する構図から脱出できていない。ジャスダック、ヘラクレス、東証マザーズの国内主要新興市場の株価指数は、同事件直前のライブドア06年1月の半分~3分の1程度に低迷し、回復の見通しはたっていない。

 こうした中、海外ではシンガポールや上海などアジア市場が急成長している。独自色に乏しい複数の市場が乱立している状況では、日本市場の国際的地位の低下は避けられないうえ、共倒れの危険さえある。新興市場の再編は避けられない流れともいえるが、関係者の思惑は交錯しており、明確な方向感が定まらない状況が続きそうだ。