「お、おはようございます…今日からよろしくお願いします!」

トワが到着すると、彼に気づいた美優が緊張した表情をして、駆け寄ってくると、挨拶をする。

「…おはよう、橋本さん。こちらこそ、よろしく。」

トワは微笑むと、彼女に握手を求め、

「は、はい!」

求められた美優はその手を握って、ぺこりと頭を下げる。

(まずは情報を集めないと…。)

彼女が思い出の少女なのかはハッキリとは分からないため、コミュニケーションを取りながら、情報を得ようとトワは考えているらしい。

「…あの?保津川さん?手を放してもらっていいでしょうか?」
「…!ご、ごめん。」

いつの間にか、握り替えしていたようだ。慌てて放す。

「…?」

美優は不思議に思ったのだろう。首を傾げる。

「あ、あの。橋本さん…。」
「はい…?」
「よ、良かったらなんだけど…。」
「何でしょう?」
「その…。」

トワはポケットからおもむろに何かを取り出そうとしたが、

「おーい、翔~!」

後ろから、雪兎に呼ばれて手を止める。

「お。君か~ラブミー部員って言うのは~。」

彼はトワの隣に立つと、ニコニコ笑って美優に言う。

「俺、社雪兎。よろしく。」
「あ…は、はい。橋本美優です、よろしくお願いします。」

二人が自己紹介を交わしていると、

「…社さん。」
「なんだ?」

呼ばれた雪兎がトワを見れば、

「覚えておいてくださいね?」

それはそれは綺麗な笑顔をした彼がいて、雪兎は頬を引きつる。

「お、俺、何かしたか?」
「いいえ?何も?」

(う、嘘だぁああ!!その顔は絶対に嘘だぁああ!!)

彼は知っている。これの笑顔は、怒りを表していると。今、トワのマンションだったりしたら、きっと人が殺せるくらいの目つきで睨んでくるはずだ。

(お、俺はいつコイツの逆鱗に触れたんだ!?)

雪兎はハンパなく動揺する。

「…あ、あの。保津川さん…?」

そこに戸惑ったように美優が話しかけたが、

「なに?」

彼女に対しては、普通に戻る。

「い、いえ…何も…。」

首を振って美優は気にしないでくださいと付け加えた。

(き…気のせいかな…?怒ってるように感じたの…。)

美優はどうやら、彼から怒りを感じたようで、彼女は人より他人の感情に鋭いのかも知れない。

「みなさーん。こちらに集まってくださーい。」

すると離れたところで、スタッフがかけ声をかけたため、

「…行こうか、橋本さん。」
「あ…はいっ。」
「社さんも。」
「お、おう。」

三人はそちらに向かって歩き出したのだった…。