「はぁ・・・とうとう来ちゃった・・・。」
前にも一度きた、レコード会社の前。
やはり、キョーコの肩は重りを乗せたように重かった。
「あ、キョーコちゃーん!」
すると聞き覚えのある声が自分を呼んだので、キョーコは振り返る。
声の持ち主はやはり社で、少し後ろには蓮がいた。
「社さん、おはようございます。」
「おはよう、キョーコちゃん。」
「敦賀さんもおはようございます。」
「うん、おはよう。」
「いや~~楽しみだな~~今日の仕事っ。」
「「・・・・・・。」」
社は嬉しそうだが、あんまりキョーコと蓮は賛同はできなかった。
なにせ、今回の仕事はショータローがいるのだから。
社も一度は、蓮とショータローの険悪な空気を感じているはずなのに、忘れているかのように楽しそうだった。
(社さん・・・忘れてるのかしら・・・。)
(忘れてるな・・・社さん・・・。)
蓮ごとく、やはり、社は忘れているらしい。
「ささっと入りましょう。」
「そ、そうですねっ。」
「あ、待ってよ~~。蓮~~。キョーコちゃ~~ん。」
蓮たちが先に入っていくので、社は慌てて追いかける。
「え!?あれ、敦賀蓮じゃん!!」
「あ、ホントだ!!」
「今日、うちで仕事なのかな!?」
「バカ、ここにきてるんだから、そうに決まってるじゃない。」
入るとすぐに蓮は、女性たちの注目の的。
だが、彼女たちはよってきたりはしない。どんなに熱狂的なファンでも、それが義務なため。
あとでこっそり、ならあるかもしれないが・・・。
「じゃあ、俺が待合室がどこか聞いてくるから。」
「え!?」
社はさすが蓮のマネージャーともいえよう。すぐに受付に向かい、戻ってくる。
「うんと、2階の第二待合室らしいよ。」
「・・・今度はちゃんとあってるのかしら・・・。」
「うん?」
「あ、いえっ。前、手違いで一時間くらい待たされたことがあったので・・・。」
「え?そうなの?」
「はい・・・。」
「あーー。よくあるんだよね~~。手違いで楽屋が違うとか。」
「そうなんですか?」
「まぁ、最初だけだけどね。すぐにスタッフが気付いてくれるし。」
「あーー。敦賀さんほどだったら、すぐに気づくと思いますよ?オーラありますしっ。私にはオーラなんてものはないから気づいてもらえませんけど。」
(それは・・・笑顔でいうことじゃ・・・。)
笑顔で自分を貶しているキョーコに社は心の中で突っ込む。
「最上さん、あんまりそうことは言わないほうが・・・。」
「そ、そうだよ、キョーコちゃん。」
「でも、本当にないので。」
(うん。やっぱり、笑顔でいうことじゃないよ、キョーコちゃん。)
思わず、涙が出そうな心境になる社。
「ああ~~。」
蓮もお手上げ状態である。
「それじゃあ、行きましょう。敦賀さんが遅刻しちゃいます。」
「ああ、そうだね。行こうか。」
「・・・・・・・。」
蓮とキョーコの後ろを歩く社はその二人を見ながら、
(なんか・・・この頃、空気が変わったよな・・・この二人・・・。)
社は二人に何か変化があったことを少なからず感じていた・・・。