麻生が蓮たちに椅子に座ることを勧めたため、
社が端にすわり、その横に蓮、そのまた横にキョーコが座る。
「なんでそこに座るんだよ。」
「・・・私がどこに座ろうと勝手でしょう?」
どうやら、蓮の隣に座るのが、気に食わないらしいが、
チっと舌打ちしたショータローはキョーコと向かい合うように座る。
「そ、それじゃあ、説明するわね?まだ一人きてないけど。」
麻生が最後にパイプ椅子に座り、まだ一人きていないという。
「え?」
あと一人とは誰だろうとキョーコが思ったときだった。
途端にドアが勢いよく開いて、
「ご、ごめんなさーい!!遅刻しましたーー!!」
なんと美森が入ってきた。
「み・・・美森ちゃん!?」
「・・・・え?あ・・・あんた!!」
美森はキョーコをみると指差した後、
「と、敦賀蓮・・・・・・・さん。」
いつも呼びすてしているのに、本人の前のため、『さん』を一応つけた。
「よかったわ、美森ちゃん。ちょうど、仕事の話をするところだったの。座ってちょうだい。」
「あ、はいっ。」
言われたまま、美森はショータローの隣へと座る。
「それじゃあ、改めて説明を。依頼を出したときに伝えたと思うけど、今回のPVは『プリズナー』の続編のような内容で行きたいの。だから、美森ちゃんと京子ちゃんにまた天使の役をお願いするわ。でも、前へとは違って、今度は美森ちゃんが憎まれ役になっちゃうんだけどね。」
「「え!?」」
麻生の言葉にキョーコと美森は驚く。
「前回は尚がやった悪魔と美森ちゃんのやった天使の仲を京子ちゃんがやった天使が引き裂いたでしょう?でも、今度は逆に美森ちゃんの天使が仲を引き裂くの。京子ちゃんの天使とその彼女が魔界で出会った悪魔との仲を。」
「ど・・・どうしてですか?」
「あら、答えは簡単でしょう?変わったのは京子ちゃんの天使だけじゃない。美森ちゃんの天使もよ。いくら親友でも、大切な人を奪われた憎しみは強くって、今度は仕返しに親友の大切なものを奪ってやろうと考えるの。でも、失敗する。」
「な、なんで?」
「天使が悪魔を庇ったから。」
「「・・・・・・・。」」
衝撃的な最後に言葉が出なくなるキョーコと美森。
「まぁ、簡単にいうと、このくらいかしら。でも、前とは違って、ちゃんと声を出して、お芝居してもらうけど大丈夫?」
「え!?」
「大丈夫よ、美森ちゃん。あなたが出るのは最後のほうだし、大まかに出るのは敦賀君と京子ちゃんだから。あなたは台本どおりにやってくれればいいのよ?」
自分の言葉に美森が驚くのを予想はしていた麻生は笑顔で彼女にそういう。
「あと曲名は『ETERNAIIY』よ。音楽は『プリズナー』と変わらないのだけれど、使う楽器を増やしたり、歌詞を悪魔目線ではなく、天使目線にしたの。ホント、尚、よく頑張ってくれたわ。」
「・・・ミルキーちゃんに言われたんじゃ、断れねぇし・・・。」
「ありがとう、尚。」
話を聞いているかぎりでは、麻生の頼みだったので、仕方なくショータローはやったらしい。
「それとPVを二つ作るつもりなの。一つは尚が歌ってることが入るものと、もう一つは完全に短編映画としてみれるもの。最初のほうは、曲がメインだから、音声は入らないんだけどね。」
「話きいたときから思ってたんけどよ、なんでそんなめんどくせーことすんだよ、ミルキーちゃん。」
「だって折角、敦賀くんが出てくるだもの。ただのPVじゃもったいないのよ。」
「そーいうことかよ。」
明らかに不機嫌そうに舌打ちするショータロー。
「そういうことで、いいかしら?」
「「「「「はい」」」」」
ショータロー以外、麻生の問いに全員答える。
.「それじゃあ、さっそく、敦賀くんや美森ちゃんたちには、着替えてもらおうから?着替えないと撮影はできないし。」
「「あ、はい。」」
声が被る、キョーコと蓮。それゆえにお互いの顔をみると笑い合う。
「チっ・・・。」
そんな姿をみて、舌打ちするショータローと
「・・・・・・。」
ショータローとキョーコたちをいったりきたりと見ている美森だったーー。