「・・・えっ。PVのお仕事ですか・・・。」
それから数日後、ある仕事がキョーコに舞い込んだ。
「ああ。前にもやったろ?不破尚の。」
「や、やりましたけど・・・なんでまた・・・。」
「麻生プロデューサーが君にお願いしたいんだと。」
「は、はぁ・・・。」
椹は知らないが、キョーコとショータローの仲はすごく悪く、現在も椹はキョーコが不破尚のファンだと思い込んでいる。
「やりたくない?」
「・・・・・・・・。」
正直、やりたくないとキョーコは素直に思ったが、これは仕事だ。
私情を挟むのはあまりよくないとキョーコも思っている。
「ああ、それと、これ、蓮も出るんだよ。」
「・・・・・・・・え?」
一瞬、空耳だとキョーコは思った。
「なんでも、『プリズナー』の続編みたいな感じでやりたいんだと。」
「続編・・・?」
「ああ。最上さんは、悪魔を殺すほうの天使をやったろ?」
「はい・・・。」
「んで、今回はその天使が主人公で、堕天使になった天使は、魔界へと送られた後、悪魔とは思えない優しい悪魔と恋に落ちるっていう内容らしい。」
「・・・・・・・つまり、相手役が敦賀さんだと?」
「そうそう。」
椹は笑顔で頷くが、キョーコは思わず表情が硬くなる。
「な、なにかマズイことでも・・・?」
そのため、椹は思わず聞いてしまったが、
「あ・・・い、いえっ。そういうわけじゃ・・・。」
(そういうわけじゃ・・・ないんだけど・・・。)
こんな形で蓮の相手役をやることになるとはキョーコは思ってもいなかったため、少々戸惑い気味だが、理由は別にある。
何せ、不破尚のPVなのだから、当然ショータローも現場にいると考えると・・・。
(い・・・いや、かもっ。だって敦賀さん、ショータローに関することになると不機嫌になるんだものっ。あいつも敦賀さんのこと毛嫌いしてるしっ。)
撮影当日の空気を考えると、とてもじゃないが、嫌だと考える。
(で、でも、敦賀さんはあいつが現場にいるのは承知の上で仕事を受けたのよね?だ、だったら大丈夫よね?そうよね?)
自分に言い聞かせるようにキョーコは心の中で思うと
「椹さん。」
「ん?決めた?」
「は、はい。う・・・受けます。」
「本当か!?」
「はい・・・っ。」
「そうか、そうか~~。がんばれよ~~。絶対売れること間違いなしだからなっ。なんせ、蓮と不破だからなっ。」
「は、はぁ・・・。」
抱かれたい男ナンバー1とそのナンバー7の二人が共演というのならば、確かに話題になること間違いなしだろう。
(なんか・・・大変な仕事を受けちゃったような・・・。)
早くもキョーコは肩が重くなるような気がして、
(やっぱり、受けないほうがよかったかも・・・。)
たった今、受けたばかりなのに、もう後悔をしていたーー。