尚たちが去ったあと、我にかえったスタッフが一斉にして、蓮とキョーコに付き合っている人は誰なのか聞く。

今まで浮いた話がなかった蓮が恋人がいると宣言したのだから当たり前だが…。

スタッフにたちに答えた応えはこう。

『実は幼なじみと付き合ってまして…。』
『日本人じゃないんですよ、アメリカ人です。日本には旅行にきていたみたいで…。』

嘘の中に真実を混ぜる。

当然のごとく、打ち上げが終われば、

「蓮?ちょっとこい。お兄ちゃんは話があるぞ?」

社がにこにこ笑って言うが、はっきり言って彼は怒っている。

「アンタ、私に言うことあるわよね?」

こちらも笑顔だが、奏江も怒っている。
キョーコは困っていた。とっさのことなので、社と奏江、そして千織にどう説明するかなんて考えてなかった。

「ここではなんですし、俺の家で話しませんか?」

困っていたら、苦笑いした蓮は言う。

(ええ!?)

キョーコはもちろん驚いた。誤解をとくには、蓮の正体や他のことも話さなければならない。

「…社には、そろそろ話さないと行けないと思ってたので…。」

キョーコには話した。あとは…自分をよく考えてくれている社にも話すべきだと蓮はこの頃思っていたのだ。

「琴南さんも一緒に聞いてほしい。君は、彼女の親友だから…。」

奏江のことは予想外だが、彼女は信用していいとキョーコから聞いてわかっている。

「「……。」」

蓮の真剣な顔に二人は黙り込んだが、静かに頷いたのだった…。



一方、尚を追いかけた美森は、祥子、いや尚の自宅にいる。

彼が出て行かないので、祥子が出て行ったらしい。

「ダメ人間…。」

あちらこちら、部屋ら散らかっていた。美森は頬が引きつる。

「…何度でも言えよ。」

もう何もかもどうでも良さそうにソファーに寝そべっている尚がいう。

「…じゃあ言うけど、尚ちゃんってナルシストだよね。あとはワガママだし、女たらしだし、優しくないし、なんか後、カッコつけてる気がする。正直、顔と歌しか能がない。」

淡々と美森は言っていく。そんな言葉に流石の尚もキレたのか、ソファーから起き上がって

「なんだと!?」

彼女を睨んで怒鳴る。

「だってそうじゃない!!だから、好きって言うまえに振られるのよ!!」

パシン。

美森は頬の痛みを感じたが、負けずに殴った尚を睨む。

「…最低。女を殴る男なんて最低よ。」

美森は吐くように言うが、

「…でも、そんな最低男が好きな私はもっと最低だね…。」

ぼそっと口にすると、尚の胸ぐらをつかみ、

「…!?」

彼の唇に口づけた。

「…好き、尚ちゃん。」

美森は微笑む。その笑みはいつもの少女のような笑顔ではなく、女の笑み。

「…?!」

そんな彼女に尚は驚く。目の前の少女は誰かと。

「覚悟して尚ちゃん。私、諦めないから。絶対、振り向かせてみせるから。」

尚から手を外すと、美森は笑顔になる、いつものように…。

尚は初めて見とれた、彼女のその笑顔に。

始まる、やっと。美森の恋が…。