「・・・あの、敦賀さん。」

「ん?」

その夜の、蓮の自宅マンションでのこと。

二人は、キョーコが作った料理を食べていたのだが、

「なんで・・・黙ってたんですか・・・?」

「なにを?」

「ショータローの仕事のこと・・・。」

できれば、あんまりショータローの事を口にしたくないのだが、キョーコは勇気を出してきく。

「あ、今日、最上さんのとこに話しがいったんだ。」

「やっぱり知ってたんですね。」

「・・・ごめん。でも、本当に最上さんのとこに話しがいくか、分からなかったから。」

「そ、それはそうですけど・・・。」

気まずくなって、キョーコは箸をすすめる。

「ねぇ、最上さん。」

「はい、なんでしょう?」

「その仕事、恋愛ものだよね。」

「そうですね。『プリズナー』もそうでしたから。」

「・・・軽く流してない?」

「・・・っ。」

蓮の言葉に、ビクっと手が跳ねるキョーコ。

「やっぱり・・・。」

「だ、だって・・・あんまり考えないようにしてて・・・。」

「なんで、考えないようにしてたの?」

「え・・・と・・・それは・・・。」

(前のPVのときは、キスシーンとかは無かった気がするけど、今回は敦賀さんが出るのだし・・・明らかにストーリーに力が入る。力が入るということは、恋愛ものなんだから、キスシーンが入ってくるわけで・・・多分だけど・・・。)

恐らく、多分だが、キスシーンもあるだろうとキョーコは考えていた。

(と、いうことは、敦賀さんと・・・そのっ。)

みるみるうちにキョーコの顔は真っ赤になって、林檎のようになる。

「そ、それは・・・ですね・・・っ。えっと・・・っ。」

恥ずかしくって、言葉につまっていると、蓮がクスと笑ったため、

キョーコは逸らしていた顔を彼に向けた。

「・・・っ。」

すると目に入ったのは、あの『神々スマイル』で、

「最上さんは可愛いな。」

やはり、恥ずかしいことをいうため、恥ずかしくって、より一層、顔が熱くなるのを感じる。

「ま、また、そんなこと・・・。」

「だって、本当のことだから。」

「っっ~~。」

(私・・・敦賀さんには一生、勝てない気がする・・・。)

なんの勝ち負けかは分からないが、キョーコは何かに勝てる気がしなかった。