キョーコは夢を見た。また、あの不思議な夢。

『こんばんわ。』

話しかけられて、振り返ると、あの癖のある青紫の髪と瞳をもった子供がいた。

『あなた…この前の…。』
『うん。良かった、覚えてくれてて。』

にっこりと人懐っこい笑顔をこの子は見せる。やはり性別がよく分からない。男の子かも知れないし、女の子かもしれない。

『あ、僕。性別ないから。』
『え!?』
『だって、僕は人間じゃないから。』
『に、人間じゃない…!?』
『そうだよ?僕の本体はモノだから。よく言うじゃない、モノは大切にすると心が宿るって。』

信じられない話だったので、キョーコは目を白黒させる。

『ま、信じなくてもいいけどね。でもね、君に謝らなきゃ行けないことがあるんだ。』
『え…?』
『君を過去に飛ばしたのは僕だよ。君しか彼の闇を消せないから。』

子供は語りだす。彼が苦しいのを自分はわかっていたのに、何もできなかったと。だから、唯一救えるキョーコを過去に送ったのだと…。

『でも…君を傷つけちゃった…ごめんなさい。だから、代わりに君と彼に奇跡をあげたんだ。』
『奇跡…?』
『そう…君は「彼」しか愛せないでしょ?だから…彼は奇跡を使って選んだんだ。君の幸せが訪れるように…。』
『…!?ちょ、ちょっとまって!?それどういう意味!?』
『あとで分かるよ。じゃあ、僕はいくね?もう時間がないんだ…。』
『まって!貴方の名前は!?』

子供が消えていく。キョーコは急いで名前をきくと、

『僕の名前は…。』

名前を名乗って笑顔を彼女に見せた。

キョーコの夢はそこで途切れたのだった…。



「…つい、来ちゃった…。」

昨夜の夢のせいか、キョーコはあの森を訪れた。このあと、東京にいくつもりである。

「…綺麗…。」

コーンを出し、太陽に当てれば紫に色が変わった。

ポロッと涙が流れる。

(そういえば、クオンにこうして見てくださいと言った時があったっけ…。)

「っ…ヒク…。」

涙が止まらなくなって、拭いても拭いても溢れてくる。

すると、後ろで木々が揺れる音がして、びっくりしたキョーコは振り向いたが、あるものを見ると目を見開く。

「…キョーコ。」

目の前に、彼がいた。『敦賀蓮』の姿をした彼が。

キョーコは固まった。彼が『誰』なのか分からないから。

「迎えにきた。不破につれてかれる前に。」

彼の言葉にキョーコは、また目を見開いた。蓮は知っているが、クオンはショーの名字は知らないのだから。

「クオン…なの…?」
「どうかな…俺もよく分からない。記憶が2つあって、たまに混乱しそうだよ。ただ…もう一度、君とダークムーンに出たり、モデルウォーク教えたり…ヒール兄妹をやりたいかな?」

彼…蓮は苦笑いする。キョーコは溜まらずに彼に向かって走り、蓮は彼女を胸で受け止めた。

「なんで…?どうして…?」
「俺もそれについてはよく分からないんだ。ただ気がついたら、俺は14歳に戻ってて…ワケの分からないまま寝たら、夢の中でもう一人の俺が現れたんだ。で、キョーコが辛い思いをしてるから、代わりに向かえに行ってほしいって言われた。そしたら、彼の記憶なのかな?覚えてのない記憶が頭の中に流れてきたんだ。」

そして、気がついたら、夢から覚めていたらしい。

「…どうやら彼と俺は融合したらしいよ?だからわかるんだ。彼も相当、君が好きだったみたいだね。まあ、当たり前か…俺だからね?でも全部俺に押し付けたな、アレは。もう慌てたよ。まずは社長に連絡つけなくちゃいけなくて、そのあとは父さんと母さんを説得しなきゃいけなくて…やることいっぱいあって大変だった。ヒヤヒヤしたよ。もしかしたら、君は不破についていくんじゃないかって思ったから。」
「な!?」
「仕方ないじゃないか。もしかしたら君は俺のこと忘れてるかもしれなかったんだから。」
「そ…そうなの…?」
「そうだよ?実際、父さんたちは君のことを忘れてるよ?」
「え…ええ!?」
「だから、君も場合によってはありえるな…って思ってたんだ。」

蓮の言葉をきき、キョーコはショボーンとなる。

「まあ、その心配はいらなかったみたいだけどね。」

キョーコの頭を蓮はなでると、

「好きだ、キョーコ。」

微笑んで彼女に言う。

それを聞いたキョーコはうれし涙を流し、

「私も好き、クオン。」

自分から彼にキスした。

蓮は彼女の行動に驚いたが、嬉しそうな顔をすると、彼女にキスを返したのだった…。