インド洋 日本の気候を支配する謎の大海(感想)
夏になってインド洋東部熱帯域で南東貿易風が強まると、東風によって高温の海水が西側へ移動し、深海からの冷たい湧昇や海面からの蒸発によって海水温が低下します。 一方、インド洋西部では、東から運ばれた高温の海水で海面水温がさらに上昇します。 これは太平洋のエルニーニョ現象と類似の現象で、エルニーニョ現象とは関係なく独立して発生する場合と、エルニーニョ現象と関連して発生する場合とがあります。 ”インド洋 日本の気候を支配する謎の大海”(2021年8月 講談社刊 蒲生 俊敬著)を読みました。 海面水温などさまざまな海洋気象観測のデータや構造に、インド洋の東西で双極的対照的な現象が現れるダイポールモード現象と、日本の気候との関りなどを解説しています。 海面水温などさまざまな海洋気象観測のデータや構造に、インド洋の東西で双極的、対照的な現象が現れ、海面水温が高くなると、そこでは対流活動が活発化し降水量が増加します。 そのため、東側では乾燥して少雨、西側では多雨となるなど異常気象がもたらされます。 これがインド洋独自の大気海洋現象でありダイポールモード現象と言われ、インドから日本にかけてのモンスーンアジア地帯の気象に大きく影響します。 日本の夏は猛暑となり、干魃や猛暑といった異常気象を引き起こすことになると考えられるというこです。 蒲生俊敬さんは1952年長野県上田市生まれ、東京大学理学部化学科を卒業し、同大学大学院理学系研究科化学専攻博を課程を修了しました。 理学博士で、専門は化学海洋学です。 1986年から1992年まで東京大学海洋研究所助手、1993年に海洋研究所 無機化学 助手を経て、1994年に同大学海洋研究所助教授となりました。 1996年に同大学海洋研究所教授となり、以後、2000年に北海道大学教授、2010年から2016年まで同大学大気海洋研究所教授を歴任しました。 2017年に東京大学大気海洋研究所特任研究員、2018年から2020年まで同大学大気海洋研究所名誉教授となりました。 海洋のフィールド研究に情熱を傾け、これまでの乗船日数は1740日に及び、深海潜水船でも15回潜航しました。 海洋の深層循環や海底温泉に関する研究により、日本海洋学会賞・地球化学研究協会学術賞(三宅賞)・海洋立国推進功労者表彰(内閣総理大臣賞)などを受賞しています。 人類の誕生以降、インド洋は、人類の英知が試される、いわば試練の海でした。 数え切れない多数の人々がインド洋と接触し、航海技術や漁業の発展のために苦闘を重ね、その結果として、インド洋からさまざまな恩恵を受けてきました。 ことに、インド洋が過去2000年以上の長きにわたって、東洋と西洋との交易・交流の場を育み、発展させ、国際社会の構築に限りない役割を果たしてきました。 さらに未来へと目を向けてみれば、今世紀末頃には、アフリカとアジアとを合わせた人口は世界人口の8割を超え、90億人にも達するといわれます。 急膨張するこのアフリカとアジアに接し、かつこの地域と他の世界とを強く結びつける海こそ、インド洋なのです。 ここ数年、インド洋に生じる特異な海洋変動であるダイポールモード現象という言葉を、新聞や雑誌等でひんぱんに見かけるようになりました。 ダイポールモード現象とは、インド洋の熱帯海域において、正反対の気候状態が同時に、東西に横並びになることです。 東側は低温で晴天続きである一方、西側では高温で豪雨に見舞われる、といった具合です。 この現象は1999年に、気候学者・山形俊男博士の研究グループによって発見されました。 ダイポールモードという名称の名付け親も山形博士で、ダイポールとは、二つの極という意味です。 日本から遠く離れたインド洋で生じる現象ですが、日本の気候と強い関わりをもっています。 たとえば2019年に出現した強烈なインド洋ダイボールモード現象は、日本列島に夏の猛暑と、それに続く異常な暖冬をもたらした主因であると指摘されています。 ダイポールモード現象の影響をまず最初に強く受けるのは、アフリカ諸国やインド、オーストラリア等々の、インド洋に接する国々です。 しかし、影響が及ぶ範囲はそれだけにとどまらず、遠くヨーロッパの国々や、日本列島にまで達しており、広く世界的なスケールで気候を支配しています。 インド洋と日本のように、はるか遠く離れた地域をつないで気候現象が伝わることをテレコネクションと言うそうです。 インド洋はこのテレコネクションを通じて、日本列島の気候をコントロールする陰の大物だったのです。 インド洋では、強い季節風(モンスーン)のために夏と冬とで流れる向きが完全に逆転する海流で、南極海からやってくる深海水の複雑怪奇な動きがみられます。 また、大陸移動のせめぎ合いと海底から湧き出る高温の熱水や、インド洋にのみ生息するふしぎな生物たちがみられます。 さらに、プレートの沈み込みにともなう超弩級の火山噴火や巨大地震や、ダイポールモード現象がみられます。 これらダイナミックな地球の姿や営みが、インド洋にはところ狭しと詰め込まれていて、インド洋を抜きにして地球は語れないそうです。 インド洋熱帯域の海面水温は、エルニーニョ現象の発生から2~3か月遅れて平常よりも高くなり始め、エルニーニョ現象の終息後もしばらく高い状態が維持される傾向があります。 そのため、エルニーニョ現象が発生した翌年など、インド洋熱帯域の海面水温が平常より高い夏の場合、大気下層の東風の影響でフィリピン付近の対流活動が抑制される傾向があります。 インド洋の海面水温が平常よりも高い場合の大気下層の高低気圧の平年からの偏りで、夏の日本付近の気圧が低くなります。 このような夏には、北日本を中心に、多雨、寡照、沖縄と奄美で高温となることがあります。 インド洋熱帯域の海面水温が南東部で平常より低く、西部で平常より高くなる場合を、正のインド洋ダイポールモード現象といいます。 逆の場合を、負のインド洋ダイポールモード現象と呼んでいます。 両現象ともに概ね夏から秋の間に発生しますが、発生頻度は年代によって大きく変わり、2000年以降は正のインド洋ダイポールモード現象の発生頻度が高まっています。 正のインド洋ダイポールモード現象では、夏から秋ごろにインド洋熱帯域南東部の海面水温が平常時より低く、その上空の積乱雲の活動が平常時より不活発となります。 この時、ベンガル湾からフィリピンの東海上では、モンスーンの西風が強化されます。 そして、フィリピン東方に達するモンスーンの西風と太平洋高気圧の南縁を吹く貿易風の暖かく湿った空気により、北太平洋西部で積乱雲の活動が活発となります。 このため、上空のチベット高気圧が北東に張り出し、日本に高温をもたらします。 また、インド付近でも積乱雲の活動が活発になり、地中海に下降流を発生して高温化させる方向に働きます。 地中海は日本上空を通過する偏西風の上流に位置するため、偏西風の蛇行を通じて日本に高温をもたらすとも考えられます。 なお、負のインド洋ダイポールモード現象については日本の天候への影響は明瞭ではないそうです。 インド洋を抜きにして、地球を語ることはできません。 本書は、そのようなグローバルな観点から、一冊まるごと、インド洋という大海の魅力に迫り、この海ならではの自然現象の数々を、できるだけ平易に紹介しています。 また、インド洋と人間社会との関わりについても、少しであるが視野を広げたといいます。第1章 インド洋とはどのような海かー二つの巨眼と一本槍をもつ特異なその「かたち」/第2章 「ロドリゲス三重点」を狙え!-インド洋初の熱水噴出口の発見/第3章 「ヒッパロスの風」を読むー大気と海洋のダイナミズム/第4章 インド洋に存在する「日本のふたご」-巨大地震と火山噴火/第5章 インド洋を彩るふしぎな生きものたちー磁石に吸いつく巻き貝からシーラカンスまで/第6章 「海のシルクロード」を科学するーその直下にひそむ謎の海底火山とは?[http://lifestyle.blogmura.com/comfortlife/ranking.html" target="_blank にほんブログ村 心地よい暮らし]インド洋日本の気候を支配する謎の大海/蒲生俊敬【1000円以上送料無料】楽天市場1,100円インド洋海域世界の歴史 人の移動と交流のクロス・ロード (ちくま学芸文庫 ヤー31-1) [ 家島 彦一 ]楽天市場1,980円