この小説はリクエスト小説「春が訪れるとき」の続編です。


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ローリィ宝田宅。

「蓮ちゃん~!出来たわよ~!」

テンがパタパタ走りながら、キョーコを引っ張っていく。

「…!」

呼ばれて蓮は振り返ると、紅色のドレス、赤いハイヒール、ルビーのペンダント、イヤリングを身につけたキョーコが目に入る。テンが手掛けたのもあり、彼女はメイクもされていた。

「ごめんね、蓮ちゃん。勝ってにウィング被らせちゃった。このドレスだと、髪は黒いほうが似合うと思って。」

今のキョーコの頭は黒で、髪を巻かれてハーフアップされている。テンはこうしたほうがいいと判断したみたいだ。

「いいえ、大丈夫です。」

蓮はテンに笑うと、キョーコの前に立って、

「すごく綺麗だよ、最上さん。」

キョーコに神々スマイルを見せる。

「あ…ありがとうございます…。」

前のキョーコなら、これを見るたびに眩しくて疲れ果てたが、今はちゃんと見られるようになっている。理由はキョーコ本人はわかっていない。

「もう、蓮ちゃんったら!私は邪魔者みたいだから、ダーリンのところに行くわね?」
「え!?じゅ…テンさん!?」

ジュリーさんと言いかけてキョーコは言い直す。前に怒られたので。

「じゃあね~。」

お構いなしに、テンさんは手を振って去っていく。

「…行こうか?」
「あ…はい。」

蓮は腕を差し出すと、キョーコは頬を染めて、自分の腕を彼の腕に通し、二人は歩き出す。

「あの…敦賀さん。」
「何?」
「敦賀さんも格好いいですよ?」
「…!ありがとう。」

蓮もアルマンディがデザインしたものをきており、格好いいと言われて、蓮は嬉しそうに笑う。

もうデレデレである。

そのまま、キョーコをエスコートしながら、彼らがいた部屋を出ると、

「やっと来たか。よし行くぞ。」

玄関にローリィがいた。いつもは派手な衣装だが、今日はもっと派手である。全身が金ピカの、貴族風なので。

「う゛…。」

玄関前にゴージャスな金色の車が止まっており、通称セバスチャンが主の姿が見えるとドアをあける。

「さあ、乗れ。」

先にローリィが乗ると、キョーコたちに手招きをし、

「お…お邪魔します…。」

車を傷つけないようにキョーコは恐る恐る乗り込み、天井が低い車なので、蓮は身をかがめて乗り込んだ。

「…で。」

車が走り出すと、ローリィは二人をみて、

「付き合ってるのか?」

単刀直入に聞いてきた。

「い、いえ…あの…。」
「いえ、まだ付き合ってません。」

キョーコが戸惑っていたら、蓮が即答する。

「なんだ~。つまんねぇの~。」
「なんだとは何ですか。俺は一生懸命にですね!」
「口説き中か?」
「そうですよ!文句あるんですか?」
「ねぇよ。」

そう言いながらも、チラッとローリィはキョーコをみた。

(…原因はこっちにあると思うんだがな…。)

ローリィは、キョーコ自身に問題があると感じ、

(愛されたくも、愛したくもない…か。)

ラブミー部の部員は全員、愛したくもないないし、愛したくもないと言う考えをもつ人間であるが、今のキョーコは、蓮の愛を受け入れてはいるが、彼を愛することに戸惑っていることが感じ取れた。

(何が彼女をここまで戸惑わせるのか…。)

ローリィは彼女の過去を正確には知らない。母親と仲がよくないと言うのは何となくわかっているが、それだけではないような気がした。

もっと、心をえぐるような何かが…。