ラヴ KISS MY 書籍
そしてギュッと抱きしめられた。
「海堂さん?」
「ちづる、すごく心配したんだぞ、お前を失ったら俺は……絶対に俺の側から離れるな」
海堂さんは私にキスをした。
なんでキス?
でも、拒むことは出来なかった、いや、私は素直に海堂さんのキスを受け入れた。
永く熱いキス。
こんなの初めて、ドキドキと心臓の鼓動が速くなるのを感じた。
海堂さんもドキドキしてくれてるの?
私はもしかして自殺した彼女の代わり?
彼女にしてあげることが出来なかった事をしてるの?
私は急に海堂さんから離れた。
「ちづる?俺のキスにドキドキした?」
私は気持ちを読まれて顔が真っ赤になるのを感じた。
「もう一回キスしようか」
海堂さんは私の唇に触れた。
ドキドキが加速して行き、甘い声が漏れた。
「ちづる、そんな色っぽい声出すと抱きたくなっちゃうよ」
「駄目です、私達契約結婚ですよね」
「そうだったな、飯食おうか?」
「あっ、ソース切らしていて、コンビニに買いに行こうとしたら三神さんに捕まって、だからヒレカツソース無しなんです」
「いいよ、あっそうだ、マヨネーズとケチャップあっただろう?」
「あります」
「オーロラソースで食べよう」
「そうですね」
海堂さんの笑顔は心が安らぐ、どうして彼女は自殺なんてしたんだろう。
俺はちづるを愛している、このことに気づくのにこんなにも時間がかかったのだろうか。
さっき、ちづるとキスした時、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。
ちづるが止めなければ、俺はちづるを抱いていた。
ちづるの唇、頬、首筋、全てが愛おしい。
俺の誤算は彼女を自殺に追い込んでしまった事を、ちづるに知られた事だ。
ちづるはどう思っただろうか。
俺との関係を契約と思っているのだから、気にも止めていないかもしれない。
それより、三神の行動が気になる。
ちづるを連れ去るとは大胆な事をしてくれる。
息子を溺愛するあまり、何をやらかすか予想もつかない。
困ったことにちづる本人が三神に対して仏心を出している事だ。
全く人がいいにも程がある。
「ちづる、三神の事だが、気をつけないと駄目だぞ」
「どう言う事ですか、理由もわかった事ですし、もう危険な事はないですよね」
呆れて物も言えない。
これじゃ、連れ去られるのも時間の問題だな。
「ちづる、三神の息子はお前に惚れてる、その息子を三神は溺愛している、どんな手を使ってでも、ちづると息子を結婚させる気だ」
「でも、私はもう海堂ちづるです、そんなことは出来ないですよね」
「契約上はそうだが、気持ちの問題を言ってるんだ」
「気持ちの問題?」
「俺を愛しているか」
ちづるは顔を真っ赤にして、答えを探している様子が伺えた。
「よくわかりません、ずっと海堂さんとは契約上の関係だと自分に言い聞かせて来たから」
「それなら、俺を好きになれ」
「えっ?」
「俺の妻であることの自覚を持て、俺から決して離れるな、俺の事だけ考えろ、他の男は頭の中から追い出せ、いいか」
ちづるはびっくりしたように固まっていた。
俺は声を荒げた。
「返事は?」
「は、はい」
「よし、いい子だ」
海堂さんは私の頭をぽんぽんした。
既に私は海堂さんに惹かれていた、もう大好きになっていた。
でも、海堂さんがこんな事言うなんて……
海堂さんの気持ちを聞きたかった。
自殺した彼女の代わりに私を心配してくれて、でも愛してくれているわけではないんだよね。
海堂さんの気持ちがわからない。
私はどうしたらいいの?
そんな時海堂さんのスマホが鳴った。
「夜分遅くに申し訳ありません、ネット上で社長に対しての誹謗中傷が拡散しております、それに伴いまして、取引先やメインバンクが撤退を申し出ております」
「わかった、調べてみる、切るぞ」
スマホは切れた。
「海堂さん?どうかしたのですか」
海堂さんはすぐにスマホを開いた。
険しい表情の海堂さんから、ただならぬ気配を感じた。
「この事を知っているのは三神の仕業か」
「三神さんがどうかしたのですか」