11月1日発売ラヴ KISS MY初書籍化

俺は凛を忘れる事は出来なかった。

 

百合絵と過ごす日々の中で、俺は百合絵に尽くしてきたつもりだった。

 

しかし、愛のない償いだけの関係にも限界が訪れた。

 

「廉、もういいよ、やめましょう、こんな状態で廉を繋ぎ止めていても、私が惨めになるだけ、もう十分だから、廉を解放してあげる」

 

「百合絵」

 

「そのかわり、契約解除の違約金はパパに払ってね」

 

「わかった」

 

そして俺は自由の身になった。

 

しかし、凛の行方はわからないまま、いたずらに時は流れた。

 

あれから十年の日々が流れた。

 

凛は新しい恋を見つけ、歩き出そうとしていた。

 

俺は十年間凛を忘れる事が出来ずに、悶々とした日々を送っていた。

 

ある日俺は偶然にも凛を見かけた。

 

信じられなかった、俺の引っ越したばかりのマンションの近くで凛と再会するなんて。

 

「凛」と声をかけた。

 

凛は振り返り驚きの表情を見せた。

 

「廉? どうしてここに居るの?」

 

「それはこっちのセリフだよ、このマンションに住んでいるのか?」

 

「違う、違う」

 

「今の彼氏がこのマンションの住人か?」

 

凛は俯いた。

 

「図星か」

 

「まだ、彼氏じゃないから・・・」

 

凛は慌てて否定した。

 

俺はふふっと笑い「凛は変わってないな」と凛の手を引き寄せた。

 

数センチの距離まで顔が近づき、ドキッとした。

 

そこへ一人の男が現れた。

 

凛の今の男か?

 

凛はその男とマンションへ入って行った。

 

まだ彼氏じゃないと言っていたな。

 

さっきの凛の顔が、脳裏に焼きついて離れなかった。

 

ここで再会し、凛がフリーならやり直すチャンスかもしれない。

 

俺はもう一度凛にアタックしようと決意した。