ファースト・ラブ

ー無性に与えられる愛を君へ・・・ー



「マリアちゃん、パパになんてメールを送っていいのかわからないなら・・・」

しゃがんでマリアと視線を同じにしキョーコはアドバイスを始め、それをみてるローリィ。

「ええ・・・!?でも・・・。」

アドバイスを聞いたマリアはそれは・・・と否定的で、

「大丈夫よ、マリアちゃんから『会いたい』って言われたら、パパはすぐ飛んでくるはずよ。」

そんなマリアに彼女は笑顔で言うのが、

「でも・・・」

(また、わがまま言って・・・)

「今度はパパの飛行機が事故にあったりしたら・・・。」

どうやら、マリアにとって飛行機はトラウマの一部らしい。

「あら、そんなの絶対に有りあえないわ。だってマリアちゃんがパパの無事を祈るんだもの。」

そう言いながらキョーコは微笑んで

「マリアちゃんの一人の気持ちで十分よ。効き目があったのはわかったじゃない?」

「え・・・?」

マリアは一旦なにを言われたか分からなかったが、

「ほら、お願いごとのアイテムの、人、型、チャン、ドル。」

こう言われて理解し、ただ目を見開いて瞬きをし、ローリィは何のことなのか分からず首を傾げる。

「チャンドルの背中に彫った名前は」

(『敦賀蓮』じゃなくて・・・本当は)

「パパ・・・なんでしょ・・・?」

蓮の名前ではなく、父親の名前だとキョーコは言って、

『どうか・・・パパがマリアを好きなってくれますように・・・。』

言われたマリアは自分がしたまじないをしていたときを思い出す。

ろうそくに火を灯していたあの女の子はマリアで、父親が自分を好きなってくれるようにまじないをしていた。

そう・・・本当は父親の名前を彫っていたのだ。

見抜かれたマリアは照れくさそうに微笑んで頬を真っ赤に染める。


(どんなに歯車がかみ合わなくってもお互いが強く思っていれば)

「マリア、お前はさっきに帰りなさい。車は待機させるから。」

「え~~!」

叔父に帰れといわれたマリアは帰りたくなさそうだったが、

「そうよ、マリアちゃん。パパからメールが入る時間じゃない?」

「あーー!!本当だーー!!やだ、いっけなーい!!」

(いつか、気持ちは結びつくわ・・・)

「じゃあ、お姉様ーー!今日は本当にありがとーー!またねー!」

手を振りながら出口へと走っていくマリアにキョーコも手を振っていたが、

マリアがいなくなると微笑みは消え、手をゆっくり下げ、少し俯く。

(そこにはね、奇跡だって起こせる力生まれるの・・・決して、一方通行では、言われない力が・・・。)

片方だけの気持ちでは絶対に生まれない力・・・キョーコはそれがほしかった。とても・・・。

「最上君・・・君は芸能人になるために親元を離れて来たんだったね・・・。」

ローリィにそう言われ、ピク・・・とキョーコは反応し、

「新人発掘オーディションの時には、親御さんの了承は得ているといっていたが、本当なのか・・・?もしそうでない場合、まだ未成年の君がデビューする際には、君のお母さんに了承を得なくてはならなくなる・・・よければ、詳しい事情を聞かせてはくれないだろうか・・・。」

彼の言葉を聞いて、キョーコはとても儚い表情で彼のほうに振り向く。

「・・・!」

そんな表情をみたローリィは目を見開き、

「話さなければ・・・LMEには置いてもらえないんですか・・・?私が・・・どこでなにをしてようが、関心のない人だと分かっていても・・・それでも・・・あのひとの了承が必要ですか・・・?」

そして、今にも泣きそうなキョーコをみているしかなかった・・・。

アノヒトノ、リョウショウガシツヨウデスカ・・・?

社長室の窓を見ながら、ローリィは

『いや・・・そんなことは・・・ないが・・・。』

(思わず・・・そう答えていた・・・。)

物思いにふける。

(否定する事も、それ以上、詳しい事情も聞くこともできず・・・今にも泣き出しそうな、あんな・・・辛そうな表情をされたのでは・・・まるで膿んだ傷口に刃物を突き立ててるような気がして・・・。)

『親だって・・・本気で実の子を憎めるの・・・。』

(あの時の、彼女の演技のリアルさに何かひっかかるものがあった・・・始めは役に入り込んでいるからなのかと思っていたのだが・・・まさか・・・。)

そんなはずがないと思いたいが、ローリィはそれしか予想がつかなかった・・・。