「夜の帝王の一途な愛〜記憶が消えても何度でもお前を愛す」凌side
最終章へ突入致します。
11月1日発売ラヴ KISS MY初書籍化
「凌は強引なんだから、私、凌に着いて行くって言ってませんけど」
「目の前で他の男に渡せる訳ないだろ」
あゆみは俯いていた。
「あゆみ、俺は別れたご主人とは違う、絶対にあゆみを泣かせたりしないし、手放したりしない」
「私は凌とは一緒にいられない」
「何故だ」
俺は車を停車させて、あゆみの方へからだを向けた。
「なんでも」
「理由を聞かせてくれ」
あゆみは車から下りようとドアに手をかけた。
俺はその手を握り、自分の方へ引き寄せた。
そしてあゆみにキスをした。
そのまま俺はあゆみをマンションへ連れ帰った。
「あゆみ、一緒に暮らそう」
あゆみは頷いた。
その夜俺はあゆみを抱いた。
俺はあゆみと一緒に暮らすことになった。
一つどうしても気になることがあり、あゆみに問いただした。
「あゆみ、指輪は外せないって言ってたけど、それは別れたご主人を忘れられないからだろ?なのに俺の名前を読んでキスしてくれたことがあったし、俺のこと受け入れてくれただろう、それは何故?」
あゆみはしばらく考えていた。
「俺、考えたんだけど、もしかして、別れたご主人と俺って似てるのかな、それに名前がりょうって言うんじゃないの? それなら今までのことが納得いくんだけど」
あゆみは何も言わずに俯いていた。
「俺さあ、代わりでもいいから、俺の側にずっといてくれ」
あゆみは黙ったままだった。
それからしばらくして、加々美社長が俺の店にやってきた。
「君を指名出来るかな、大事な話がある」
「大丈夫ですよ」
加々美社長はドンペリを入れてくれた。
「話ってなんですか、あゆみは渡さない」
「これを見てくれ、特別ルートで手に入れた君の戸籍謄本だ、君は結婚して離婚歴があるんだな」
「はあ? 俺は結婚してねえけど」
「結城あゆみさんと結婚して、離婚しているよ」
俺はやつが差し出した戸籍謄本を引ったくり、確認した。
まさか、あゆみと結婚して、離婚している。
「君はあゆみさんを一度手放してるんだな」
信じられなかった。
そして、次にやつが差し出したのが、俺の診断書だった。
「君は脳腫瘍で手術して、認知機能障害を起こしている」
やつの手から引ったくった診断書には確かにそう記載してあった。
「君はあゆみさんの記憶がなくなり、手放した、また同じことを繰り返すのか」
俺は戸惑いを隠せなかった。
「あゆみさんをこれ以上苦しめるのはやめてくれ」
やつは店を後にした。