11月1日発売ラヴ KISS MY初書籍化

俺はしばらく現実を受け止められずにいた。

 

 

俺があゆみを苦しめていた張本人だったとは・・・

 

あゆみは俺をずっと忘れられずに苦しんでいた。

 

あゆみに惚れて、プロポーズして、記憶が無くなったら離婚したのか。

 

俺はなんて酷いやつなんだ。

 

しかも一年経って、あゆみの前に現れて、初めてかの様に口説いて、戸惑うに決まってる。

こうして真実を知ったら俺が苦しむだろうと、あゆみは俺のことを気遣って、黙っていたんだ。

 

あの指輪は俺がプレゼントしたものなんだな。

ずっとはめていてくれたんだ。

 

俺は仕事が終わり、あゆみの元に帰った。

 

「お帰りなさい、お疲れ様でした、すぐに食事の支度をしますね」

 

俺はあゆみを引き寄せて抱きしめた。

 

「凌? どうかしましたか」

 

「あゆみ、俺は・・・」

 

 

俺はあゆみを抱いた。

愛おしくて堪らなかった。

 

でももし、また記憶が無くなったら、俺は冷たくあゆみを突き放すのか。

あゆみに再会したときの違和感は、これだったんだ。

強く惹かれた。記憶は無いが愛している気持ちが、俺の心の奥底にあったからだ。

 

 

「あゆみ、愛している、どうしようも無いくらいに」

 

「凌」

 

俺はキスを繰り返し、あゆみを抱き続けた。

このまま時間が止まってくれと願った。

 

 

俺はあゆみの左手の指輪にそっとキスをした。

 

「あゆみ、あゆみ、もう絶対に手放さない」

 

俺は眠りに着くと、譫言の様に「あゆみ、ごめん」を繰り返していた。

 

あゆみは俺の態度が気になっていた。

そんな時、俺はあゆみにプロポーズをした。

 

「あゆみ、結婚しよう」

 

 

「えっ?」

 

「そうしよう」

 

「駄目、結婚は出来ません」

 

「どうして?」

 

どうしてって、そんなことしたら私と凌の結婚して、離婚した事実がわかっちゃう。

そんな事、絶対に駄目だよ。

 

「え〜と、私もう誰とも結婚は考えてないので」

 

あゆみは俺の顔を見ることが出来なかった。

 

「早く、支度しないと遅刻しますよ」

 

俺はあゆみにプロポーズを断られてへこんだ。

 

俺は仕事に行った。

 

今日は私は仕事が休みで、買い物に出掛けた。

 

加々美社長から連絡があり、食事をすることになり、信じられない言葉を聞かされた。

 

「あゆみさん、僕と結婚してくれ」

 

「えっ、今なんて?」

 

「だから、僕と結婚して欲しい」

 

「冗談はやめてください」

 

「冗談でこんなこと言えないよ」

 

そして、次の瞬間、耳を疑う様な言葉を加々美社長は発した。

 

「君の元ご主人は、麻生 凌なんだね、そして、彼は君の記憶がない、君に酷いことをした記憶が無いから、また抜け抜けと君を口説いている、君だけが苦しむなんて見ていられない、だから真実を彼に話したよ」

 

「えっ、なんてひどい事を」

 

「酷いのは彼だろう」

 

「私、帰ります」

 

「あゆみさん」

 

加々美社長は私を抱き寄せた。

私は加々美社長の胸を押して離れて、その場を後にした。

 

「あゆみさん、どうして僕の気持ちをわかってくれないんだ」

 

駆け出す私の背中に加々美社長の声がいつまでも響いていた。

 

俺が真実を知ったことをあゆみは心配してくれた。

 

どうしたらいいの?

 

絶対にショックを受けているに違いない。

 

あゆみは俺の帰りを待った。

 

どんな顔をして会えばいいの?

 

嘘をついた私を許してくれるだろうか

 

凌が帰ってくるまで、眠りにつく事が出来なかった。

 

まもなく、凌が帰って来た。