その日の夕方。

『あ…あの…レオン?』
『なんだ?』
『こ…ここは…?』
『…見れば分かるだろ。店だ。』

カレンの目の前には、洋服店。それもブランドのアルマンディ専門店。

『そ、そうじゃなくて!なんで私をここに!?』
『いいから、さっさと中に入れ。』

有無言わせず、カレンの腕を引いて、中に入っていくレオン。

『いらっしゃいませ、レオンさま。本日は何のご用意で?』

中に入ると店員が彼の名前をしっていた。それもそうだろうレオンは経営している会社の息子なのだから。失礼があったら大変である。

『こいつに合うドレスを。』
『ええ!?ちょ!?』

ドレスを買うなど全く聞いてなかったカレンは驚くと、

『畏まりました。では、お嬢様はこちらに。』
『あ、あの!?』
『レオンさまはあちらにお待ちくださいませ。』

ベテラン店員に試着室に連れられて行かれてしまい、ベテラン店員はレオンに奥にある椅子を進めたあと、試着室のカーテンを閉めた。

レオンは他の店員にも椅子に座ることを勧められたので奥の椅子に向かうと座る。

試着室からはカレンの戸惑う声が聞こえてきた。

その20分後、試着室のカーテンを開けた開いたため、レオンは試着室に近づくと、

『このようになりました。』

にこっとベテラン店員が笑って、先に試着室から出てきて、彼女の後ろにいたカレンが姿を現す。

『あ…あの…。』

カレンは紫色ががかった碧いミニドレスを着ていた。ふんわりと広がるフリル状のスカートにヒップの水色のリボンがポイントで、カレンは持つ可愛らしさをぐっと引き立てる。

『れ…レオン…?』

モジモジとカレンは恥ずかしそうにしたが、レオンがどこか満足そうな表情をすると、

『これに合う靴とアクセはあるか?』
『…え!?』

ベテラン店員にそう聞いたので、カレンは驚きの声をあげるが、

『もちろんです。では、お持ちいたします。』

ベテラン店員はにこっと笑い、それらをとりに二人から離れていく。

『あ…あの、レオン…。』
『なんだ?』
『こ、これ、買うの?』
『ああ。』
『うそでしょ!?』

カレンの着ている服はとても着心地がいい。それだけ、いい素材を使っていると言うことで、

『本当に買うの!?高いのに!』
『高くない。安いだろうが。』
『どこが!?』

レオンの金銭感覚にカレンは突っ込みを入れた。

そんなことを話しているうちに、ベテラン店員が戻ってきて、

『こちらなんかどうでしょう?』

水色のハイヒールとアクセサリーをいくつか持ってきた様子で、ほかの店員が運んでくる。

『カレン、どれがいいんだ?』
『え!?私!?』
『靴は選ばせてやる。』

レオンはそう言って、アクセサリーを見に行ってしまう。

『こちらはいかがですか?』

ベテラン店員はにこにこ笑って、ひとつのハイヒールを進める。

それはリボンで足を縛り、ハイヒールが脱げないようにするタイプなのだが、カレンが試しに履くと白い足にリボンが交差するように縛られ、余った部分でリボンをつくると可愛らしいものになる。

『げ…っ。』

値段をみてカレンはびっくり。値段は5万円。

(ほ、他のにしよう…。)

しかし、他に見てもこれ以上安いものをなく、やはりコレにした。

一方、アクセサリーを見ているレオンは、イヤリングを手にとる。

三日月の形をしたイヤリングで、三日月は宝飾はないが青になっていて、その下についた碧い石が雫の形していた。あのペンダントと同じ石が…。

『…これにする。』

レオンはそれが気に入ったらしく、

『ありがとうございます。ちなみにその石はアイオライトと言う石でして、8月10日の誕生石です。』
『…!』

彼は驚いた。まさかカレンの誕生石だとは思わなかったので。

『アイオライトはたくさんの石言葉がありまして、誠実・自立・愛、などが…恋人に贈ると意味で、わたしく的には「はじめての愛」が一番しっくりする言葉だと思っています。これの石を贈られる人はとても幸せでしょう。』

店員はそう語ると生暖かい目でカレンを見る。

『あら…?誰かに似ているような…?』

見ていた店員は、カレンが誰かに似ている気がしたが、思い出せない。

『カレン。』

そんな店員を横切って、レオンは彼女のところに戻ると、

『れ、レオン。』
『なんだ。泣き出そうな顔して。』
『だ、だって、どれもこれも高いだもの。』
『ブランドだからな。当たり前だろ。でもお前が選んだのは一番安いのだろうが。』
『ど、どこが!?五万だよ!?安くないよ!これで服がけっこう買えるよ!?だいたい、こんなの買ってどうするの!?』
『パーティーに出る。』
『…は?』
『お前をつれて出席する。親父たちに紹介したい。』
『………………………………………ええ!?』

カレンは驚愕した。当たり前だ。聞き逃してはいけない言葉を聞いたのだから。

『しょ…紹介って…ええ!?』
『しないとその内、爺さんに見合いさせられる。それでもいいのか?』
『よ、よくない!!レオンは私の…私の…その…。』

顔を真っ赤にした、カレンは恥ずかしそうに俯くと、レオンに耳朶を触られたので顔を上げれば、レオンはいつの間にか目の前におり、何やら耳朶に付けた。

『…これ…。』

イヤリングが耳朶につけられていた。近くにあった鏡に自分の姿が写っている。碧いドレスに水色のハイヒール、三日月のイヤリングを身につけた自分が…。

『あとは美容院だな。』
『…え!?』

何だかカレンは聞き逃してはいけないことを聞いたが、

『これを全部買う。支払いはこれで。』
『ありがとうございます。カードですね?』
『ああ。』

レオンは財布からカードを出すと、支払いをしてしまう。

『レオンさまは何かお買いに?』
『タキシードはあるか?』
『はい、ではこちらに。』

店員に案内され、レオンはタキシードを選びにいくが、10分後にはタキシードをきて戻ってきた。

カレンは見とれる。黒のタキシードが似合いすぎて…。

レオンはそれもさっさと買い、

『いくぞ。』
『え?あ…うん。』

カレンの手を引いて、店から出た。

もうすっかり、太陽は沈み、夜の街になっている。

レオンは車の鍵を開けると、カレンを先に乗らせ、その後に運転席に回って、自分も座る。

そしてエンジンをつけると、車を出したのだった…。