あれからと言うもの、蓮はキョーコにまったく会うことがなかった。今までだって、会えない日は当然あったが、ここまで会えない日が続いたことはない。

恋する男にとって、想い人に会えないのは、かなりの苦痛だった。

それを感じたのだろう。社が裏で蓮のために動いていたみたいだが、断られたようだ。社は何とか蓮のためにと、様々な理由をつけてお願いしてみたいが、キョーコも同様に断ってくるため、ついに社も白旗を上げてしまった。

「…はぁ…。」

事務所。社が用事を済ませている間、蓮はキョーコの事を考えていた。

「…はい。」

すると聞き覚えのある声が耳に入った。
(…!この声は…っ。)

その声の持ち主を確認しようと蓮はそっちに振り向くと、やはり、そこにはキョーコがいた。

(最上さん…!)

本当は今すぐにでも話しかけたいが、あいにくサワラと話し中だ。しかも、深刻そうに。

(聞いちゃいけなそうだ…。)

蓮はそう思って、その場から、一度離れようとした時だった。
「今はそっちに集中したいので…それに…今は敦賀さんに会いたくないので…。」

蓮にとって聞き捨てならない台詞が聞こえた…。

(…俺に会いたくない?)

頭が真っ白になって、動けなくなる。サワラが何か言っているが耳に入らない。
(何で俺に会いたくないんだ…?)

何かしてしまったのかと必死に考えてみるが、

(ダメだ…思いつかない…。)

考えてみれば、考えるほど、蓮は深みにはまっていく。

考えた先に出たことは、

(問いただしたい…。)

何故、会いたくないのか、問いただすことだった。

そして…話が終わったのだろう。キョーコは椅子から立ち上がって、サワラに頭を下げている。一方サワラは納得いかなそうな表情をしているが、彼女から去っていく。

それを確認したキョーコは、荷物を持って歩き出そうとした。

「…最上さん。」
「?!」

だが、彼女は足を止めて、驚いた顔をした後、怯えた表情をし、二、三歩下がった。

「つ、敦賀さん…。」

それもそうだろう。今、彼は間違いなく、『大魔王』になっていたのだから…。




あとがき

さて、次で終わるのか(^_^;)

わからないです。

終わらない場合は、中編小説として、上げ尚します。