「会いたい」
その一言で締め括った手紙を私は読み返す。
―そして、破り捨てる。
心の本音を伝えることすらままならない関係。
報われない想いは心に刺さり、確かに胸の奥へ痛みを与えた。
「報われなくとも、私は幸せだ。何があろうと想い続ける」そう自分に言い聞かせ始めたのはいつ頃だっただろう。
世界の美しさを教えてくれたその感情は、いつしか自らを苦しめる枷となっていたのかもしれない。
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最初から出会わなければ―。或いは、
もっと違う関係として出会っていれば―。
考えてはいけないと抑え込んでいた思考が溢れ出してくる。私はこんなに醜い人間だったのか。
「恋する人は誰しもその美しさの中に醜さを抱えているものだ。」そんな誰かの言葉を思い出し、自分を慰めることしかできない愚かさに腹が立つ。
つらい。苦しい。
もうどうでもいい。
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綺麗な言葉だけで愛が成り立つなんて現実ではそうそうない。
それは充分に理解しているつもりだ。
だから私は抑え続ける。
愚かな私を。濁ったような感情を。
最期まで自分の信じた想いだけは否定したくない。
たとえ世界が狂おうとも、この想いは真実だ。
死ぬまで枷は外さない。
報われない関係。
伝えてはいけない言葉。
心の本音は心音に掻き消される。
(貴方に会いたかった)
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静寂に響く心音。
やがて薄れゆく想いの音。
果てに残るは終わりを告げる声。
それは消え逝く想いとともに静寂に刻まれる。
あいしています