『落馬脳挫傷 破壊された脳との闘いの記録』(石山衣織 著/エンターブレイン)


この本は、2007年2月24日の阪神競馬4R[サラ障害]で落馬した石山繁騎手(2009年引退)の妻・衣織さんが綴る壮絶なリハビリの日々と再生の物語です。


競馬関連の本ですが、これはそういったことは殆ど書かれていません。

介護記です。

いや、一緒に闘った(闘っている)奥さんと家族の闘病記という感じです。

しかも、その気持ちの揺れなどが中心に綴られているので、「こんなことをやってたこんな効果があった」といったものは殆ど載っていません。


訳のわからない行動をする夫や、それ介護している激しい感情の揺れを吐露している著者に対して、
介護というものを経験したことのない私でも、
実際にその立場になったらそうなっているかも知れないと思わせる記述がたくさんあります。


また、石山家の子供たちが折れそうな著者の心を何度も何度も立て直していく様子は本当に感銘を受けますし、
その他、何度もポロリときそうになりました。


不思議なのは、夫の目前に何度か現れたらしいお姉さん(石山元騎手の競馬学校時代に他界しているらしい)のことと、おみくじのこと。

詳細は記しませんが、こういったことは大事にしないといけないんですね。


もう一度言いますが、これは介護記・闘病記です(「競馬コーナー」ではなく「病気コーナー」での取り扱いになっている本屋が多かった)。


あまりこういった経験はしたくないですし、私の周囲にもこういった経験をさせたくはないですが、
このような状況時に読み返すと勇気を貰えるかもしれません。


大事にしますよ、この本は。



以上、アナウンサー&ボイストレーナー 岸根正朋でした。