セーラさんは、おまじないが得意なドーナツ屋さん。

セーラさんは、魔法のスプーンを持っています。
魔法のスプーンですくったものをドーナツにふりかけて、
そのドーナツを食べたら
少しだけ、幸せな気分になれちゃうのです。



満月がきれいな夜。
セーラさんは、魔法のスプーンを持って、


森の中へでかけました。



満月には、魔力があるといいます。


その不思議な力をかりて、
失くしたものをみつけるおまじないや、
お料理をおいしく作るおまじないや、
特別にキレイに見せるおまじないなどに使うのです。


満月に照らされて、
銀のスプーンは、眩しいくらいにキラキラと光っています。

ガラスの瓶の中は、
蛍が飛んでいるかのように、やさしく光を点していました。



その様子を、

不眠症のうさぎが見ていました。


「セーラさん、とてもキレイなスプーンね、
 私も欲しいな」


もう十分、満月の魔力を集めたセーラさんは、
やさしく笑って、
「これでよかったら、どうぞ。」と、

あっさり、銀のスプーンを渡してしまいました。


うさぎは、ビックリ。
「これは、大事なスプーンでしょう?いいの?」
目を真っ赤にしながら言いました。



セーラさんはにっこり笑って、
銀のスプーンの秘密を教えてくれました。


「このスプーンは、
 何もお願い事をされなかった、流れ星なのよ。
 誰かの願いをかなえたくて、
 私のところに飛んできたの。

 だからね、
 願いが叶ったら、このスプーンは消えてしまうのよ。

 これは、あなたのためのスプーンかもしれないから、どうぞ。」


「ありがとう」と、
うさぎは喜んで、
しばらく、満月に照らしてうっとりと眺めていました。


不眠症のうさぎは、
夜になると、
セーラさんのお店にやってきました。

セーラさんは、
温かいミルクと、ニンジン色のドーナツを、
うさぎのために用意していました。

ある日、
そのドーナツに誘われて、
泣き虫のうさぎも、やってきました。


二人とも、目は真っ赤。



寂しくて不眠症だったうさぎと、
寂しくて泣き虫だったうさぎは、

一緒にお店にやってくるようになり、自然と、お友達になりましたクローバー


いつの間にか、
二人とも、ルビーのようにキラキラした瞳に変わっていました。




「スプーン、消えちゃったかな。」
セーラさんは微笑みながらつぶやいて、
ニンジン色のドーナツを作りました。

セーラさんは、おまじないが得意なドーナツ屋さん。

セーラさんは、魔法のスプーンを持っています。
魔法のスプーンですくったものをドーナツにふりかけて、
そのドーナツを食べたら
少しだけ、幸せな気分になれちゃうのです。



悲しい顔をした男の子が、
セーラさんのお店にやってきました。


「セーラさん、病気を治すおまじないは、ありませんか?」


セーラさんのお店に男の子がやってくるなんて、
めずらしい事です。

男の子は、おまじないに興味がありませんから。



セーラさんは、
男の子にオレンジジュースとチョコレートのドーナツを出して、
男の子の話を聞きました。


「ぼくのおばあちゃんが、病気で入院しているんだ・・・」


セーラさんは、少し考えました。


元気を出すおまじないは知っているけど、
病気を治すおまじないは、知りません。


セーラさんは、やさしく微笑んで言いました。


「とても難しいけれど、虹の光をすくってきて」
と、魔法のスプーンと、ガラスの瓶を渡しました。



虹なんて、どこにでもあるわけではありません。


男の子は、
おばあちゃんのいる病院で、
セーラさんのお店で食べたドーナツの話をしたり、
魔法のスプーンを見せたりして、
おばあちゃんと一緒に、虹が出るのを待ちました。


そして、

おばあちゃんの病気は少しずつよくなって、
退院できることになりました。


悲しい顔をしていた男の子は、とてもうれしそう。


おばあちゃんの退院を祝福するかのように
きれいな青空の真ん中に、
七色の虹がかかりました。

男の子は、
「あ!」と思い、スプーンに虹を写し、ガラスの瓶にそっと置きました。



「セーラさん、おばあちゃん、帰ってきました♪」

男の子は、嬉しい顔をして、セーラさんに伝えました。
そして、集めた「虹の光」を、セーラさんへ渡しました。


セーラさんはにっこり笑って、
白いドーナツに、虹の光をふりそそぎました。


「あなたと、おばあちゃんへ」



男の子には、もうおまじないは必要なかったけど、
おばあちゃんと一緒に、白いドーナツを食べました。

ふわふわしていて、懐かしい味。
「おいしいね」
そう言うおばあちゃんの笑顔もふっくらしていました。






おばあちゃんは、元気にしていたけど、

ある日、

亡くなってしまいました。



だけど、男の子はもう、悲しい顔はしませんでした。
おばあちゃんとの思い出は、いつまでも消えないからクローバー




「素敵な笑顔をありがとう」
セーラさんは空に向かってつぶやいて、
静かにドーナツを作りました。
セーラさんは、おまじないが得意なドーナツ屋さん。

セーラさんは、魔法のスプーンを持っています。
魔法のスプーンですくったものをドーナツにふりかけて、
そのドーナツを食べたら
少しだけ、幸せな気分になれちゃうのです。




セーラさんのおまじない入りドーナツを食べると、
そっと願いが叶っちゃうとゆう噂を聞いて、

女の子がやってきました。


「セーラさん、
 私、好きな男の子がいるの。
 どうしたら両想いになれるかな~。」


女の子が言いました。


セーラさんは、にっこり笑って、
銀のスプーンと、ガラスの瓶を女の子に渡しました。

「このスプーンで、花の香りをすくってきて」



女の子は、不思議に思いながら、
れんげ草のお花畑に行きました。

ちょうちょやミツバチが、
このお花がいいよ、と案内してくれました。


「どうやってあつめるの?」
女の子はミツバチに聞きました。

ミツバチは踊りながら言いました
「好きな男の子の事を考えながら、
 そっと花の香りをすくってごらん。」

ちょうちょが、羽をパタパタとすると、
れんげ草がざわざわと揺れて、
いい香りがしてきました。

女の子は、優しい気持ちになって、
花の香りをスプーンですくって、
ガラスの瓶にいれました。



「セーラさん、花の香りを持ってきました。
 これでいいですか?」

女の子は聞きました。

セーラさんは、
「ありがとう」とにっこり笑って、
集めた花の香りを、
ドーナツにふりそそぎました。

ふわふわしたドーナツは、とってもおいしそう。

女の子は、
嬉しそうに、ドーナツを食べました。




ドーナツを食べた女の子は、
優しい気持ちがずっと続いていました。

好きな人を見るとドキドキしたり、
なんだか嬉しくなったり、可愛いと思ったり、

恋をするって、楽しいな~と思うようになりました。


「おはよう」


好きな男の子に話しかける事もできなかったけど、
女の子は、思わず声をかけてしましました。

「おはよう」


男の子が、照れくさそうに答えてくれました。


そして、いつのまにか、
男の子からも挨拶をしてくれるようになりましたクローバー



「いつか、好きって言う気持ちを、
 伝えられたらいいね。」

セーラさんはつぶやいて、歌を歌いながらドーナツを作りました。