「結局、誰も幸せにならない内容ですね・・・。」
「ええ、そうよ。だからこそ、綺麗なの。」
台本の内容をきき、祥子は感想を述べると麻生はそう言う。
「・・・あ、あの・・・麻生さん?」
「ん?なに、京子ちゃん。」
「え・・・えっと・・・ここ、なんですけど・・・。」
キョーコは何やら恥ずかしそうに台本に書いてある問題のところを、麻生以外にみせないように見せる。
彼女が指差しているのは、セリフではなく行動で、
ーー見つめ合って、キスを交わす。ーー
としっかり書かれている。
「ああ、ここ?」
「は、はい・・・ど、どうして、ちゃんと恋人同士になってないのに・・・その・・・。」
「あーー。でもね、こういうことは結構あるのよ?特に友達以上恋人未満の状態だと。」
「そ・・・そうなんですかね・・・。」
(いや・・・まぁ・・・私がどうこう言える立場じゃ・・・ないんだけど・・・。)
今、蓮と微妙な関係であるため、キョーコはあまり反論はできない。
「・・・!?お、おい。ミルキーちゃん、こんなこと聞いてないぜ!?」
それを見つけたのか、ショータローは驚きながら麻生に言う。
「・・・尚?これは『仕事』なの。わかってちょうだい。」
「・・・っ。」
だが、すぐにショータローに黙り込んでしまった。
(ショーちゃん・・・やっぱり、この子のこと・・・。)
美森も見つけていたのか、不安な顔をしながらショータローを見たあと、
「み、美森ちゃん・・・?」
すぐにキョーコを睨んだため、彼女は戸惑う。
(な・・・なんで、この子は、私にこうも敵意を向けてくるの・・・?ショータローとはそんな仲じゃないって言ってるのに・・・。)
キョーコはそう思っているが、美森がショータローを好きなかぎり、ずっと敵意を向けているだろう。
「それじゃあ、撮影を始めましょう。」
麻生の一言で撮影はようやく始まった・・・。
「・・・やっぱり、京子ちゃん、上手だわ。」
蓮とキョーコが演技しているのをモニターで見ている麻生。
「それに・・・見てるこっちが幸せな気持ちになるくらい、笑ってる・・・。」
モニターに映っているのは『レイン』に青い花を送られて、嬉しそうに笑っている『エマ』に、
麻生は、ほほえましく見ていたが、
(・・・そういえば・・・。)
途端に麻生はショータローが気になり、彼をみてみると、
「・・・!!」
なんと、彼は鬼の顔となっていた。
(・・・ま、まだ、序の口なのに・・・!!)
今とっているのは、『レイン』と『エマ』が互いに惹かれあうシーンだ。
それなのに、すでにこの状態だと、キスシーンではどういう風に反応するのか、麻生には予測できない。