「それじゃあ、お疲れ様でした!」
すっかり日が沈んだ頃、今日の撮影は終了。
「お疲れ様、キョーコちゃん。」
「お疲れ様、最上さん。」
「と、言っても、これから一緒のバスに乗って帰るんだけどね。」
今回はロケなので、バスでここまで来て、またバスで帰ることになっている。
「最上さん。」
「はい、なんでしょう?」
「帰ったら、ご飯食べに行こうか?」
蓮が食事にさそうとキョーコは嬉しそうな表情をして、はい!と頷く。
そして、あちらでも、
「あの、良かったら、ご飯でも食べに行かないかな?」
光が千織を誘っており、
「べ、別にいいけど…ひ、暇なだけで!」
誘われた千織は顔を真っ赤にすると、そういいながら、顔を逸らす。
(なに…これ…。)
それらをちょっと離れた所で見てる奏江。
(なんなの…この空気…。)
奏江は頬を引きつっていた。彼女はこの空気にいることが窮屈に感じた様子。
(それに引き換え、あっちは…。)
「ショーちゃん!!ごはん食べにいこう!!」
「ああ?やなこった。」
「ええ!?行こうよ~~!!ね、良いでしょ?祥子さん?」
「良いわよ?美森ちゃんと話したいこともあったし。」
「な!?」
「尚?せっかく女の子が誘ってくれてるのよ?」
「…うるせぇ。」
(…なんか…歌手とマネージャーが火花散らしてるし…あの子はオドオドしてるし…修羅場…?)
奏江は修羅場的な何を感じた。
「…奏江!」
(え…?)
後ろから、少年の声が自分を呼んで振り返る。
「飛鷹くん…。」
振り返れば、飛鷹がいた。
「どうして…。」
今日は学校に出てくる登場人物だけ撮った為、少年がロケに参加する予定はなく、もうロケも終了していた。
「…お袋がお前を連れてこいって言ったから…。」
「え…?」
「簡単に言うと、琴南さんを上杉家のお夕飯に招待したいらしいです。」
ピこっと出てきた松田が笑顔で代弁。
「え…ええ!?」
当然ごとく驚いた、奏江。
「ま、待ってください!どうして私なんかが…!!」
上杉と言えば上杉。
両親も有名な俳優、さらに祖父はそれ以上、有名な時代劇俳優。
(ひ、飛鷹くんがお母さんが私を夕飯に招きたい…?お…恐れ多いわ!!)
三人の目の前にした自分を想像して、奏江は震え上がる。
けれど、断ることなど、出来るわけもなく…。
「わ、わかりました…行きます…。」
唾を飲んで覚悟を決めた奏江だった…。