時間は戻り、一時間前くらい。

松田マネージャーの車の後ろに乗り込んだ奏江は、まず聞きたい事があった。

「…あの…どうして私なんかが、お呼ばれを…?」

確かに飛鷹と自分は親しくはなったとは思う。けれど、何故新米女優である自分が招かれたのか、奏江には理解出来なかった。

「ああ!それはですね!飛鷹くんが…。」
「松田だぁああ!!」

ピコーン!!

松田が答えようとしたら、飛鷹がピコハンを出して、その頭を叩いた。

「余計な事を言うんじゃねぇ!!」

プンプンと少年は怒る。

「いたーい!飛鷹くん、また叩いた~!!」
「怒らせるお前が悪い!!」
「ええ~!?」

奏江はポカーンと二人を後ろの席で見ていたが、これは知る人から見れば何時もの事である。

その後、少年の自宅に着くまで、大人と子供の喧嘩は続いたのだった…。



「いらっしゃい。」
少年の自宅につくと、飛鷹の母である裕子が笑顔で出迎えてくれ、

「きょ、今日はお招き頂き、ありがとうございます。」

かなり緊張する奏江は頭を深く深く下げる。

「いいえ!こちらも飛鷹がいつも…。」
「母ちゃん、腹減った…。」
「あらら!そうね!ご飯を食べながら話しましょうか!さあ、どうぞ。」
「あ…ありがとうございます!」

スリッパを出されたので、また奏江の頭は下がる。

「さあ、座って。」

しかも、リビングにつくと、テーブルの上には既に料理が並べて降り、彼女が座りやすいように裕子が椅子を引く。

「あ、ありがとうございます!」

もう無理に笑顔になって、奏江に座る。裕子と目が合うと、あちらは素敵な笑顔を見せてくれるのだが、奏江は頬を引きつりそうだった。

それから、すぐに飛鷹の父、龍太郎と祖父の虎徹が帰ってきて、もっと奏江は緊張したが、

「そう緊張するな。」

嫁である裕子が注いだ酒を一口飲んだ虎徹がはにかみを見せる。

「は、はい…!」

だが、やはり緊張するものはするのだ。

「まあ、無理か。わしだって、昔先輩の家で招かれた時は緊張したものだからな。」

懐かしむように、虎徹は目を細める。

「でな?その先輩がな?」
「…父さんの自慢また始まったよ…。」
「ふふ。いいじゃない、あなた。」
「小さい時から聞いてる俺の身にもなってくれよ…。」
「貴様!わしの話しが聞けないと言うのか!」
「しかも酒弱いのに、飲むし…。」
「飲んで何がわるーい!!」
「酒が弱いなら、飲むなって言ってんだよ!!」
「なんだと!?父親に向かって何だその言葉使いは!!何様だ!」
「アンタの息子だよ!!」

何故だかわからないが、親子喧嘩が始まったので、奏江は戸惑い、裕子を見るが、彼女は楽しそうに笑顔でお茶を飲んで見学、飛鷹と松田を見れば、二人は料理を食べながら、飛鷹の好き嫌いについてで、こちらも喧嘩を繰り広げ中。

もう奏江は、取り残された気分であったのだっだ…。