「黙ってて、ごめんね。キョーコちゃん…。」

朝の日差しで、黒髪がキラキラ光って、キョーコには金色に見えた。

「…コーン…。」

目の前にコーンがいた。

あの頃の面影はない。けれど、キョーコにはコーンだと分かった。これは確信にちかい。

キョーコは布団で胸元を隠しながら起き上がり、

「どうして?敦賀さんがコーンだったんですか?」
「うん…ごめん。黙ってて…でも、いろいろ訳があって…。」

蓮はそう言うと彼女を抱きしめた。

「…話すのに勇気がいるんだ…だから、何も言わずに聞いてくれる…?」

(…!敦賀さん、震えてる…。)

肩が震えることにキョーコは気づくと、蓮の頭を抱きしめる。
「…!」

彼女の行動に蓮は驚く。

「大丈夫です。ゆっくり話してください。聞いてますから…。」
「…うん。」

蓮は泣きそうになったが、必死に堪え、ゆっくり話し始める。

生まれから、日本にくるまでの過去をすべて。

話しながら、思い出すのは、当然、親友であったリックだった。

彼は車に引かれて、頭を強く打った。だが、亡くなってはいない。生きている。現在も眠り続けている。植物状態として…。

そして、彼をこんな目に合わせたのは自分だからと…当時、蓮は自分を責めて、いっそ消えていなくなろうかとさえ思い始めてしまった。

そこから、救い出してくれたのはローリィで、今こうして、生きているのは彼のおかげである。

すべてを話した蓮は、キョーコに嫌われるかも知れないと思った。少なからず、人を傷つけたのは確かなのだから。

「敦賀さん…。」

キョーコの声は音色は優しく、頭に回していた腕を彼女は外すと、蓮の両頬に手をやった。

「最上さ…ん?」

彼女は優しく微笑んでいた。愛おしそうに…そして、キョーコは蓮に自分からキスをする。

チュとリップ音がして、キョーコが離れて、予想外の事に蓮は驚いていたが、

「私が…今度は私が、貴方を支えます。貴方の存在理由になります。だから、そんなに苦しまないでください。リックさんだって生きてます、貴方は誰も殺してません。だから…。」

彼女の目から涙が流れる。

「愛してます、敦賀さん…いいえ、クオン…さん。」

キョーコは彼が愛おしくてたまらなかった。彼がいなくなった生きてはいけないほど。この感情は『好き』では足りないものだった。

「最上さん…。」
「キョーコって呼んでください。」
「…じゃあ、君も俺をクオンって呼んで?」
「…クオン?」
「うん…キョーコ…。」

見つめ合って、キスを交わす。深く深く求めあうように。

「…できれば、昔みたいに敬語使わないでほしいんだけど…。」
「え、えっと…それは…。」
「だめ…?」
「う…。」

捨てられた子犬ような目で見てくる蓮にキョーコは胸がキュンとする。

「わ、分かったから!分かったから、その目で私をみたいでっ。」

どうも、キョーコはコレがいろんな意味で苦手のようだった。

「キョーコ、俺も愛してるよ。」
「…!!だ、だから不意打ちはやめてって…。」

言っている途中で蓮に唇を奪われ、深くされて、目がとろりとしてくる。

「本当に愛してる。」
「も…もう!」

怒ったような口ぶりをするが、蓮のキスをキョーコは素直に受け入れ、

「あ…また…。」
「だめ…?」
「っ…もう!仕事遅れても知らないんだからっ。」

ベッドに組み敷かれるも、本気で嫌がってはいないようで、

素直に彼の唇を受け入れたのだった…。