「うるさいわよ!!」

キョーコが叫んだので、思わず耳を塞いだ奏江が怒った。

「…あの人、リックが来た日に何かを感じたみたいで、しつこく俺に聞いてきたから、あの手この手で俺たちのこと調べてるんじゃないかな?」

同じく耳を塞いだ蓮は未だに苦笑いをなかなか止められない。

「そういえば、俺も聞かれたな…突然現れた社長に…。」
「私も聞かれました。最近、何か変わったことはなかったか?とか…。」

どうやら二人は聞かれたらしく、

「二人はなんて…?」
「分からないって言ったよ。バレてると思うけど。」
「…いつも変わらないと言っておきました。バレてると思いますけど。」

社と奏江は分からないフリをしたらしいが、ローリィが怪しむ顔をしていたので、恐らくバレていると考えている。

「…避けては通れないか…。」
「ど、どうしよう!クオン!!」

もう若干諦めた蓮にキョーコはオドオドして聞く。

「諦めるしかないね。あの人に目を付けられたら最後、彼が生きてる間はずっと振り回されるよ。」

生まれた時には、蓮はローリィを知っているため、もう諦めている。無駄な抵抗だ。

「そ、そんな~!」
「…嘘、ですよね…?」
「れ、蓮!お願いだっ。嘘だと言ってくれ!」

認めたくない三人だが、遠目でフッと蓮は笑って、

「俺も嘘ならどれほどいいか…。」

あらぬ方向を見つめ、

「抵抗しないで諦めたほうがいいですよ。もう俺は諦めましたから。」

本当の本当に諦めたようだった。

三人は顔を青くして、タンを飲み込む。

「…諦めは肝心か…。」
「そうですね…諦めたほうが良いのかもしれませんね…生きてるうちは無理そうな気がしますけど…。」

ポツリと社と奏江は言い、

「あ、あのね…もしバレてたとしたら、社長さんは何を企てるの…?」

キョーコは恐る恐る聞くと

「記者会見開くんじゃないかな?君と俺の熱愛を…。」
「ひ、ひぃいいい!!」
「…軽く傷つくんだけど…その反応…。」
「だ、だって!そんなことしたら、全国のあなたのファンに殺されかねないんだもの~!」

考えただけでキョーコは恐くなる。

「…大丈夫だよ、その辺なら。いくら何でも社長だって、君の将来性を壊すことはしないと思う。しようとしたら、俺が止めるし。」
「私も止めるわよ。アンタには才能があるんだから。」
「…モー子さん、クオン…。」

キョーコは感動したのか目をうるうるさせ、

「ありがとう~!!」

号泣し、慌てて社がポケットティッシュを引っ張り出したのだった。

後日、蓮とキョーコは社長室に呼ばれ、やはりバレていたのか、水くさいと起こられたが、ラブミー部の卒業は引き伸ばしのこと。

人個人を愛せるようにはなったが、ファンに対する愛が未熟ということで。

かわりにキョーコに映画の話を聞かせた。

その映画は伊達大尊監督が監督を努めるものらしい。

テーマは、愛と復讐。

キョーコには、主人公を愛しながらも、復讐心をもっている役をやってもらいたいらしい。

それを聞いたキョーコは遣ると言った。

迷いもなく…。