翌日、蓮より先にキョーコは目を覚まし、昨日購入した体温計をもって、彼の寝室をノックする。
しかし、反応なしのため、ドアノブを回して中へと入った。
「敦賀さん、起きてください。敦賀さん。」
声をかけて、蓮を起こすと彼は少し、唸った後に目をゆっくりとあける。
「おはようございます、敦賀さん。」
笑って挨拶すると蓮はトロトロに溶けそうな微笑みを見せ、
「おはよう…最上さん。今日も可愛いね…?」
寝そべったまま、彼女の頭を撫でて、頬にキスした。
「…っ。」
そのため、恥ずかしくなったキョーコは俯けば、
「本当に可愛いね、最上さんは…。」
蓮はクスクスと笑って起き上がると、
「きゃ…っ。」
彼女を引き寄せて抱きしめるため、キョーコは更に恥ずかしくなって顔を赤くするが、彼の背中に腕を回して、抱き締め返す。
(あったかい…何だか何時もより熱…。)
そこでハッと理解したキョーコは、彼から距離をとる。
「最上さん…?」
驚いて自分を呼ぶ蓮は無視し、額に手を当てると、
「敦賀さん、熱があるじゃないですか…!」
「え…?でも、昨日薬のんだよね…?」
「間に合わなかったんですよ!ああ、どうしよう!!と、とりあえず、これで正確に体温を計ってください!!」
持っていた体温計を蓮に押し付けるように渡した。
「う、うん…。」
受け取った蓮は体温計を真新しい箱から出して、体温計を脇に挟む。
「い…一応、聞きますけど、お仕事を休むなんて出来ませんよね…?」
本音を言えば蓮を休ませたいキョーコだったが、
「うん、無理。」
キッパリと彼は言い切ったので、キョーコはガクンとベッドの上でうなだれた。
そんなことをしているうちに体温計がピピッと鳴ったため、蓮は体温計を見れば、
「37.5℃…これは高いの低いの…?」
イマイチ、これが高いのか低いのか分からないらしい。
「平均体温によりますね…うーん、微妙な数値…とりあえず、寒くなったり、熱くなったりしますから、着替えを持って行ったほうがいいです。」
体温計を蓮と一緒に見つめた後、
「じゃあ、そろそろ私は朝ご飯を作ってきます。」
彼女はベッドから降りて寝室から出て行き、蓮はそれを確認したら、もう一度体温計を見て、ため息をつく。
「…今日のシーンで雨に濡れなきゃならないシーンがあるって言ったら怒って止めるんだろうな…。」
キョーコの事だ。怒って止めるだろう。
「でも、仕事だから仕方ないよな…。」
怒るキョーコを想像して蓮は苦笑いを浮かべたのだった…。