「…あの…日本に行ったことある…?」

迷ったあげくに、この質問しか思い付かなかった。

「…なんでそんなことを聞くの?」

怪しむような目を向けるクオン。

「し、信じてもらえないと思うけど、貴方とは数年前に会ってるの。日本で。」

現在のキョーコは18歳。あえて12年前とは言わないことにする。少年からすれば、数年前のことだろう。

「あ…!そうだ!これが証拠よ!」

キョーコはスカートのポケットから、小さながま口財布をだし、

「これ、見覚えあるでしょ?」

中からコーンを出した。

「…!それ…。」
「男の子にもらったの。悲しみを吸ってくれる石だって…。」
「…キョーコちゃん…?いや…でも…。」

少年が戸惑うのは分かる。『ここ』のキョーコは日本にいて、小学生のはずなのだから。

「でも、本当に私はキョーコなの。なぜだが分からないけど、12年前に…しかもアメリカにきてしまったみたいで…。」
「…SF?」
「そう。私、タイムスリップしたみたい…。」

ありえない。でも、目の前の少年が証拠だ。

「…わかった。信じるよ。」
「…!!本当!?」
「嘘ついてるとは思えないから…それに、証拠はあるし…。」

クオンが言っているのは、コーンのことだろう、おそらく。

「悲しみを吸ってくれる石だなんて、信じる女の子は一人しか知らないから。」
「わ、悪かったわね!バカみたいに信じて!」
「そこが君のいいとこだと思うけどね?」

クオンが笑う。優しく。

「…!」

キョーコは心臓がトクンを動いたのを感じる。

(…やっぱり、クオンなんだな…。)

秘密を明かされてから、二人きりのときは蓮に本当の名前で呼んでほしいと頼まれた。最初は慣れなかったものの、今はちゃんと呼べるようになり、敬語も使わなくなった。

「…?どうかした?」
「う、ううん!何でもないの!そういえば、クオンは今何歳なの?」
「14だよ。」
「あ…やっぱり、そのくらいなんだ。」
「キョーコちゃんはいくつなの?さっき12年前って言ってたけど…。」
「…18よ。」
「…!?日本人ってやっぱり堂顔なんだ…。」
「…いくつだと思ったの…。」
「同い年か、一つ上くらい、かな…と。」
「…そう…。」

蓮じゃないけど、本人に子供扱いされて、キョーコはへこむ。

「とりあえず、家の中に入ろう?泊まるとこないだろうし…。」
「あ…そうだね…。」

言われてみれば、いつ元の時代に戻れるか分からないのだ。お金もないし、泊まるとがない。

「父さんたちには事情を話すから、しばらく居ればいいよ。」
「…ありがとう。」

キョーコは感動を覚えた。やはり時代は違っても彼は彼だと…。