エピソードゼロ②

凛は居酒屋で廉の姿を追うようになった。

気さくで話やすく、奢り昂る態度が無く、一緒にいると落ち着いた。

玉森コーポレーションで働いていると聞いた時は、御曹司?と思い、

もう、会わないと思ったが、廉曰く、苗字が一緒だから間違われると言われ、

胸を撫で下ろした。

この時廉は凛に強く惹かれていた。

社長の立場で距離を置かれては、たまったもんじゃないと、黙っている選択肢を選んだ。

それからは、約束はせずとも毎日居酒屋で一緒に呑み、語り明かした。

 

ある日廉は凛を自分のマンションへ招いた。

 

「えっ?このマンションに住んでいるの?」

 

「あ、うん、でも友達の所有だから、借りてるんだ」

 

「そうなんだ、友達はどこかの会社の御曹司?」

 

「そうそう、すっげー金持ち」

 

「へ〜」

 

「な、凛、俺と正式に付き合ってくれよ」

 

凛は即答出来なかった。

恋愛にはトラウマがあり、一歩踏み出す勇気が無いのである。

 

次の瞬間、凛はグッと腕を掴まれ、引き寄せられた。

廉の顔が間近になり、ドキドキが止まらない。

 

「凛は可愛いな、真っ赤になって」

 

「やだ、からかわないで」

 

「からかってないよ」

 

そして廉の唇が凛の唇を塞いだ。