テレビを観なくなったということは、つまりテレビドラマからも遠ざかっているということ。だから鬼はまず映画でその存在を知った。そして、そこから立て続けにテレビシリーズ１、２を一気に観終えるまでに至った。

『おいしい給食』この作品は1980年代の中学校を舞台にしている。『昭和40年男』や派生版の『昭和50年男』といった雑誌が刊行され、それなりに読者を得ているところからも分かるように、今その辺の世代がちょうど懐古的な心情になる年頃。そこをピンポイントで狙いにいったのかいってないのか……少なくとも鬼はズッキュンとハツを撃ち抜かれてしまった。

何はさて置き、主役の教師「甘利田幸男」に市原隼人を抜擢したことが、30分ドラマでありながらシリーズ化どころか二度の映画化(二作目は公開予定)というホームラン級の大ヒットを飛ばした最大の要因だろう。彼には喜劇俳優としての素質がある。それは『サムライせんせい』を観た時点でも感じていた。

街行く人に彼に対する印象を訊いたら、おそらく「熱血」とか「真面目」とかいう回答が多く返ってくるだろう。鬼も同意見だ。何なら熱血や真面目の頭に「ド」を付けてもいい。何事も過ぎると世間と感覚的なズレが生じてくる。本人はいたって普通のつもりでも「変わっている」と捉えられるようになる。その世間との間に生じたズレこそが市原隼人を面白くしている。喜劇俳優としての才能を開花させている。あの役を芸人や普段からコメディにどっぷり浸かっている役者が演じてもここまでハネなかったに違いない。

劇的な事件が起こるわけではない。いかに日々の給食をおいしく頂くか、ただそれだけが描かれた、今どき珍しいくらいに平和で、実にバカバカしい、けれど不思議と愛着がわく、『おいしい給食』そんな作品である。

余談だが、給食というとどうしても毎回キウイフルーツを一口食べただけでゲロッパしていた同級生を思い出してしまう。そこまで体が拒絶するもの、今の学校だったら食べなくてもいいのかもしれないが、あの時代はゲロッパすると分かっていながら食べさせられていた。教育とは何ぞや？　と何十年経っても疑問に思う。

因みに、牛乳は紙パック(最初三角、のち四角)、揚げパンなんて出たことがない地域で育った鬼の一番好きな給食メニューは、鯨の竜田揚げである。と言うか、嫌いなメニューは一つもなかったし、パンも米飯も牛乳もおかずも、余っていれば全部おかわりしていた、早食い&大食いな小学生鬼(中学からは弁当なので)でしたとさ。

『鬼ネマ純報～おいしい給食～』