一方、キョーコとはいうと、台本を確認中。

(えーと、次は・・・『アレ』か・・・。)

次にとるシーンはキスシーンなため、キョーコは緊張を感じる。

「最上さん。」

「!?」

その状態で突然と声をかけられたキョーコは体が思わず飛び跳ねてしまった。

「あ、ごめん・・・びっくりさせたみたいで・・・。」

「い、いえ!だ、大丈夫です!!」

けっこう大丈夫じゃない気がするが、大丈夫だとキョーコは自分に言い聞かせる。

「なら、いいんだけど・・・。」

「は、はい!!全然大丈夫です!!」

(・・・大丈夫には見えないけど・・・。)

明らかに彼女の反応が変なので、蓮は疑わしく思っており、

(だ、大丈夫よ!!キ、キスしたじゃない!!カメラがあるだけでしょ!?)

カメラがあるだけで、キョーコはもの凄く緊張していたが、それだけのことだと言い聞かせていた。

「あ、あのっ。つ、敦賀さん、役作りしたんですか!?」

「え?」

「い、いえ、そう思ったのでっ。」

キスシーンで緊張してるなど、蓮にいえるわけもなく、話を逸らすつもりでキョーコは聞いてみると、

「うーん、できればしたいけど、時間がないから、感情加入しかしてないよ。」

「そ、そうなんですか・・・?」

「うん。俺、役作りは練るほうだから。」

「ああ・・・そうでしたね・・・。」

なんと言っても、役作りの仕方を教えてくれたのは、蓮であるため、彼の役作りの仕方も同じであるのは当たり前だった。

「だから『レイン』は俺と似てるところがあってよかったよ。」

「あはは、そうですね。台本読んで敦賀さんと『レイン』って似てるな~って思いましたもん。」

蓮の言葉にキョーコは納得する。

「雰囲気とか、性格とか、似てるな~って・・・。」

だからだろう。そんな『レイン』に恋をいだく『エマ』をキョーコはとてもやりやすかった。

「俺もそう思ったよ。」

「え?」

「堕天使になったけど『エマ』は根本的なとこは変わってなかったから。最上さんに似てるって思った。」

「そ・・・そうですかね?」

「うん。純粋で綺麗な心を持ってるな~って。」

「・・・っ。ほ、褒めても何もでませんよっ。」

「うん、分かってるよ。ただ、本当にそう思ったんだ。」

「うう~~っ。」

(ほ、本当にこの人は、一体どれくらい、私をドキドキさせれば気がすむの~~!?)

恥ずかしいと思うくらいに褒められたキョーコは顔を真っ赤にさせて本気でそう思う。

口では絶対に言えないが・・・。

「敦賀君~~、京子ちゃん~~、次のシーンいきましょう~~!!」

「「あ・・・。」」

周りを完全に忘れてたかのように、蓮とキョーコは麻生のほうを見て、

「は、はーい!!」

キョーコは彼女に聞こえる声で返事をかえしたーー。