朝、吊革につかまり立ちしながら満員電車に揺られ、男子校に向かう俺。
男子校に通ってることから安易に予想がつくように、女のことばかり考えながら電車に揺られている。
運良く、両隣に若い女性がいる。
しかしいくら俺とはいえ、若いから喜ぶという訳ではない。
顔面チェックのお時間だ。
右の女性は、美人な方だ。
例えるなら、松雪泰子。
左の女性は、なかなかの方だ。
例えるなら、ガマガエル。
俺は当たり前のように、右側の吊革をつかんだ。
するとどこからともなく聞こえてくる音色。
どうやら松雪泰子のiPodからだ。
「チャチャチャンチャンチャンチャンチャンチャーン♪」
ん?ドラクエ?
えーッ?ドラクえーッ?
無意識のウチに左の吊革につかみかえる、俺。
あれ?SMAP?
どうやら左のガマガエルはSMAPを聞いているらしい。
んーと、曲はセロリかな?
セロリが終わると、世界に一つだけの花がかかった。
俺はこの手の曲が大嫌いだった。
カラオケでこの曲を歌う女に、ジンジャエールをぶっかけちゃう位、この曲は特に嫌いだった。
吊革はおのずと右をつかんでいた。
松雪泰子はドラクエが終わったらしい。
誰か高音のボーカリストがちゃんと歌っている。
俺は耳をひそめた。
「撤収ッー!」
な、ナニこの曲?
まっまさか、
やわらか戦車?
信じられねぇ。
どこのOLか知らねぇが、やわらか戦車を通勤中に聞くか?
それで働く気になるんか?
日本が不景気なのはこいつのせいだよ、きっと。
日本中のiPodに「やわらか戦車」は入れられないようにすれば、日本はうまくいく、きっと。
やわらか戦車の松雪泰子?
SMAPのガマガエル?
俺は一体?
俺は色々と考えた結果、吊革をつかまず立ち尽くしていた。
もう恋なんかしない。
そしてただ、ただただ、早くその場を「撤収」したかったのだ。