これから指導者をめざすあなたへ
十数年書いてきた本ブログも 最終回となりました
最後は 私がソフトボールの指導にあたり
意識していたことを 思いつくままにお伝えして
終わりにしようと思います
1 指導の目的を明確にする
練習・試合を指導しようとするときには
今日は 「何をしようかな」ではなく
今日は 「どんなことを伝えようかな」 と考えてください
どんなことを伝えるか すなわち それは指導のゴール
練習を終えたときに 選手がどんな姿になっていればいいのか
そのイメージを明確にするのです
例えばノックで考えましょう
野球ソフトの練習といえば必ず入ってくるメニューです
ノックの練習にいそしむ指導者も多いと思います
しかし よい指導に 高いノック技術は必ずしも必要ありません
ノックはフリスビーの犬を振り回すことと同じ感覚に陥りやすい
ノックが楽しいと思ったら 多分 指導効果は出ていません
ノック本来の目的である選手の技能向上 判断力向上からズレて
「指導者の気持ちよさにすり替わっている」ことが多くなります
やたら打球が速くなったり
高いバウンドのショーバンを打ったりすることが典型例です
「そんな速い打球の中学生いますか?」
「そんな打球が試合で頻発しますか?」
もちろん可能性はゼロではありませんが
それよりもどんな打球が試合に即しているのか 考えてみるのです
今 目の前の選手にどんな打球が必要なのか
今 チーム全体にどんな打球が必要なのか
例えば
「今日は 野手間の打球をいかにさばき 次のプレイにつなげるかを伝えよう」と考えれば
ノックの目的が明確になり 選手に付けるべき力を目指せるようになるのです
「今日はノックをしよう」という発想では
ノックをすること自体が目的となり 指導効果は薄れてしまうのです
2 選手のために頭を下げる勇気
指導の本質は 自分で気が付くか 誰かから盗むしかありません
教えてもらえることは まずありません 指導者講習なんてうわっつらだけです
勝負の世界に生きている人たちが
長年の苦労と汗のもと やっと培った指導技術を簡単に教えるわけないでしょう
戦術一つとっても
アリ地獄スタートや ここ一番のピックオフ トリックプレイ 変則守備
教えてもらえるとするなら 使い古された もはや役に立たないパターンです
常に自分自身の指導に疑問を持ち 他の指導者のそれと比較する
何が違うのか なぜ違うのか 何を目的としているのか
どうしてもわからないときには 頭を下げて質問する
それでも半分教えてもらえれば御の字でしょう
強さとは己の弱さ 不足を認めること
弱さを認め 成長のために頭を下げる勇気を持つ
こうした指導者こそが 明日の勝利者となりえます
そして頭を下げるのは自分のためだけではない
自分を慕い ついてくる選手たちの勝利のために頭を下げるのです
3 真の「こだわり」とは
数年もすれば自分の指導スタイルが確立してきます
そのスタイルは「こだわり」となります
しかし
年によって 子供によって 指導が通じないこともあります
その時に 自分の指導を省みるか 子供のせいにするか
その引き出しの多さと器量も 指導者として試される部分です
もう一つ加えれば
その「こだわり」 根拠はありますか
しょっぱい経験 理論に裏付けられた勉強
こうした根拠を重ねてこそ 「こだわり」と呼べます
根拠があるからこそ 時にうまくいかなくとも
最後まで信じ 貫けるのです
根拠なき「こだわり」は 安っぽいプライドでしかないのです
安っぽいプライドの指導者たちには共通項があります
「いつも同じ理由で負ける」 ということです
4 時間を守れ 約束を守れ
私は教師です
授業の際は
「授業スタート時刻は子供が守る 終了時刻は教師が守る」を鉄則としてきました
指導もこれと同じ 終了予定時刻はきちんと示し 必ずそれを守る
終了時刻を守るのは 開始時刻を守った選手たちへの礼儀です
「もう少し練習をやりたい」
そう言っていいのは選手だけです
指導者が言ってよい言葉ではありません それは指導の無計画に他ならないのです
選手だって子供です
終了時刻が示されれば そこまではがんばろうと気持ちを奮い立たせます
指導者だって 「あと15分! 最後までがんばろう」と声をかけられます
それが あっさり時間オーバーとなってみなさい
子供たちの集中力は切れ 練習効率は下がり ケガにもつながってします
そこを「やる気がない」と叱られたら
これを理不尽と言わず 何と言うのでしょう
5 本当の「全員試合に出す」とは
練習試合等では 全員試合に出すというのはよく見られる光景です
でもね
ただ出場させればいいというものではないのです
なんとなく代打
なんとなく守備
突然代打を告げられて 三振して帰ってくる
でも
「いつ代打を言われるか分からないぞ 緊張感が足りん!」と叱られる
これで 選手が前向きにプレイできるでしょうか
練習試合を計画するときに
どんなプレイを確認するか 誰をどのように使うのか計画していれば
同じ代打でも 突然とはなりません
もちろん試合です 状況に応じて選手の起用が変わるときだってあります
でも せめて頭の中に起用についてのイメージは持っていたい
それを伝えられるものなら できるだけ早く選手に伝えておきたい
結果として突然の起用となっても 言い方は考えたい
試合前に 試合前の円陣で先発メンバー 発表後に
「○○! 今日は代打で行くぞ! ピッチャーをよく見とけ!」の一声で
どれだけ控え選手は救われるか どれだけやる気につながるか
(言い方伝え方は 選手のキャラによりますが)
選手というのは 自然にチーム内のヒエラルキーを設定し
自分はもう出られないとか レギュラーじゃないなどと思うものです
いかに そういう選手を救う一声がかけられるか
いかに 前向きにさせる練習を設定できるか
いかに チーム内での自己有用感を育てられるか
(エンドラン職人 盗塁職人 送りバント職人 プロランナーコーチ・・・)
本当の「全員試合に出す」というのは ただ出場させるだけではなく
選手のモチベを高め 使命感をもって試合に出すことを指すのです
チーム全員が 自分たちの役目に誇りを持ち 試合に臨む
指導者は 常に考えていたいことです
6 努力を尽くしても
敗戦は将の責です
敗因は選手にあっても 責任は監督にあります
これを心に刻むことがスタートなのかもしれません
私自身も数多くの敗戦を経験し 才能ある子どもたちに結果を導くことができなかった
今でも後悔は消えていません あの子たちは全中に行けた子たちだった
その後悔と自責の念が 次の指導の勉強の動機となりました
選手に厳しい練習を課すのならば 自らも厳しい勉強を重ねる
そんな指導者を目指してください
「これでいい」と思ったら 成長は止まります
努力を尽くしても 報われないことだらけです
「努力はうそをつかない」という言葉自体がうそですけど
努力なくして 勝利もないのです
今までソフトボールの指導をしながら すばらしい指導者 チームの皆さんと会ってきました
指導をさせてもらった
T中学校 O中学校 H中学校
才能ある子ばかりでした 未熟な監督でごめんなさい
支えてくださった保護者の皆様 本当に感謝しています
ピッチング指導教室を共にしてくださった
Mさん Oさん
娘のピッチング指導の礎となりました 分かりやすい理論でした
私をクラブチームの道に入れ 最後まで相談相手になってくださった
Tさん
いつか一緒にチームを指導したかったです
その出会いや 学びすべてをかけて 娘とがんばった6年半
ソフトを引退したら 娘と仲良くなりました(笑)
みなさん 本当にありがとうございました
いつまでも 大好きなソフトボールを楽しんでください (終)
今日は広島 原爆投下記念日です