ピンポーン。

チャイムが鳴り、

「あ、はいはい!!」

バタバタとキョーコは玄関に向かう。

「…ただいま、キョーコ。」
「お帰りなさい、クオン。」

ドアを開ければ、蓮がおり、彼はキョーコを抱きしめる。

『『……。』』

それを後ろで見ているリックとティナ。

アメリカではよく見る風景であるような気がするのに、口の中に砂の感じがした。

「あ…あの!!お二人が見てます!!放して、クオン!!」

顔を真っ赤にして、蓮の腕の中で暴れるが無駄。

そんなキョーコが可愛い彼はかなり重症である。

『あ…どうぞ。』

フっと後ろの2人を思い出して、キョーコを抱きしめたまま、ドアの前から退く。

『…ああ。』
『ええ…お邪魔するわ…。』

とりあえず、中へと入り、

『えっと…靴を脱ぐのよね?』
『そうだぞ、ティナ。』

2人は靴を脱いで、上がる。

『なんか良い匂いするわね?』
『だな?』

リビングへ進むと食欲をそそる匂いがして、2人は思わず立ち止まった。

『あ…えっと…お二人が来るのを聞いたので、日本で馴染み深い肉じゃがとかいろいろ作ったんですけど…お口に合うかどうか…。』

やっと蓮の腕から解放されたキョーコがやってきて、苦笑いしながら、説明する。

『あら。英語話せたのね?すごく綺麗な発音よ。』
『え!?本当ですか!?ありがとうございます!』

ニコニコと可愛らしく笑うキョーコに、

(か…可愛いわ…!これが噂の大和撫子なのかしら!?)

胸がキュンとしたティナ。

『おお!うまそー!!』

一方、リビングにあるテーブルの上に既においてあった料理をみて、リックはテンションがあり、つまみ食い。

『うめー!!うまいぞ!クオン!!』
『知ってるよ。キョーコはプロ並みに腕がたつから。』

いつの間にか、リックの方にきた蓮だが、キョーコを通り過ぎるときに、頭をポンポンしていった。

『俺、腹減ったぞ。』
『…あんなに機内食や何やら食べておいて、何言ってるのよ。』

ティナがリックのそばに行き、呆れて彼女は溜め息をつく。

『しょうがないだろ!?仕事で消費するんだからさ~!!』
『そうだとしても、今日は食べ過ぎよ。』
『あの~。』
『なんだ?お嬢ちゃん。』
『リックさんは、何のお仕事を…。』

キョーコは2人のことを名前しか知らないため、気になったらしい。

『おいおい、クオン、お前言ってなかったのか?』
『…話す暇なんてなかったから。どこかの誰かさんが急にきたせいで。』
『う゛…。言うようになったじゃないか…。』
『おかげさまで。』

にこっりと笑う蓮。

『お前、その笑顔、嘘くさいぞ。』
『なんのことかな?』
『嘘いうな!!俺には分かるぞ!!』

びしっとリックは指差す。

『あ…あの~!』
『『…!?』』

キョーコが2人に声をかけると、彼らは同時に彼女を見た。

『冷めますから、食べませんか?ごはん…。』
『そうね。私もお腹へったわ。』

恋人たちにそう言われ、大人しく座る男2人だった…。



「…ごちそうさま。」
「はい、お粗末様でした。」

蓮がテーブルに箸をおき、キョーコも同様に箸をおく。

『ふごご…!』
『リック!食べてる時に、話をしちゃダメって言ってるでしょ!?』

口いっぱいに食べ物を詰め込んだリックが何かを言ったようだが、それをティナは怒る。

「…ティナさん、何だかお母さんみたい…。」
「うん…日本でいう姉御キャラだね。リック、仕事以外は不真面目だから。」
「結局、リックさんは何の仕事をしてるの?」
「スタントマンだよ。だから、俺が彼とあったキッカケは仕事だったんだ。」
「…あ。そうなんだ。」
「うん。情けない顔でいたらしくって、黙ってみていられなかったらしいよ。」
「…そう…なんだ…。」
「どうかした…?」
「…別に…ただ、ちょっと羨ましいな…って、思っただけ。」

自分が知らない彼を彼は知っていることに、キョーコは羨ましくなった。

「もしかして…ヤキモチ?」
「…!?な!?ど、どうして男の人にしなきゃいけないんの!?」
「だって羨ましいでしょ?」
「そ、そうだけど!!」
「ほら、妬いてる。」
「っ…。」

キョーコは何も言えなくて、恥ずかしくって俯いたが、蓮に頭を触られると、ぐいっと動かされ、頭が彼の肩に置かれる。

「これから知っていけばいいよ。もう隠さずにいうから。」
「…クオン。」

蓮の顔を見れば、彼は優しく自分を見つめていて、キョーコは胸が高鳴った。

『そこの2人!!イチャイチャしない!!』
「「…!?」」

いい雰囲気になっていたら、ティナに注意される。

『俺には、ティナたちもイチャイチャしてたように見えたんだけど…。』
『んな!?』

確かにティナは怒りながら、リックの世話をやいていたので、見る人によればイチャイチャしているだろう。

『イチャイチャなんかしてないわよ!!』
『そうだ、そうだ!俺は世話をされてただけだ!!』
『リック!!』

ティナに怒鳴られるリック。

「ふふ。」
『『…!?』』
『…あ、ごめんなさい。仲がいいんだなって思ったので。』
『っ…。』

キョーコの発言にティナは恥ずかしそうな表情をする。

『そういえば、お二人とも指輪をしてますけど…ご結婚されたんですか?』
『…ええ。つい、この前。籍をいれたの。』
『…!!おめでとうございます!』
『…ありがとう。』

ティナは頬を染めて優しく微笑む。本当に幸せそうだった。

それから、4人は会話を楽しんだあと、明日には帰国するリックたちを別れを告げたのだった…。