11月1日発売ラヴ KISS MY初書籍化

程なくして俺は退院した。

 

俺の記憶の中にあゆみはいない。

 

しかし、あゆみを抱きしめると、俺の胸が熱くなる。

 

笑顔を見ると落ち着く、これはどう言う事なのか。

 

あゆみは俺達の結婚は愛が無い契約だと言った。

 

でも、俺はあゆみに対して、自分でも理解出来ない感情を抱いている。

 

これは好きって感情だ。

 

俺ははじめはなんの感情も抱かなかったのに好きになったってことか、それとも初めから好きで、契約は口実だったのか。

 

あゆみは俺の事どう思って一緒にいたんだろうか。

 

そんな矢先、あゆみがお腹が痛いと訴えた。

 

尋常では無い痛みに俺は救急車を呼んだ。

 

あゆみはしばらく入院する事になった。

 

「奥様は妊娠されており、切迫流産しかかりました、しばらく安静にして入院してください」

 

「妊娠?」

 

あゆみが妊娠しているのか、俺の子供なのか?

 

俺はマンションに戻り、あゆみのバッグの中の母子手帳を見つけた。

 

それと一緒に手帳もあり、俺とのエピソードが綴られていた。

 

『麻生さんは契約結婚は口実で、私を愛していると言ってくれた、一目惚れしたと。

そして、二人の子供が欲しいとも言ってくれた。私は何もかもが初めてで、不安だらけだった、でも麻生さんはゆっくり進んでいけばいいかなって、優しくリードしてくれた、妊娠がわかった時もすごく喜んでくれて、一緒に育てようと言ってくれた。

でも、麻生さんは病気で、手術をしないと危ないと、でも後遺症で認知機能障害が現れると言われた。彼の記憶から私は消える。もう愛しては貰えないだろう、彼が私を愛してくれたのは奇跡だから、奇跡は二度と起きない。』

 

俺は衝撃を受けた。

 

あゆみに一目惚れし、契約結婚を口実にプロポーズしたのか。

 

しかもあゆみは俺の子供を妊娠している。

 

それなのに、俺の将来を考えて、俺の記憶から自分が消えると言う選択を選んだ。

 

もう二度と俺に愛されることはないと、奇跡は一度だから・・・

 

あゆみ、俺の記憶の中にお前はいない、でも今、二度目の奇跡が起きようとしている。

 

俺はお前に強く惹かれている。